24-6 聖王家の魔術師長たち
「そうです。先ほどビアンカから聞いて驚いてしまって。まさか他国の王妃様が親戚にいるとは思わなくて」
私がそう言ったら、お姉様はクスクスと笑い出しました。
「まあ、嫌だわ、セリアテスってば。あなたの伯母である母は、王太子妃なのよ。数年もすれば王妃になるのに」
「あっ。そう言われてみればそうでした。・・・ということはすごいですね、フォングラム家は」
私は感心して言いました。
「何がすごいの、セリア」
「だって、王妃様になる方を二代に渡って排出しているのですもの。それも自国ではないのですよ」
そう答えましたら、なぜか皆様から呆れた視線を向けられました。
「すごいのはセリアテス様よ」
「そうそう。王妃様どころか・・・ねえ」
「ええ。それを解っていないところが、また・・・」
なんでか皆様、尻すぼみに言葉を濁らせていきます。
えっ? なんで?
パンパンと音がしてそちらを向くとお姉様が手を打ち鳴らしていました。
「話が逸れたわね。それで、セリアテスは大叔母様のことを知らなかったということで、良いのかしら」
「はい。教えていただいたのは、おじい様の兄弟は女性ばかりで、他国にお嫁にいらっしゃったとだけです」
「そう。国の名前まで教えていなかったのね。それでも仕方がないのかしら。まだいろいろ教えられるわけではなかったのですものね」
クラーラお姉様が思案するように言いましたら、「ちょっといいかい」と声がかかりました。銀髪の男性です。
「話には聞いていたけど、本当にセリアテス様は記憶を失くしてしまったのかい」
「ええ、本当ですわ。私たちのことも覚えていないくらいですもの。キュベリックに嫁がれた、フィーネリア様のことが分からなくても仕方がないでしょう」
お姉様の言葉に首を傾げます。お姉様はそんな私の様子に気がつかないようで、そのまま銀髪の男性へ話しています。
「そんなセリアテスですもの、昨日は女神様はとても心配なさっていたとお聞きしましたわ。もともと頑張り屋さんではあったのだけど、女神様の愛し子として相応しいようにと日々努力をしていますのよ。それなのに、余計な心労を掛けるようなことをする方々ばかりなのですもの。子供に何をするのだと、怒りたくもなるでしょう」
えっ、お姉様。女神様は怒っていませんでしたよ。・・・えーと、皆様の前では怒っていませんでしたよね。心配はなさっていたかもしれませんけど。
「ですから、あなた様方がどなたなのか、姿だけで推察などできませんわよ」
お姉様の言葉にローブの男性方は顔を見合わせました。それから立ち上がり、まず銀髪の男性が一歩前へと出たのです。
「大変失礼を致しました。女神様の愛し子様におかれましては、初めてお目に掛かります。私は第1聖王家であるフォンテイン国の魔術師長をしております、ランベルク・ドメニク・フォンテインと申します」
そう言って頭を下げました。戸惑っていると、次に金髪の男性が銀髪の男性に並びました。それを合図のように銀髪の方は頭を上げたのです。
「女神様の愛し子様、私は第4聖王家であるニアンガラ国の魔術師長をしております、アルハンドラ・ゲイル・ニアンガラと申します。愛し子様の一助になればと、馳せ参じさせていただきました」
言い終わると銀髪の男性と同じように頭を下げました。
「私は第5聖王家のマルズーク国の魔術師長をしております、ライオット・キース・マルズークと申します。先ほどは無礼な態度を致しましたこと、謝罪いたします。申しわけございませんでした」
次に挨拶をされたのは、緑の髪の方でした。その次は青い髪の方です。
「女神様の愛し子様、私は第6聖王家であるオシヴェロ国の魔術師長をしております、フィール・ダニエ・オシヴェロと申します。私からも先ほどのことを謝罪させていただきたい。本当に申し訳ございませんでした」
最後に赤同色の髪色の男性です。
「私は第3聖王家であるキュベリック国の魔術師長をしております、エルハルト・ディンガー・キュベリックと申します。女神様の愛し子様にご不快な思いをおさせしてしまい、申しわけございません」
赤同色の髪の方・・・エルハルト様が頭を下げてあげられると、クラーラお姉様が声をあげました。
「ほら、そこですわ。いくら年下だとはいえ、どうして第3家であるエルハルト様が一番最後に挨拶をされますの」
お姉様は怒りにターコイズの瞳をきらめかせています。それから口元に不敵な笑みを浮かべられました。
「それにどちらかというと聖王家の中で、このことに関しては一番発言力が強いはずでわ」
エルハルト様はお姉様の発言に驚いたようにお姉様を見つめました。
「フィーネリア様がお爺様の妹ということは、エルハルト様は母たちの従弟ですのよ。女神様がフォングラム一族に『愛し子』を守るようにおっしゃっているのです。あの場ではお父様の立場がおありでしたから明言はなさりませんでしたけど、きっと私たちにもセリアテスを守るように思っていらっしゃる筈だわ。ひいてはお爺様のご姉妹であらせられる大叔母様方、その子供、孫も同じと思っておられるはずですわ!」
380話。
一癖も二癖もありそうな方たちです。
このあと、どう話に絡んでくるのでしょうか?
意外と・・・ここだけで終わったりして?
記録として(2020.6.3)
ブックマーク2600件を超えました。
お読みくださっている皆様、ありがとうございます。




