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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第3章 魔法と領地ともろもろと
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学者話1-6 やはり・・・嬢ちゃんには敵わない

「あの、発言してもよろしいでしょうか」


可愛らしい声が聞こえてきて、そちらを向いたわしは、セリアテス嬢のことを一瞬忘れていたことに気がついた。嬢ちゃんは軽く右手を上げていた。


「おお、すまんのう。前ばかり向いておって、セリアテス様が手を挙げておられることに、気付かなんだわ」


わしが頭を下げて謝罪すると、嬢ちゃんは「いいえ」と言った。


「どうか頭をお上げください。それで、お聞きしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか」

「どうぞ、なんでもお聞きくだされ」


わしの言葉にセリアテス嬢は立ち上がった。


「今のキンブリー先生のお話の中で晶石とありましたけど、それはなんですか」

「ああ、そうじゃった。魔石のことは学園に入ってから習うから、セリアテス様は知らんかったか。晶石というのは魔石の魔力を使い切ったあとの石のことを言うのじゃよ」

「ということは、その石は魔力を貯めやすいのですね」

「そういうことになるようじゃの」

「えっ? あの、分かっていたことではないのですか」

「先ほど言うたと思うが、魔力が無くなってしまえば、ただの石だと思われておったのじゃよ」


そうわしが言うたら、嬢ちゃんは困ったような表情を浮かべたのじゃ。


「セリアテス様、それがどうかしたのかのう?」

「ええっと・・・」


嬢ちゃんは少し躊躇ったあと、レオポルド神官長のことを見てから、わしへと視線を戻し言った。


「その、先ほど神殿でも聞いたことでもありますし、キンブリー先生も多すぎる魔力の吸出しについて言っていましたよね。魔力の吸出しに魔石が使われると。・・・それで、晶石が魔力を貯めやすいのなら、晶石で魔力を吸い出さないのかと思ったのです。けど、そのことが知られていなかったのなら、晶石を使わないのは当たり前のことだったのですね」


わしはまたも、衝撃を受けてしまった。

いや、わしだけでなく、会議室におる者全員が、驚愕に声を失くしておった。


セリアテス嬢は何か余計なことを言ってしまったのかと、オロオロとあたりを見回している。


一番に我に返ったのはミリアリア様じゃった。立ち上がると嬢ちゃんを抱きしめて、一緒にソファーに座り直した。小声で何か囁いておった。


次に我に返ったのはレオポルドとヴィクトール・・・魔術師長の小僧じゃった。二人して舞台へと上がってきおった。


「皆様、お聞きになられましたでしょう。女神様の愛し子様の叡智を。愛し子様より数十年長く生きている我々が、これまで気づくことが出来なかったことをお教えくださった。我々はこの叡智をこれからのために役立てねばなりません」


レオポルドが力をいれて言ったあとに続けて魔術師長が口を開いた。


「数日前に各国に要請をお伝えしたことについて、再度言わせていただきたい。魔法に対する認識を各国共通にするために、各国より代表者を出して共同の研究機関をリングスタット国に設置したいと思います。今までは設置場所に対する要望などがございましたが、これでお分かりいただけましたよね。他国に設置した場合、このような重要なことをすぐに知ることはできない場合も起こりうると思います。よろしいでしょうか?」


若干言葉を濁しておったが、大使たちは皆頷いておったからいいじゃろう。嬢ちゃんは目を丸くしてその様子を見ておった。



このあとは嬢ちゃんには聞かれたくない、大人の話し合いじゃ。セリアテス嬢を含めた子供たちを会議室から追い出し・・・おっと、いかん、いかん。王女様方が待っているということで、部屋を退室なされたのじゃ。


嬢ちゃんがいなくなってから、魔石のことについて話し合われた。まずは晶石の確保についてじゃな。皆、わしと同じように魔力が無くなると、捨ててしまっておったそうじゃ。

リチャード様がそれならば、晶石を回収するようにしてはどうかと言った。

回収するというのはいい手じゃ。なので、国と神殿で回収して魔力過多の者から魔力を吸い出してみることから始めることになったの。


それから、魔法の研究機関については2月に行われる王国会議後に、始動するということも決まった。いや、再確認したという方がいいじゃろう。


わしは隅っこで見ておったんじゃが、すんなり決まるはずはなかったのう。少しでも優位に立ちたい各国の大使たち。特に聖王家の大使たちはのう。

まあ、無理じゃったがの。先ほどの嬢ちゃんの言葉と、女神様の御意向の前にはなすすべはないじゃろう。


じゃが、ヴィクトールのやつが「魔法の研究の総責任者はフォンテインの方にお任せしたい」と言うたことで、会議の流れは変わったがの。

フォンテインの大使は顔には出さんかったが、これでフォンテインの立場を強くできると思うたじゃろ。

・・・フッ、わしは知っておる。

魔術師などという者は、とにかくめんどくさい奴らじゃ。魔法を極めようと、研究に明け暮れる奴ほど、自己主張が激しいんじゃ。

そんな奴らを纏めるなどという面倒から、ヴィクトールは逃げたのじゃな。


そんなわしらのところに急報が届いたのは、研究機関のことをもう少し詰めようとしたときじゃった。

なんとの、セリアテスの嬢ちゃんが倒れてしまったというではないか。


慌てて王妃様とミリアリア様とセレネ様が出て行かれた。

レオポルドの奴の顔色が悪い。

レオポルドの説明で、各国大使の顔色も悪くなったのう。


さて、このことを女神様はどう見ておられるのか。

愛し子様に無理をさせたわしらに、神罰でもくだされるかもしれんのう?



374話。


これで学者のじいちゃん話は終わります。

最後に少し言葉を濁していますが、次話のセリアちゃん語りで明かされることでしょう。


そして、ちゃんと次のためのフラグを入れられました。

ホッ。

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