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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第3章 魔法と領地ともろもろと
376/444

24-1 落ち込み気味の・・・朝

重いまぶたを持ち上げて、目を開けた。まだ暗いです。

ということは、いつもより早く目が覚めたということでしょう。


今日は11月14日・・・のはずです。


はずというのは、確証が持てないからですね。

大丈夫だと思いますけど、もしかしたら丸一日眠っていた可能性もあるのですから。

いえ、もしかしたら朝ではなくて、夜なのかもしれません。


それならば13日の夜・・・ということはないでしょう。家に戻ってひと眠りをして、そのあと軽い夕食を食べてから眠った覚えがありますから。

考えたくないけど、14日の夜・・・。


もぞもぞと動いてサイドテーブルにある時計を見ました。


(ライト)


文字盤が見えないので、小さく呟きました。光に浮かび上がった時計の針は、5時を少し過ぎたところでした。すぐに光を消して、仰向けに向きを変えました。


どうやら14日の夜ということはないようです。安心した私は額に手をあて目を瞑りました。


昨日は・・・やっちゃったな~。

まさか倒れるだなんて思っていなかったのです。


みんなに心配をかけるつもりはなかったのにな。


昨日・・・えーと、王宮でローザ様たちと合流した私は、ミルフォードお兄様の興奮した様子に驚いてしまったのよね。

その前の神殿で女神様に声を掛けられた時もその後も、お兄様は落ち着いていらっしゃったから、興奮なさっていらっしゃったとは思わなかったのよ。

本当にテンションアゲアゲで、オスカーお兄様に話していらっしゃったわ。


・・・って、テンションアゲアゲだなんて。なんでこの言葉が出てきたのかしら?


私は、お兄様たちの嬉しそうな様子や、皆様の『女神様から賜った騎士名』への称賛や羨望の様子を、一歩引いて見つめていたのです。

それで、気がついてしまいました。


シュレイン様・・・シュレインお兄様が何とも言えないお顔をなさっていることに。


そうです。シュレインお兄様も従兄(いとこ)です。

でも、女神様が認めた『月光姫(わたし)の騎士』はミルフォードお兄様とオスカーお兄様だけです。ローラントお兄様はサンフェリス王家を継ぐ立場になられるので、私の騎士にはなれないのですけど、シュレインお兄様なら私の騎士になれたのです。

あのアーマド叔父様の息子ですもの。お兄様たちより立派な騎士になられる可能性が高いのです。(これだとお兄様たちに失礼ですね)

その道を私が閉ざしてしまったのです・・・ね。


あの時(お披露目会)は私の不安を軽くしてくれようと、お兄様たちが考えてくださったことが嬉しくて、その気持ちを踏みにじろうとするかのような近衛騎士たちの態度に、つい「私には、ミルフォードお兄様とオスカーお兄様以外の守護騎士は必要ありません」と言ってしまいました。

あの時の気持ちに偽りはありませんが、同じ従兄であるシュレインお兄様のことを思えなかったことが悔やまれます。


「シュレインお兄様・・・」


シュレインお兄様のそばに寄って、そっと声を掛けたのですが、なんと続けたものかと言葉が止まってしまいました。

が、シュレインお兄様は驚いたように私のことを見てきました。


「シュレイン、お兄様?」

「あっ、ええっと、シュレイン様も私より年上ですので、お兄様とお呼びしようかな~、と思いまして・・・」


言い訳のような、変な言い方になってしまいました。でも、シュレインお兄様は目を丸くして、呟くように言いました。


「ローラント様やオスカー様と同じに? お兄様?」

「はい」


頷いて返事をしましたら、シュレインお兄様は満面の笑みを浮かべられました。


「嬉しいよ、セリア!」


シュレインお兄様は私の両手を掴むと、ぎゅうと握りしめてすぐに手を離しました。そしてそばに来たローラントお兄様と笑顔で話をしはじめました。


私はというと、シュレインお兄様の笑顔にあてられたように、その様子を見ていたのです。

だって、今までシュレインお兄様とはそんなにお話をしたことがありませんでしたから。セリアと愛称で呼ばれたのも、初めてかもしれないです。


・・・でも、よかった。私から壁を作ったつもりはなかったのですが、シュレインお兄様も隔たりを感じていたのかもしれません。それが緩和されたのですよね。


ホッと息を吐きだした私は、不意にふらりと体が揺れるのを感じました。体に力を入れようと思ったのに、ままなりません。


「「セリアテス様!」」


一瞬意識が途切れかけましたが、呼びかけにハッと目を開きます。私はフィリナとクラリス様に両側から支えられていました。


「セリア!」

「大丈夫なの」

「お疲れなのですわ」

「誰か、セリアテス様が休めるように整えてくれ」


皆様が私の周りに集まり、私はローラントお兄様に抱き上げられました。


「これは父上を含めた大人のミスだね。女神様と話すということは、とても消耗すると聞いている。邸に連れ帰り休ませなかったおじい様たちが悪い」

「ええ、そうね。ローラントの言う通りだわ。魔力をそれほど使っていなかったとしても、精神力を消耗すると聞いたことがあるもの。おじい様が知らないわけはないのだから、きっと女神様とお言葉を交わすのを見て興奮なさって忘れてしまったのでしょうね」


ローラントお兄様とクラーラお姉様が、難しい顔でおっしゃったのでした。


この後、連絡を受けた母たちが来て、私は邸へと帰ることになったのです。



375話。


さて、セリアちゃんです。

前日のことを話しています。

そう、学者話の最後に出てきたことの真相? です。


追加でもう一つ!

シュレインの笑顔にセリアちゃんが固まった件について。

もちろんシュレインの容姿も整っています。

ただ、セリアちゃんも言っていますが、あまり親しく話をする機会がありませんでした。

シュレインは女の子の相手はどうしていいのかわからなくて(周りの女性は母を含めはっきりとした性格の人が多かったから)セリアちゃんとは少し引いた状態でいました。

それに対してミルフォードのことはミル兄様と呼ぶくらい慕っています。

そういう状態だったので、向けられた満面の笑顔に固まりました。

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