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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第3章 魔法と領地ともろもろと
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23-17 乙女ゲームとの関連性?

私は女神様の言葉に何も言えずに、ただ女神様のことを見ていました。それに気がついた女神様はにこりと笑いました。


「魔物がどういうふうに発生するのかは、他の人たちには内緒にしてね」

「どうしてですか。このことを各国に伝えれば、魔物が発生しないように対策が・・・できませんね」


女神様に返事を言いかけて、気がつきました。自然界にいる野生の動物を、魔素が溜まったところに行かせないようにすることは出来るわけがないのです。そもそも、魔素がどこに溜まるのかは女神様でもわかっていないみたいですし。


「それもそうなのだけど、そろそろこの世界の人たちも魔物がどうして発生するのかを、気が付き始めているわ。せっかく研究しているのに、それを無にすることはしたくないわ」


つまり人類の発展のために黙っているということなのですね。


「それから、転生についてだけどね、この世界だけでなく他の世界の人間もみんな転生を繰り返しているの」

「ええっ! それは本当ですか」

「もちろんよ。ただね、転生する時には前の記憶はすべてまっさらにしてから、新しい生命として生れ落ちるのよ。魂がいる場所は決まっていて、そこから順番にいろいろな世界に転生していくのよ。セリアテスの前世の女性と今のこの世界とではかなり違うでしょう。そういう混乱を起こさないためであるのよ」


なんか、思っていたのと違い過ぎます。えーと、転生システムとでもいえばいいのかな。そういう決め事があったんですね。・・・でも、それではなんでコモナー執事長やソニック君みたいに覚えている人が居るのでしょうか。


私が口に出さなくても疑問が顔に出ていたみたいで、女神様がまた苦笑いを浮かべました。


「そうはいっても、中にはこちらが頼んで記憶を持ったまま転生してもらう人もいるわ。でも、そんな特殊なケースは滅多にないのよ。それなのにこの400年あまり、他の世界の記憶を持った人が何人もこの世界に現れたの。確かにね、文明が発達して暮らしやすくなっているとは思うのよ。だからと言って、そのことを許せる訳がないわ」


女神様はどこかを睨むように見つめました。・・・えーと、どうやら女神様が意図していないことが起こっている、ということでしょうか。


女神様は気を取り直すようにマドレーヌをつまむと、優雅な手つきに食べられました。コーヒーを飲んで口の中を綺麗すると、気を取り直したように私に笑ってきました。


「だから安心して。セリアテスもあなたの周りにいる前世の記憶を思い出した人も、『使命』というものは与えられていないわ」


良かったです。ソニック君の懸念は払拭されました。


けど、女神様は目を伏せて言葉を続けました。


「だけど、セリアテスにはその方が良かったのかもしれないわね」

「女神様?」


悲し気に言われてしまい、私の中に嫌な予感が渦巻いてきました。女神様は目をあげると、ひたっと私のことを見つめました。


「先ほどセリアテスが言った『乙女ゲーム』、この世界は断じてそんな世界ではないのだけど、誰かがその世界に近づけようとしているのよ」


乙女ゲームの世界に近づける?


言われた意味が分からなくて、首を傾げてしまいました。


「そうよね。こんなことを言われても、セリアテスにはピンとこないわよね。でもね、私もあなたと同じ名前の悪役令嬢が出てくる、乙女ゲームを知っているのよ」

「女神様・・・」


私は驚愕に目を見開きました。この世界は乙女ゲームの世界ではないと、女神様はおっしゃいました。でも私の名前、セリアテス・クリスチーネ・フォングラムが出てくるゲームを知っているとも言われました。


女神様は、何をおっしゃりたいのでしょうか。私にゲームの悪役令嬢になれと言いたいのでしょうか?


「そしてね、多分自分のことを『ヒロイン』だと思い込んでいる子が現れると思うのよ。かわいい私のセリアテスのことを『悪役令嬢』にしようとする輩がね」

「は、い?」

「ただでさえ私の世界を引っ掻き回してくれているのに、それだけじゃ飽き足らず、下賤なゲームの世界にしようとするだなんて許せないわ。私の力が及ばなくてこんなことになってしまい、本当に申し訳ないと思っているのよ、セリアテスには。セリアテスが断罪されることがないように、ストーリーを知っているサポートを用意したけど、あの子は今はそばにいないし・・・。まだゲームの開始まで時間があるとはいえ・・・」


途中から口の中でぶつぶつと言われてしまい、よく聞こえなくなりました。でも、『ストーリーを知っているサポートを用意した』という言葉が聞こえました。どういうことなのでしょうか。


「女神様、それはどういうことなのでしょうか」


女神様は私のほうへと目を向けました。


「セリアテス、先ほど言ったこの世界のことはゲームのストーリーに繋がっているのよ。今この世界では魔物の発生が抑えられてしまっているわ。だから、ゲームの通りではないけど魔物の大量発生は必ず起こるの。だけど、ゲームのストーリーを知っている『ヒロイン』には、魔物の大量発生が起こればゲームの世界としか思わないわよね。そして自分が『ヒロイン』だからと好き勝手するのだわ」



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