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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第3章 魔法と領地ともろもろと
349/444

23-12 女神様の愛し子としての仕事・・・ですか?

レオポルド神官長は優しい笑みを浮かべました。


「セリアテス様、それほど大変なことをお願いするわけではありませんから、ご安心ください。セリアテス様は祝祭のことを知っていらっしゃいますか」

「はい、2月に春の祝祭、8月に秋の祝祭、9月に女神様をたたえる祭日があるのですよね」

「ええ、そうです。それと、年が変わる時に祈りを捧げます」


年が変わる時? それって大晦日のこと? えーと、彼女の知識だと、年越しのお参りをするといいとか、除夜の鐘をならすとか、年越しそばを食べるイベントのことだったような?

んん? なんか違う気もするけど・・・でも、年が変わることを祝うことだった気がする。


「こりゃ、レオポルド神官長。まさかセリアテスに一日祈り続けろなどと、言わんじゃろうな」

「そんな、滅相もございません。ただ、お忙しいとは思われますが、12月30日と1月1日に、神殿に来ていただき祈りを捧げていただけますと、女神様も大変喜ぶと思います」


おじい様に睨まれながらも、レオポルド神官長は言い切りました。えーと、確かにそうですよね。本来なら私は神殿に居なくてはならない立場になったのだと思います。それを女神様が「私の自由にしていい(意訳)」と言ってくださったから、私はフォングラム公爵家で暮らしているわけです。なので、おじい様も威嚇するのではなく、もう少し譲歩してもいいのではないかと思ってしまいました。


「えーと神官長様、一日中神殿に居なくていいのですか」

「はい。もちろんです。セリアテス様は自宅でも新年を迎えるご用意がおありになると思います。ですから、一日こちらにいらっしゃるのではなく、参拝に来る方々と同じように少しの時間だけいらしてくださればいいのです」


お祈りを捧げるだけ・・・新年のふるまい物はないということなのかな? 

えっと、わからなければ聞けばいいですよね。


「あの、神殿から何かふるまうものはないのですか」

「ふるまう?」


あっ、神官長が怪訝そうな顔をなさってます。やはり、彼女の知識のようなことはしていないということなのでしょう。


「それが何を指すのか分かりませんが、ふるまい物が出るのは春と秋の祝祭の時と決まっています。年が変わる時には花ろうそくを参拝者が掲げて、祈りを捧げるのです。女神様の祝祭の時には、それぞれの神殿に寄進物が納められますけどね」

「寄進物?」


軽く首を傾げてしまいました。えーと、年が変わる時の祈りは花ろうそくなるものを掲げてお祈りをして、春と秋にはふるまい物が出る、と。それで、女神様の祝祭の時に寄進物が納められる・・・寄進物って何かしら?


「寄進物というのは、その領の特産品や各家から献上金のことを言います」

「献上金・・・とは、なんですか」


レオポルド神官長が言うには、家一軒につきいくらと、納める金額が決まっているそうです。基本はこの時以外に、お金を徴収することはないそうです。あと、簡単に神殿の収入・・・と言っていいのかな? それを教えてもらいました。


やはり神殿には怪我を治す癒し手・・・治癒魔法が得意な方が多くいらっしゃるそうです。その治療代と、参拝した方々の・・・お賽銭・・・じゃないか。えーと、でも、お賽銭でいいのかしら。参拝料ではないと言ったもの。神殿側から神殿内に入るのにお金は取っていないとも言ったし。


えーと、その、女神様が降臨なされたあの日以降、神殿に参拝する人が凄く増えたそうなのです。中には熱心に毎日お祈りをしにいらっしゃる方もいるそうです。それがここだけでなく、各地にある神殿すべてがそう見たいです。そして今まではただお祈りに来る方が多かったのが、1ガルドだけでも置いていかれる方が増えたそうなのです。


あと、神殿の主な収入源は貴族家からの寄付になりますね。この寄付は神殿のある場所次第で、金額に大きな差が出るそうなので、寄付だけは大神殿に報告するそうです。そして、各神殿ごとに一年間に集まる寄付金額の中から使える額が決まっているそうで、多い場合は大神殿に納めることになるそうです。大神殿は少ない額しか集まらない神殿にそのお金を回しているようです。あと、それ以上の差額は、各神殿に均等に振り分け直されると聞きました。


あっ! 忘れていました。今まではアラクラーダの神子が伝えたものの権利が神殿にあったとかで、それも収入源になっていたそうです。でもこれは、各神殿の裁量に任せていたとかで・・・ここが悪の温床になっていたようですね。


「ありがとうございました、神官長様。それでは先ほどの話に戻りますが、私が『愛し子』として、神殿に来るのは、12月30日と1月1日でいいのですね」

「そうです。よろしくお願いいたします、セリアテス様。春の祝祭のことなどは、後日お話を致しましょう」


神官長は微笑まれたあと、表情を引き締められました。


「それでは、これからセリアテス様がこちらにいらっしゃることになったことを、致したいと思います」


私も気を引き締めて背筋を伸ばしたのでした。



348話。

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