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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第3章 魔法と領地ともろもろと
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23-23 神官長と一緒に ~王宮での話し合い・・・の前に~

そんな会話を続けている間に馬車は順調に進み、王宮へと着きました。まだ、いろいろなことを話したかったのですが、私達だけよりもオットマー魔術師長だけでなく有識者の方々とも話をすることになっています。


王宮に着き馬車から降りてびっくりです。何故か兵士から召使いの方から貴族まで、出迎えの方々がたくさんいらっしゃったからです。・・・えーと、なんかまた大袈裟・・・大事になっている予感がします。


私が(おのの)いているのが分かったのでしょう、レオポルド神官長は私の肩に手を置いて安心させるように軽くトントンと叩きました。それから私より一歩前に出ると、集まっている方々をぐるりと見まわしてから言いました。


「これは何事ですか? 私は王宮に向かうと伝えましたが、このような出迎えをしろとは言っておりません」


頭を下げている・・・そうなのです。馬車から降りたち集まっている方々を見ましたら、手前から順番に頭を下げられたのです。・・・もう、本当にこれはどうしろと? 


対応に困って・・・というより、これから王宮に来るたびにこれ(・・)が通常となったらどうしようと、私は恐怖を感じてしまったのです。


神官長の言葉でも、誰も動こうとしません。・・・いえ、もしかしたら動けないのかもしれません。他の方が動かないから自分も動くわけにはいかないと、思っているのかもしれません。


「はああ~」


神官長は重いため息を吐かれました。


「これでは話になりませんね。セリアテス様、戻りましょう」


この言葉に頭を下げている方々はビクリと体を震わせました。動揺して体や頭が小刻みに動いているのがわかりますが、それでも頭を上げる人はいません。


これはあれですか。皆様自分が最初に動きたくないとでも?


そんなことを考えていたら、また神官長のため息が聞こえてきました。


「本当にお話になりませんね。このことをお知りになられたら、女神様もご不快になられることでしょうに」


声のトーンを落として言われた言葉に「ひっ」と、どなたかが悲鳴を上げられました。


「も、申しわけございません!」

「どうか、お許しください!」


私たちに近い方から順番に、膝をついて平伏していきます。・・・平伏というより土下座ですよね、これ。皆様真っ青な顔で震えていらっしゃいますね。


それならやらなければいいのに。と、おもってしまったのは、仕方がないですよね。それに平伏されると通路がふさがれてしまって邪魔なんですけど。


「ですから、いい加減にしていただけませんか。これ以上邪魔をなさるのでしたら」

「お前たちは何をしている! さっさと立たぬか」


神官長の声を遮るように怒声が響きわたりました。そこには珍しくも目を怒らせている国王陛下がいらっしゃいました。


「さっさと持ち場に戻れ。それとこのことは相応の罰を与えるからな。覚悟しておくように」


陛下の言葉に「そんな」「私達は」と声をあげる人もいましたが、陛下の後ろから現れた騎士の方たちに促されて移動をはじめました。

その様子を厳しい目で見ていた陛下は、私へと視線を向けると目元を和らげました。


「すまなかった、セリアテス。そなたたちが神殿へと向かったことを漏れ聞いた者たちが、神託をいただいてくると勘違いしてな。勝手に出迎えをしたということだ」

「それはそれは。考え無しの方々とは困ったものですね」


神官長は冷ややかな視線を去っていく方々に向けて言いました。


「まあ、そう言わないでくれ。皆もまだ戸惑っているのだ」

「そのような甘い考えでいるから……」


言いかけた神官長は遅れて姿を現した方々を見て、言葉を止めました。オットマー魔術師長を先にジークフリート伯父様とカテリア伯母様、王妃様がいらっしゃったのです。カテリア伯母様の顔色が色を失って見えますけど・・・?


「セリアテス」


王妃様が私の名前を口にしたところで、陛下が手を挙げて止めました。


「いつまでもここに居るわけにはいまい。話はあとだ」


そうおっしゃると陛下が先に歩き始めました。すぐに神官長が陛下に並ぶように歩き出しました。私も促されて陛下の後ろを歩いて行きます。


ふと何かに包まれるように感じました。


「それで、何がありましたので?」

「先ほど言ったとおりだ。だがまずいことに各国の大使たちの耳にも入ってしまった。問い合わせだけでなく、王宮(こちら)に続々と集まってくるようだぞ」

「なぜのそんなことに」

「ごめんなさい。牽制するつもりが、大事にしてしまったわ」


神官長の問いに陛下は苦い声で答えられました。お父様の苦言? の伯母様が沈んだ声で答えています。・・・えーと、どうやらこの会話は魔術師長の魔法で、私達にしか聞こえないみたいです。


じゃなくて、大事にするつもりはなかったのに、大事になってしまったということですか?


私達が進む廊下には両側に王宮に勤める方が並んでいますが、先ほどの出迎えの方々とは違います。私達が歩く道を確保するかのように私たちに背を向けて立っていらっしゃるのです。その向こうにはところどころで何かを言っている方々がいるみたいで、体を張って止めている感じのところもあります。


ですが、その姿もすぐに見えなくなりました。駆け付けた近衛騎士の方々が私達の周りを囲むようにしてくれたからでした。



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