24-9 どうやらフライングで来た・・・みたいです
私はランベルク様の言葉に瞬きを繰り返しました。
確か昨日は、2月の王国会議以降に魔法の研究機関を発足させる、ということになったのではなかったかな?
お兄様たちに視線を向けたら、お兄様たちも頷いてくれました。
「それは2月以降に始めると聞いていますけど」
「そう、こちらにもそう伝わっているよ」
何故か、ニコニコと笑顔で言うランベルク様。
「でも、その前に少しでも進めやすくするために、指針になるものを決めると聞いたんだ。ただでさえリングスタット国は愛し子様のことで大変だろ。それに王国会議を開催することになって、手配やらなにやらで人の手がいくらでも欲しい事態となっているじゃないか。私達、聖王家の魔術師長で話し合って、少しでもオットマー殿の手助けをしたいということになったのさ」
他の方々、エルハルト様まで頷いていますので、そういうことなのでしょう。
・・・って、あれ?
思わず魔術師長の人数を確認してしまいました。1、2、3、4、5人です。確か聖王家は7家あるはずです。・・・いいえ、第7家のラシェンドリットは消えてしまったといいます。
記憶を失くしてから改めて知ったこの世界のことです。絵本(幼児向けという意味です)で読みましたので、あまり詳しくはわかっていませんけど。
それで、知った内容ですが・・・。
女神様はこの世界を導くために最初に7つの国に加護を与えたそうです。それがのちに聖王家といわれる国々となりました。そこから分かれるようにして、多くの国が増えていったそうです。
ただ、500年前に世界を揺るがすほどの災害が起こり、その頃に国の興亡が幾つかあり、気がついた時にはラシェンドリット国は存在しない国となったといいます。
国が消えるというのは不思議なのですが、500年前は100年間ほど厳しい時代を過ごしたというのです。各国も自国のことで手一杯の状態だったみたいでした。
そうして落ち着いた現在、63の国があるそうです。
それでも、もう1家、第2聖王家のシャンテル国の魔術師長がいないのは、どういうことなのでしょうか。
聞いていいのかどうかわからずに、魔術師長たちのことを見つめました。
「うっ・・・」
「なっ!」
「・・・つっ!」
「は・・・」
何やら息を飲んで口元を押さえた、ランベルク様、アルハンドラ様、ライオット様、フィール様です。エルハルト様は何故かその様子に、肩を竦めながらため息を吐かれました。
「どうかしたのですか、セリアテス様。気になることがおありでしたら、何でもお聞きください」
エルハルト様は私には優しく笑みを浮かべて、おっしゃってくださいました。それならば聞くことにしましょう。
「聖王家の魔術師長の方々がいらっしゃっているのでしたら、お一人おられませんよね」
ランベルク様が「ああ」と頷きました。
「第2聖王家のシャンテル国は、まあ、ちょっとあってな。今回は見合わせると言ってきたんだ」
・・・ランベルク様が答えてくれましたけど、エルハルト様と話していたはずですよね。エルハルト様は仕方がないという顔をしていらっしゃるので、これでいいみたいです。
「そ・れ・よ・り・も! 先ほどオットマー殿からお聞きしたのだが、魔法について画期的な案を提案したそうだな」
・・・昨日は、私はオットマー先生とお話する暇はありませんでした。なので私の代わりに誰かが伝えてくれたのでしょう。
・・・待ってください。彼らはオットマー先生からその話を聞いたということですよね。先ほどローザ様が言っていた魔術師の方々ってこの方々のことだったのではないですか?
なんか、嫌な予感がします。
「魔法を使うのに段階を決めていくってやつ。確かに小さな魔法に大量の魔力を使うことはないよな。えーと、それから、『レベル』だったか? その制度の名前。おもしれえじゃん。提案するくらいだから、どれにどれくらいの魔力を使うかってのも、考えているんだろ」
テーブルに身を乗り出すように言う、ランベルク様。目がランランと輝いて、今にも舌なめずりしそうな・・・。なんでしょう、獲物を前にした肉食獣・・・とでもいえばいいのでしょうか?
それに言葉! なんか、思いっきり崩れていませんか?
ランベルク様はヤンチャさんなのですか?
「えっと、そうといえば、そうなのですけど」
「それならば見せてくれ」
あまりに熱心に見つめられてしまい、根負けするように私は右手の人差し指、その爪の先に火を出しました。
「まずはこれくらいの大きさをレベル1として、それよりも大きいこちらをレベル2とします。だんだんと大きくしていって、それの大きさに合わせてレベルもあげていくようにしてみたらいかがでしょうか」
そう言って火を消し、魔術師長の方々のほうを見ました。皆様・・・エルハルト様まで、ポカンと口を開けて私のほうを見ています。
「無詠唱?」
「いや、それよりも爪先とはいえ炎を出して、熱くないのか?」
「火傷・・・は、しているようではないようだけど・・・」
「炎の大きさを簡単に変えたよな」
「というか、一体どうやったんだ!」
彼らはお互いの顔を見た後、頷き合ったのでした。
383話。
少し補足を!
セリアちゃんが魔術師長たちを見たときの彼らの反応について。
セリアちゃんは軽く首を傾げて少し上目遣いで見ています。
椅子に座っているとはいえ、セリアちゃんは7歳。なので、上目遣いになるのは仕方がないでしょう。
無意識の行動なので、セリアちゃんには自覚無し!
以上!




