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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第3章 魔法と領地ともろもろと
364/444

23-25 神官長と一緒に ~神官長の檄?~

レオポルド神官長の言葉にオットマー魔術師長は首を竦めました。


「女神様はお(いか)りでしたか」

「いいえ、お怒りには(・・)なられていません。ただ、セリアテス様の今後をご案じなされておられました」


魔術師長は肩に入った力を抜いて安堵の息を吐きました。


「それに女神様はセリアテス様だけでなくリングスタット国のことも気にかけてくださっています」

「それは本当でしょうか」


神官長の言葉に息を飲む人たちの中で、宰相が問いました。


「はい。女神様がセリアテス様を『愛し子』と言われたことで、聖王家から圧力をかけられることはお分かりです。ですから先にセリアテス様のご意思に()わないことはなされないようにと、お言葉を贈られています。それでもこれからセリアテス様から『言質』を引き出そうとする輩が現れることでしょう。それらから我々は、セリアテス様をお守りしなくてはならないのです。よろしいですか。先ほどのように浮足立った行動を起こさないように、リングスタット国に住まう者たちの意識を引きあげなさい。これから何度でも女神様とセリアテス様は対話をなされます。そのたびにこのように動じられては困ります」


陛下方だけでなく、お父様、おじい様、おばあ様まで背筋を伸ばして頷かれました。


「それから、国王陛下、王妃殿下に申しておきます。これからはセリアテス様のことを呼び捨てにはなさらないように」

「えっ、どうしてですか」


思いがけない言葉に私は思わず言葉を挟んでしまいました。神官長は私に優しい笑みを向けると、視線を合わせるように膝をおりました。


「セリアテス様、これは必要なことなのです。セリアテス様が今までのように、一貴族の娘として陛下方に接してもらいたいと思われているのかもしれませんが、それは出来ません。セリアテス様は『女神様の愛し子』なのですから。もし陛下方が今までのようにセリアテス様に接してしまわれますと、他の国につけ入られる口実を与えてしまうのです。そうしないためにも、きっちり線引きはしないといけないのです」

「でも、表ではなく裏・・・プライベートな場所でしたら今までのようにして、良いのではないですか」

「いいえ。先ほど入口で王妃殿下がセリアテス様のお名前を呼ばれた時に、呼び捨てになさいました。あのような公の場所で呼び捨てになさったのです。幸いにも他の国の者はいなかったみたいですが、聞かれていた場合、何を言われてもしようがないことでした」


私は下唇をかんでスカートをぎゅっと握りしめました。・・・覚えていないけど・・・それでも前と同じようにフォングラム公爵家令嬢として、接してもらうのは無理なのでしょうか。

いいえ、それよりもやはり普通の令嬢として過ごそうと思ったのがいけないのではないのでしょうか。厄介なことになる前におとなしく神殿に行った方がいいのではないのでしょうか。


そんなことを考えしまった私の手を、神官長は優しく包むようにして触れてきました。それから力の入った指を一本一本開いていきました。


「セリアテス様、そのようなお顔をなさらないでください。大丈夫ですよ。セリアテス様がセリアテス様らしく過ごすことを、女神様は望まれております」


私は顔を上げて神官長の目を見つめました。


「そのために私を『リングスタット国総神殿神官長』に任命なされたのですから」


神官長は立ち上がると陛下方のほうを見ました。陛下方は神官長の言葉に意味がわからないという顔で見つめ返しています。


「私は女神様より『この命ある限りリングスタット国総神殿神官長を務めるように』という下知を受けております。例え、フォンテイン大神殿の大神官であろうとも、このことを覆すことは出来ません」


晴れやかな・・・いえ、とても誇らしいという表情で神官長は言い切りました。「それは」と、陛下が呟くようにいい、それから首を振ってから表情を引き締められました。


「それではレオポルド神官長は終生リングスタット国総神殿の神官長を務められるということですか」

「はい。そうです」

「では、セリアテス様・・・女神様の愛し子様は、フォンテイン大神殿に行かれることはないと」

「ええ、大神殿から要望されようとも、セリアテス様が望まれなければありえません」


国王陛下は一つ頷くと王妃様のほうを向きました。


「レオポルド神官長が言われたように、全国民の意識をひきあげるぞ。その前にまずは我々からだ。エリザ、子供たちにもセリアテス様呼びを徹底させろ。2月に他の王家から侮られることがないように、マナーに特に力を入れさせろ」

「ええ、わかりましたわ」


王妃様は真剣な顔で頷かれました。ついで陛下は宰相様へと視線を向けました。


「宰相、侍従長、侍女長、まずは王宮内に勤める者からだ。『女神様の愛し子』が居られる国の国民であると、肝に銘じさせよ。そうすればおのずと(みずか)らが取るべき態度がわかるであろう。良いか、セリアテス様が領地から戻られるまでに、最低でも王宮に勤める者の意識を変えるように!」

「ははっ」


宰相様と侍従長、侍女長は頭を下げられたのでした。



363話。


・補足

侍女長は王妃様について行動をしていました。


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