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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第3章 魔法と領地ともろもろと
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23-21 神官長と一緒に ~移動の馬車の中で~

カラカラ


軽快に車輪が回る音が微かに聞こえてきます。物珍し気に馬車の中を見回していた私は、ソニック君と目が合って慌てて視線を、向かいに座るレオポルド神官長へと向けました。レオポルド神官長は微笑んで「もうよろしいのですか」と言われました。


「はい・・・えーと、お待たせしましたか」

「いいえ、まだ神殿を出発してそれほど経っておりませんから大丈夫ですよ。それに見回したくなるお気持ちは分かります。このような馬車にお乗りなることは、学園に入学なさるまでございませんでしょうからね」


神官長はやんわりとフォローをしてくださいました。


そうなのです。今の私達は王宮へと向かうために馬車に乗っているのですが、これがそれぞれの家の馬車ではなくて大人数が乗ることができる大型の馬車に乗っているのです。


私は女神様との話が終わり、神官長ともう少しお話をしたいと思いました。ですが、このあと王宮へと行かなくてはならないので、領地に向かう前日にでも神殿に来ることを伝えてから向かうつもりでした。

それが神官長様のほうから、「セリアテス様とお話ししたいことがあります」と「王宮にも此度(こたび)のことを伝えなくてはならないでしょう」と言われまして、一緒に王宮に向かうことになりました。それだけでなく、時間が惜しいということで、神殿所有の大型馬車を出していただいたのです。


この大型馬車は・・・えーと、バスみたい・・・と言えばいいのかな? 馬車の前方に横向きの座席があって、えーと、それぞれ4人ぐらいずつ座れると思います。ドレスの女性と子供でもドレスの私と男性が余裕で座れるのですから、男性だけなら5人は余裕かもしれないです。

そこから後ろは前方に向けて座席が並んでいます。真ん中が通路になっていて、それが5列あるのです。それぞれに1人ずつ座っていて・・・えーと実際には2人は余裕で座れるのではないかと思います。ユレイナちゃんを抱いたスクワーレ伯爵夫人の隣にフィリナが座っているのですから。

えーと、えーと、おじい様とおばあ様は1人で座っていて、その後ろの席に、お兄様とソニック君が並んで座っています。スクワーレ伯爵は通路を挟んで同じ列に座っていますが・・・ソニック君を自分の隣に座らせたかったみたいで、お兄様と攻防? がありました。


執事長及び侍女たちと、神官の方も後ろの席に座っています。えっと、執事長だけでなく、フォングラム家とスクワーレ家の侍女が1人ずつついてきています。もちろん、護衛をする騎士も騎馬で追従していますよ。

あっ、うちとスクワーレ家の馬車も後ろからついてきていますからね。


と、いうわけで、私はこの馬車に乗ってから、珍しくて見回していたのです。座り心地は・・・お世辞にもあまりよくはないです。いえ、貴族の馬車と比べるのが間違いなのでしょう。使用目的が違えば、仕様が変わるというものですものね。それでも、女性神官の方が気を利かせてくれたのか、少しでも快適になるようにと大量のクッションが用意されていました。本当にありがとうございます。次に神殿に行く時には、なにかお礼をしたいと思います。


「ではセリアテス様、お時間もあまりないことですし、王宮に着くまでにお話をしましょう」

「はい」


神官長の言葉にスッと背筋を伸ばしたら、神官長は苦笑を浮かべられました。


「そのように身構えないでください。いくつか確認をさせていただきたいのです。それ次第では神殿(わたくしども)の対応も変えなくてはならなくなりますからね」


笑顔なのですけど、笑顔なのですけど・・・なんか怒っていらっしゃいますか?

あれですか。魔法のこと云々を神殿に知らせていなかったことですか。でもそれは私は悪くないですよね。相談を受けただけなのですから。・・・いえ、困ってソニック君に相談して、執事長にまでご迷惑を掛けましたけど・・・。

でもそれも女神様からお言葉をいただいたので、レベル制度を提案してオットマー先生・・・もとい魔術師長に丸投げする予定です。そんなに困ることはもうないのです。


「セリアテス様、まず先に女神様がおっしゃられた『魔法のこと』についてお聞かせいただけますでしょうか。本来は魔術師長を筆頭とした魔法省の方々がなさなければならないことを、セリアテス様におっかぶせようとしているみたいですね。思い上がりも甚だしいことです。愛し子様の手を煩わせることがどういうことか、思い知らせると致しましょうか」


にこやかに笑っておっしゃられましたが・・・黒いものがにじみ出ていますよ、神官長様。それにおっかぶせる? 言葉がおかしくないですか?


などと、余計なことを思いながらも、なんと答えようかと考えを巡らせます。


「こりゃこりゃ、レオポルド。毒を吐くのはいいが、セリアテスを困らせるものではないわ」


私が困惑しているのが分かったのか、おじい様からの助け舟? です。


「それにの、ユーリックとスクワーレの小僧に女神様が言っておったじゃろ。あのことから考えるに、『魔法のこと』についてはある程度の目途が立っておるのではないかの」


おじい様はそう言うと馬車の後ろのほうへと視線を向けたのです。


「はい、リチャード様のご察しの通りに『魔法のこと』については『レベル制度』を提案することに決定しております」




359話。


セリアちゃんの懸念が一つ解消されたけど、まだいろいろあるよねえ。

きっと。


記録として(2020.3.11)

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