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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第3章 魔法と領地ともろもろと
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学者話1-1 わしの研究は・・・間違っていなかった

ほうほう、何やら面白くなってきたのう。


レオポルドと女神様の愛し子のやり取りを、わしことクラウス・キンブリーは大使たちより後ろの席に座って眺めておる。


先ほどからレオポルドが各国の大使たちに対して、イニシアチブを取ろうとしたのを、愛し子様がぶち壊してしまったのじゃ。

他の輩にはわからないだろうが、レオポルドの焦りぶりは同情に値するだろう。


わしはせんけどな。


リチャード様も内心焦っとるだろう。あの狡猾なリチャード様を、精神的にあそこまで追いつめるとは、さすが女神様の愛し子様じゃ。


リチャード様も自分の思惑通りにいかないことなど、今まではなかったのじゃろうて。それが自分の血を分けた孫に覆されてはのう。やりにくかろうし、手も口出しもできんじゃろ。


レオポルド同様、リチャード様の困惑など、他の輩には気づかれとりゃせんじゃろうがな。

おお、違ったわい。リチャード様の隣にいるセレネ様は気づいとるようじゃな。


というか、フォングラム一族どもは動揺しすぎじゃろ。そんなにも愛し子様の言葉は意外だったのかのう。

我が子、我が孫のことなのに、わからんものか・・・。


ああ、そうかもしれんか。リチャード様とセレネ様は、ミルフォード様が生まれたことで爵位などをセルジアス様に譲って、引退と称して領地に引きこも・・・っては、おらなんだな。身軽になったとばかりにあちこちへと出かけ回っておったのう。


それじゃあセリアテス嬢のことなど、解らぬものか。

いやいや、これは早計じゃろう。前のセリアテス嬢は貴族らしい貴族の令嬢じゃった。

そんな令嬢の考えることなど、リチャード様ならお見通しだったろう。


噂でセルジアス様も、少し前まで家族仲があまりよろしくないと聞いていた。今のセリアテス嬢になってから、ところかまわず嬢ちゃんを溺愛しているのを見せつけていると聞いておる。


まあ、それはわからんでもないがのう。高熱後、はじめて会った時のセリアテス嬢は(いとけな)くて、何とも可愛らしかった。何より周りに感謝して、ちょっとしたことでも可愛らしく笑ってお礼を言われれば、おちん奴はおらんじゃろ。


おかげで王宮では密かな『セリアテス様からお礼を言われた自慢』というやつが行われておっての、聞いていて呆れるほどじゃった。


まあ、それまでは子供とはいえ、貴族の坊ちゃん嬢ちゃんがそのようなことを言うことはなかったからの。貴族教育に『お礼を言う』というものはなかったし、やつらは(かしず)かれる、もしくは使用人がやるのは当たり前という感覚でおったじゃろ。


セリアテス嬢の様子から、やっと使用人のことを人と認識し始めたんじゃないのかのう。


ふむ、やはりセリアテス嬢は、前の嬢ちゃんとは違う考え方をするようになったということか。貴族よりではない考え方・・・いや、そうじゃないのかもしれんのう。

セリアテス嬢が考えることの第一が女神様になったことが、違う考え方の(もと)かもしれん。

それとリチャード様は認めたがらないかもしれないが、前世の記憶とやらも大きく影響を与えているのじゃろう。


出来ればその話を詳しく聞いて研究してみたいものじゃが・・・わしには無理じゃろうな。さすがに(よわい)を68年も重ねておれば、いつくたばってもおかしくないものじゃからな。


まあ、いいわい。わしの長年の研究は間違っていなかったと、女神様にお墨付きを頂いたようだしの。

このあと、ちぃーとばかし、演説をぶってやるかの。



面白がりながら傍観しておったら、わしらのことをレオポルドが呼んだ。他の者たちと舞台に上がり、魔物の発生条件の仮説について話をすることになった。

先に他の者たち(実はわしの弟子たちじゃ)に話しをさせて、わしは大使たちの様子を観察していた。皆、胡散臭そうな顔で聞いておる。

まあ、そうかもしれんかのう。


『魔物とは魔素を多く取り込んだ生物(せいぶつ)が変化したもの』


などと言われてはの。弟子が一通りの説明を終えて「それでは何か質問などはございますか」と聞いたら、出てくること出てくること。愚にもつかない反論もどきが。そのどれもが結局は「魔物を見たことがないのにそんな推論はあり得ない」で終わっておる。


弟子たちはチラチラとわしのことを見てきているので、わしは「よっこらしょ」とわざとらしく立ち上がり(セリアテス様がわしを気づかってくれての、椅子を用意してくれたんじゃ)演台へと立った。

わしはセリアテス様の気づかわし気な視線を受けながら、ニヤリと笑みを浮かべた。


さぞかし不敵な笑いとなったことじゃろう。


先程、レオポルドや陛下方は気がついておらなんだが、セリアテス様は失言をしていた。それはわしの長年の研究が間違っていなかったという証となった。


わしはあの時から魔物のことを研究してきた。何故か、魔物の目撃情報でさえなくなったことに、訝しく思ったりしておったが、いつか(・・・)の時のために研究を続けておった。


あの時から30年経った頃、魔物が発生しないことで、わしの研究を無駄だという輩が出てきたが、国王もリチャード様も、絶対に必要になるからとわしに好きに研究を続けさせてくれたのじゃ。


だからの、わしはレオポルドやリチャード様がしようとした、リングスタット国が優位に立てるように話をもっていってやろうと思っておる。



369話。


すみません。また1話でまとまらずに数話になります。

説明の前で終わってしまうなんて……。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

次話でまた、お会いいたしましょう。

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