23-30 お話はお任せして…それよりも賜った名前
そうしている間にも、扉からかなり大きなソファーが運び込まれてきました。うん。普通は会議をする場に似つかわしくないものですね。
ああ、そうでした。会議室に入ってから国王陛下、王妃殿下だけでなく、ジーク伯父様、カテリア伯母様も、おじい様たちにスクワーレ伯爵家の方々までお座りになっていませんでした。
神官長のほうを見たら頷いてくださったので、私が言うことにします。
「国王陛下、王妃殿下、サンフェリス国王太子ジークフリート殿下、王太子妃カテリア殿下、お待たせいたして申し訳ございません」
「何を言われますか、セリアテス様。全然待ってはおりません」
「我らのことにまで、気を回す必要はない。それでなくともセリアテス様のほうがお疲れであろう」
陛下とジーク伯父様が労わりの言葉を言ってくださいました。私達は和やかに会話をしながら、ソファーが置かれるのを見ていました。
そして、ソファーにはお父様とお母様と一緒に座りました。お父様は最初、私を膝に乗せようとしましたけど、それでは休まらないだろうとおばあ様に言われて断念しました。ミルフォードお兄様はおじい様、おばあ様と一緒に並んで座られました。
もちろん他の皆様も椅子に座られましたよ。
えーと、それから、神官長が司会進行をして、女神様から私に断言した『魔物の大量発生』は必ず起こることと伝えました。
そこから、学者の方たちを舞台にあげ、クラウス・キンブリー氏を中心に、魔物発生の仕方についての講義を聞くことになりました。
ええっと、詳細は省きますが、魔物は普通の野生動物が濃い魔素を浴び続けたことにより、変質したものだと言われました。濃い魔素を浴びての変質は、植物にも顕著に表れているそうです。私が不思議に思った、果物の木のこと。季節関係なく四季を通して食べられるのは、その季節ごとに実がなる木があるからだと聞きました。なんでも昔の文献に、その季節には実がならないはずのリンゴの木を見つけたとあったそうです。その木の実の種を持ち帰り育てたところ、本来の季節ではない時に花が咲き実をつけたそうです。それを増やすことで、各季節ごとに実が収穫できるようになったとか。
ですが、やはりそれは信じがたいと反対意見が出てきましたが、キンブリー氏は実際に魔物を見ているということで、逆にキンブリー氏の説の信憑性が高くなりました。
そうなのです。キンブリー氏は最後の魔物の大量発生と言われている、40年ほど前のあの討伐に参加していたというのです。それ以降魔物の姿を見た人はいません。百聞は一見に如かずと言いますものね。キンブリー氏の言葉には説得力がありますね。
それから、魔法のことを再度各国から代表者を出して、研究機関を設けるということも、ちゃんと決まりました。2月の王国会議以降に始めることとするようです。えーと、場所はやはりこの国、リングスタッドで行われることになるそうで・・・。
このあとは大人の話し合いということで、私とお兄様、フィリナとソニックは会議室を出て王子様、ローザ様、マイン様が待つサロンへと向かいました。
サロンに入ると、待ちきれなかったというように、皆様に取り囲まれました。
「オスカー!」
そんな皆様を制するようにミルフォードお兄様が声をあげられました。その様子を驚いた顔で王子様方とそのご友人が見つめています。
「聞いて、オスカー。僕らのことを、女神様が認めてくださったんだ」
「ちょっ、落ち着け、ミルフォード。ええっと、女神様が認めてくれたって、何のことをだい」
お兄様はオスカーお兄様の両腕を掴んで、興奮しています。・・・えーと、神殿からここまで、実はずうっとお兄様は興奮をしてらしたのでしょうか。そういえば、言葉が少なかったですね。
「あのね、守護騎士なんて無粋な名前は、僕らにふさわしくないとおっしゃられたんだ」
「守護騎士? それは女神様が僕たちがセリアテスの騎士となることを認めてくれたってこと?」
「だから、そう言っているだろう。それで、僕ら二人だけが名乗れる騎士名をくださったんだよ」
「騎士名? 騎士団名ではなくて?」
「そうだよ。僕とオスカーだけが名乗ることができるやつなんだって!」
お兄様の言葉を繰り返していいながら、ゆっくり飲み込むように理解していったオスカーお兄様の目が輝きました。
「それは? ねえ、ミルフォード。早く教えてくれよ」
「月光の騎士! だよ!」
「げっこうのきし・・・げっこうのきし。そうか、月光姫を守る騎士だから、月光の騎士か」
「うん。そうだって!」
・・・私は少し遠い目をして、神殿でのことを思い出しました。コモナー執事長とソニックとの話が終わったあと、女神様は続けてお兄様のことを呼ばれたのです。そして・・・お兄様たちの心意気を褒められて・・・。
『守護騎士なんて無粋な名前は似合わないわ。そうね、セリアテスは月光姫と呼ばれているそうね。それならば、月光姫を守る騎士として、月光の騎士と名乗りなさい。ミルフォードとオスカーの二人のみに、この名乗りを許します』
と、おっしゃられました。
ああー、女神様に月光姫と認定されちゃったよー。
本当にどうしましょうか・・・ね。
368話。
ひとまず11月13日話は終わりです。
次は閑話の学者話が入ります。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
次話でまた会いましょう。
2020.6.10
頂いていたイラストを挿絵として挿入させていただきました。
ゆきさん、素敵なイラストをありがとうございました。




