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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第3章 魔法と領地ともろもろと
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神官長話1-2 女神様の言葉は絶対(黒い笑み)後編

一応私の立場は現公爵に公認された実子です。それなのに頭の悪い輩はどこにでもいるもので、私のことを妾の子と蔑んできました。

これをするのが同じ公爵家の方なら問題はなかったのですが、侯爵家でもないその下、伯爵家の者や子爵家、男爵家の者たちがそれをしてきたのです。

私が学園在学中は、王家の方は在籍なさっていらっしゃいませんでした。他の公侯爵家の方で、在籍なさっていたのは男が2人、女が3人でした。

その方たちの目が届かないところでの暴言でしたが、見ている人はいたのです。彼らは卒業後、貴族同士の付き合いにも苦労する事態となったと聞いています。


そう、他人事のように言っているのは、私はそのことを直には知らないからでした。

というのも、この当時の国の状況のために、私は学園を途中で持して神殿へと入ったからです。


私の今の名前『レオポルド・アゼ・リングス』はもちろん、生まれた時からの名前ではありません。神殿に入る時には生家の家名は名乗れなくなるのです。

ですから、私は本当の父が亡くなる前につけてくれた『レオポルド』の名だけで、神殿に入りました。


神殿に入ってわかったことですが、セカンドネームにあたるものがあったことです。

『アゼ』というのは貴族家出身者につけられるものだそうです。『フニ』というのも貴族家出身者が名乗るものですが、こちらは女性用だと伺っています。

『クヒ』が貴族以外の者が使うことになっているそうです。


そして『リングス』こちらは出身国の一部をいただいた姓になります。察せられるように、これはフォンテインの大神殿で必要になるものです。神官、それも貴族家出身もしくはとても優秀な者は、フォンテインの大神殿で修業をしなければならないという、決まりがあるのです。

最低でも2年課せられています。かくいう私も5年の月日を大神殿で過ごしました。


リングスタットの総神殿に戻った私は、次の神官長と目されて過ごしました。ですがそれまでにはかなり長い年月がかかりました。まあ、私の年齢が若いのと、前の神官長がご高齢でもお元気だったことが原因ではあったのですが。


それにその間に私の生家では様々なことが起こりました。父(実際は兄)が亡くなって兄(実際は甥)が後を継いだのだけど、子供が女の子一人しか生まれず、妻が亡くなっても後添いを貰わなかったのでした。そのことで兄の立場が親戚から脅かされているらしいと聞きました。私も、表だって手を貸すことは出来ずにいる間に、兄は亡くなり娘一人が残されることとなったのです。

そして2年後、その娘も亡くなってしまい、生家は断絶した・・・のでした。


この時に、私に還俗して生家を継げと言ってきた者もいたにはいたのです。ですが、諸々の状況から私の還俗は実現不可能でした。


私が神殿に入ったのは、当時王家に神殿に入れる方がいらっしゃらなかったからでした。神殿と王家はお互いに関わらないのが不文律です。

ですが国名を姓に冠するように、神殿内での各国の力関係は侮れないものがあります。王家から神殿に入れば、その国での影響力は計り知れないものがあるのです。


だから、私の存在はうってつけだったというわけです。曾祖母(本当は祖母)に王女を持ち、王家の色を濃く受け継いだ公爵家出身の私という存在(もの)は、生家の断絶とかけても無くすわけにはいかないカードなのです。


現に今現在、女神様が降臨なされたこととセリアテス様のことで、大神殿から圧力をかけられています。私に大神殿の次期大神官の地位をちらつかせて、リングスタットの総神殿の神官長の座を、フォンテインの大神官の息がかかった者と変えようと画策しているのを知っています。

聖騎士のことにごり押ししてきたことでも、やつらの手の内は見えています。


フッ

大神官並びに大神殿の首脳部のなんと浅はかなことか。

女神様はそのような動きが起こることはお見通しでした。

だから、私に先に話をしてくださったのです。

今回の女神様のお言葉で、やつらの望みは潰えました。


私は、この国を愛しています。緑豊かなリングスタッド国。この国に生まれたことを、愛し合った両親のもとから生まれることができたことに、とても感謝しています。


私は、父の老いらくの恋の果てに生まれました。母が育った環境は劣悪だったようです。それが心優しい公爵家に仕えることになり、感謝をして過ごしていたそうです。父の前夫人に可愛がられ、心から使えて・・・夫人が亡くなり意気消沈する父と、密かに夫人のことを母と慕っていて悲しむ母が、お互いを慰め合うように寄り添った二人に、兄は何も言えなかったと語ってくれました。



さてさて、私が自分の神殿における立場などに思いを馳せている間に、女神様からの話は終わったようです。女神様はこの場を離れて神界へと戻られたようで、女神像から輝きは失われました。

セリアテス様・・・には、残滓のように光が纏わりつくように舞っていますが、もう少ししたら落ち着くことでしょう。


これから王宮へと向かわれるセリアテス様は、私のほうを窺うように見ています。


そうですね。領地に向かわれるというセリアテス様と話をする機会は、今をもってないでしょう。

私も王宮へとご一緒させていただくと致しましょう。



358話。

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