23-16 女神様から・・・この世界についての話を聞きます
女神様の言葉にまた瞬きをパチパチとしました。えーと、これはどういうことでしょうか。もしかして女神様は私に起こったことをご存じない・・・とか?
「私がセリアテスについて知っていることは、リングスタット王国のフォングラム公爵家に生まれたことと、ひと月半ほど前に急に魔力量が増えたこと。その魔力が私に近しいものだったくらいなのよ」
笑顔で言われて、私は顔に熱が集まってくるのがわかりました。そうですよね。女神様だからといって、この世界すべての人間のことを知っているわけではないのですよね。
「まあ、どうしたの、セリアテス。顔が真っ赤よ。熱・・・を、出すようなことなんて、ここでは起こらないはずなのだけど」
女神様は不思議そうに私のことを見てきました。
「違うのです。女神様でしたら、私のこれまでのことをすべて知っているかと思っていたのです」
「あら。まあ、そう思われて仕方がないかもしれないわね。確かにセリアテスが生まれてからこの時までのことを知ろうと思ったら、すぐに知ることは出来るわ。でもね、さすがに心の中のことはわからないのよ。怪我をして倒れて高熱を出したことは知っていても、何が記憶を失くさせたのかはわからないわ」
どうやら女神様は私に起こったことに興味があるようです。・・・いえ、当たり前ですね。急に髪の色が変わり、魔力が増えたのですもの。それも女神様が注目するくらいの増加だったということでしょう。
「だからね、話していただけないかしら」
女神様はにこりと微笑まれました。私はそれならばと、王妃様のお茶会で怪我をして倒れた後のことを、話すことにしました。
怪我をした時に、治療をしてもらってもズキズキと頭が痛み続けて、気を失ったこと。そして高熱を出して寝込んだ7日間の間、私は夢を見ていたこと。それはある女性の半生で、生まれてから亡くなるまでの様子を早回しのフィルムのように見せられたこと。その女性の趣味・・・に、驚いて記憶を失くしてしまったようで・・・。その驚いたものが乙女ゲーム、それもこの国のような王侯貴族がいる世界で、ヒロインが逆ハーレムを築くという内容や、悪役令嬢が断罪されるなどというもの。そして、高笑いをしていた令嬢が、記憶を失くす前の自分と重なって見えた・・・と、思ったような気がすると、伝えました。
それから、その後あるゲームの悪役令嬢と私の名前が同じだと気がついたことも言いました。そのゲームの中で魔物の大量発生が起こっていたこと。それをヒロインを含めた学園に通う生徒たちと協力して、対処をしていたことなどを話しました。
それと、魔術師長にお願いをされている魔法のことも、話したのでした。
「そうだったのね。セリアテスは前世の記憶を思い出してしまったのね」
女神様が呟くように言われました。ということは、やはりあの女性は私の前世ということなのですね。ということは、ソニック君が言っていたことも聞いた方がいいのでしょう。
「それから女神様、私の他にも前世の記憶がある人がいます。その人が言っていたのですが、『神様に使命を託されて転生』したのではないかと。私も忘れているだけで、転生する時に何か使命を託されたのではないですか?」
女神様は微かに眉を寄せてしばらく考えていらっしゃるようで、何も言いませんでした。私は緊張をした状態で女神様のことを見つめました。一瞬なのか、数十分が経ったのかわからないのですが、女神様がフッと息を吐き出しました。
「セリアテス、他に聞きたいことはあるかしら」
「ええっと、他は・・・今は思いつかないです」
「そう、わかったわ」
女神様はそうおしゃると、カップを持ってコーヒーを飲まれました。・・・意識の世界だからなのか、先ほどほとんど飲まれたはずのカップには、温かいコーヒーがたっぷり入っていました。
「それでは、セリアテスの疑問に答えてあげるわね。まずはこの世界のことから。この世界は私が管理を任されている世界なの。この世界の特色としては、魔法が使える世界にしたということね。ただ、これが良し悪しだったのよ。魔法を使うには魔素が必要で、その魔素の扱いに苦心させらているの」
女神様は困ったように笑いました。
「魔素はこの世界のどこにでもあるのだけど、時々溜まるところが出来てしまうのね。そこに魔素を吸収できる石があればいいのだけど、そんなに都合よくあるものではないわ。そうすると他のものが魔素を取り込みすぎることになってしまうのよ」
「それは、えーと、魔石のことですよね。でも魔石になる石がないと・・・えっ。まさか魔物というのは!」
女神様はもう一度カップに口をつけてから、苦々しい口調でおっしゃいました。
「本来は魔力が人の体を巡るように、魔素もこの世界を循環させるはずだったの。でも地形などの関係でどうしても溜まるところが出来てしまって。そこに入り込んだものが魔物に変節するだなんて思わなかったわ」
352話。




