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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第3章 魔法と領地ともろもろと
361/444

23-22 神官長と一緒に ~馬車の中で作戦会議?~

コモナー執事長の言葉におじい様は不思議そうな顔をしました。他の方々も顔を見合わせています。


「フォングラム公爵邸にてセリアテス様から、魔法に関する基準をどうしたものかとご相談を受けました。そこで考えたのがレベル制度です。レベルというのは言い換えますと段階のことになります。例えばですが、炎の魔法を使う時に指の爪くらいの大きさの炎を出すのをレベル1、それよりも大きい炎をレベル2、もっと大きい炎、例えば篝火くらいの大きさはレベル3と、このように段階を上げることに使う魔力も出せる炎も大きくなるように設定するのです」

「ほおー、確かにそれなら分かり易いかもしれんのう。」

「はい。それにこのレベル制度の設定には、二つの利点がございます」

「利点? コモナー執事長、それはどういうことでしょうか」


お父様も執事長のほうを向いて言いました。食い入るように見つめています。


「基本となるものが決まれば、人に教えやすくなります」

「確かに」


お父様だけでなくおじい様とスクワーレ伯爵も頷いていらっしゃいました。


「それと幼い子供にも魔法を教えることができるでしょう」

「なんと! いや、待て。さすがにそれは出来んじゃろ。幼いほど感情に振り回されて、魔力暴走を起こしやすくなるものじゃ」

「いえ、リチャード様、それが間違いだと思います」

「何が間違いなのじゃ。常識だろう」

「半分は間違いではないです。ですがリチャード様は根本的な部分を勘違いしておられます。すべての子供が魔力暴走の危機を抱えているわけではないですよね」

「当り前じゃろ。魔力暴走を起こしやすいのは魔力が多い貴族の子供ではないか」

「それがお分かりでしたら、私が言いたいこともお分かりになりますよね、リチャード様」


執事長の意味ありげな笑みに、おじい様は鼻にしわを寄せて睨んでいらっしゃいますね。おじい様にも答えがわからないのでしょうか?


私も執事長が答えを言う前に考えてみます。えーと確か、貴族の魔力を多く持っている子供は、小さなときには魔力の循環の補助をしてくれる人がつくと言っていました。

・・・そうです。神殿に来る前に執事長が『仮説ですが』と言っていたじゃないですか。そう、私が起こした魔力暴走。あれで溜まった余剰分の魔力を放出できたのがよかったことだと言っていました。


「・・・ということは、幼い子供でも魔力循環を意識させながら、小さな魔法を使わせることでコントロールを身に着けさせることができる?」

「さすがセリアテス様です。ご名答でございます」


執事長を見つめながら思いついたことを言葉に出してみました。執事長はおじい様に向けたのは違う笑みを私へとくれたのです。


「よくお分かりになりましたね」


と言葉を続けられたので、私は「執事長のおかげです」と答えました。他の方々から問うような視線を向けられたので、フォングラム公爵邸での会話を皆様に言いました。


「確かにそうですね。魔力が体に溜まりすぎると、大人でも体調を崩します。一番いいのは魔法を使い魔力を放出することです。ですが子どもには難しく・・・いえ、詭弁を言っても仕方がありませんね。今までは子供に魔法を使わせないようにさせてきました。一番大きい理由は子供に魔法を教えにくかったことでしょう。あとは同じ系統の魔法を教える人を見つけるのが大変だったということがあるようです」


レオポルド神官長が頷きながら言いました。私は『大人でも魔力が溜まりすぎて体調を崩す』という言葉に驚いて神官長のことを見つめましたら、神官長は微笑んで違う答えをくれました。


「セリアテス様、神殿には体調を崩した方が治療を求めてきます。中には貴族以外の者で魔力が多い子供を連れて訪れることがあるのですよ。その場合は魔力循環を施します。それでも改善できない場合は魔石に魔力を移すことをすることがありますね。まあ、それも付け焼刃でしかありませんが・・・」

「は、い? 魔石に魔力を移すのですか? そのようなことができるのですか」

「ええ。ですが、これは効率が悪くてあまりやらない方法です。といいますのも、魔力と魔石の相性があるようでして・・・」


神官長の説明では、魔力の吸出しは上手くいくときといかない時があるのだそうです。それによほどでなければ、魔力循環を覚えさせるだけで改善されるということでした。やはり貴族以外では魔力がとてつもなく多いということはあまりないことなのでしょう。


「あっ、でも神官長様、魔法は得て不得手はあっても、使える使えないはないと思います」

「それはどういうことでしょうか、セリアテス様」

「女神様もおっしゃられましたよね。『この世界は魔法を使えるように整えた』と。魔法の使い方は私達、『この世界にいる人たちが決めるように言った』とも。なので先達の方々が、魔法に関する固定観念を複雑で分かりにくいものにしてしまったのではないのでしょうか」

「それは・・・」


神官長は呻くように言い、それから眉根を寄せると考えこんでしまわれました。



360話。

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