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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第3章 魔法と領地ともろもろと
357/444

23-20 女神様は神官長に・・・命じられました

『まあ~』


女神様は嬉しそうに声をあげました。どうやらレオポルド神官長の言葉・・・決意を気に入ったようです。


『それなら、(わたくし)からレオポルド神官長にプレゼントをしましょう』


弾んだ声で言った後、フッと神気が引き締まったように感じました。部屋の中にいる人たちは自然と背筋を伸ばしました。


『リングスタット国総神殿神官長レオポルドに(めい)ずる。その(いのち)尽きるまでリングスタット国総神殿神官長の任に就くことを!』

「はっ! 謹んで拝命いたします」


神官長は祭壇の前へと進み平服いたしました。私は・・・その姿を茫然と見ていました。


えーと、女神様の(めい)で、レオポルド神官長は命尽きるまで神官長のまま・・・。


「ま、待ってください」


私は体を起こした神官長へと縋りつくように抱きつきました。


「駄目です。そんなのは絶対だめです。私のためにそこまでしないでください」

「セリアテス様」


そっと背中へと大きな手が回り優しい声で話しかけられました。顔を上げると、神官長は微笑んでいました。


「なにか誤解をなさったようですね。セリアテス様、女神様が命じてくださったことは、私にとって願ったり叶ったりな事です」


今度は肩に手が置かれ、優しく離れるようにと促されました。私が体を離すと神官長様はしゃがんで目を合わせなおしてくださいました。


「本当ですよ。これで私はこの国から、いいえ、この神殿から一生動かなくていいのです」


神官長の言葉に首を傾げてしまいました。まだ少ししか分かっていないのですが、この世界の神殿の最高峰はフォンテインの大神殿です・・・よね。そこの大神官が一番偉い人になるのではないのでしょうか。リングスタット国の総神殿の神官長というのは、大神官より下の地位のはず・・・ですよね。


「フフフッ、セリアテス様、私にとってこれ以上ないご褒美ですよ。セリアテス様がこの国にいらっしゃる限り、こうして女神様とお言葉を交わす機会が増えるのです。フフフッ、先ほど、女神様が私達に呼びかけられたのを、この神殿に居るものは聞いています。これでこの神殿の神官長の地位を狙って来ようとしても、女神様のお言葉は絶対ですからね。何者にもなり替わることは出来ないということです。フフフッ」


・・・笑顔が黒・・・いえ、何でもないです。気のせいでしょう。


「じゃが、逆にレオポルド神官長を狙うものが出てくるのではないか」


おじい様が、・・・えーと、これはまさか神官長の暗殺の可能性の話ですか。


『リチャード、あなたがセリアテスを怯えさせてどうするの。そのようなことにならないように、このあと大神官に話を通しておくわ。それでも心配なら、皆に徹底されるまでは、あなたが何とかしなさい』

「女神様、なんでわしがそんなことをしなければならないのですか」

『あら、かわいい孫のためでしょう』


女神様とおじい様が話をなさっていますけど・・・なんか気安い話し方のような気がします。・・・ではなくて、不敬ではないですか、おじい様。


『それでは次ね』


女神様はここで言葉を止めました。視線が・・・いえ、神気が部屋の入口の方へ向かうのを感じました。


『ソニック・アルジャーノ・スクワーレ、ユーリック・コモナー、前にいらして頂戴』


女神様の言葉にソニック君はビクッと体を震わせました。扉の前にいたコモナー執事長が静かに歩み寄り、ソニック君の顔を覗き込むようにして手を差し出しました。その手をソニック君はぎゅっと握りました。ソニック君を導くように執事長は祭壇のそばへと来ました。


『セリアテスから聞きました。二人にも前世の記憶があると』

「は、はい」

『そのことについては申しわけないとおもっているわ。本来ならそのようなことは起こらないはずだったの。だから安心して頂戴。あなた方に使命というものはないわ。これはセリアテスも同じよ』


・・・えーと女神様、言葉が少し足りないですよね。


少し困ったような顔をソニック君がしています。執事長の顔を見上げてからおずおずと口を開きました。


「それは本当なのでしょうか。転生するということは何か特別に()にやらせたいことがあったんじゃ・・・」

『いいえ。何かを期待をさせてしまったのなら、ごめんなさい。ゲームやラノベみたいな状況で転生をしたわけではないわ。輪廻転生はどの魂もしていることで、本来は前の記憶は消されて覚えていないのよ。少し不具合が起きていて、前の記憶を残したまま生まれる人がこの数年多くなっているだけなの』


・・・今度はぶっちゃけ過ぎです、女神様。お父様たちだけでなく神官長まで驚いていらっしゃいます。

その気配を感じたのか、女神様からテヘッペロ・・・というイメージが送られてきました。

えっ? これの説明を私がすることになるんですか?


『でも、せっかくだから二人にお願いしたいことがあるの』

「何でございましょうか、女神様」

『あなた方の知識を、セリアテスのために使ってほしいのよ。ああ、これでは正しくないわね。セリアテスからの相談にのってあげて欲しいわ』


女神様は嬉しそうにニッコリと笑い・・・いえ、笑った気がしたのでした。



356話。

次で閑話が入ります。

……

閑話なんだけど閑話じゃないような?

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