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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第3章 魔法と領地ともろもろと
348/444

23-11 神殿に来ました

神殿に着きました。が、広場には人だかりができていました。今回は私(女神様の愛し子)が来るとは、知らせてないはずなのですけど?

見ていますと、どうやら神殿にお参りに来たのに、止められてしまった人たちみたいです。


馬車を降りると入り口にレオポルド神官長がいらっしゃいました。


「ようこそおいでくださいました。女神様の愛し子、セリアテス・クリスチーネ・フォングラム様」


そう言って私に頭を下げてきました。他の神官たちも同じように頭を下げています。えーと、何か言ったほうがいいのですよね。


「お出迎えをありがとうございます。レオポルド神官長様、神官の皆様」


皆様は頭を上げられました。神官たちに畏まられてドキドキしてきました。


「ご用意は出来ております。どうぞこちらへ」


と、神官長が案内をしてくれようとしました。それに「待ってください」と私は声を掛けました。


「どうかなさいましたか」

「あの、広場にいる皆さんは神殿にお参りに来た方たちなのではありませんか」


私の言葉に一瞬神官長たちは視線を民衆へと向けました。


「ええ、そうですね。ですが、セリアテス様が来られるということで、皆さんは快く待つことにしてくださいましたよ」


やはり私が急に女神様と話がしたいと言ったので、神殿内に他の方々を立ち入れないようにしたみたいです。


「セリアテス様がお気になさる必要はありませんよ」


私の視線が広場のほうに向いて動こうとしないので、神官長が重ねて言ってきました。ですが、私のわがままで急に予定を変えたのです。皆さんに何も言わないで神殿内に入ることは躊躇われます。


「あの、皆さんに私から一言話してもいいですか」


意を決して神官長に言ってみました。皆様は驚いたように私のことを見つめてきました。


「えー、そうですね。セリアテス様がそうなさりたいのであれば」


神官長が歯切れ悪く言いましたが、言質は取りました。なので、私は広場のほうを向きました。お父様たちが場所を移動して、広場から私の姿が見えるようにしてくださいました。


えーと、広場の人たちに声を届けるのだから、風の魔法かな? 拡声器で広がっていくイメージでいいかしら?


私はすうーと息を吸ってから話し出しました。


「広場にお集まりの皆様。神殿に参拝に来られたのに、お待たせしてしまうことになってしまい、申し訳ありません。わたくし・・・えーと、セリアテスの用が済むまで、神殿内に立ち入ることの制限をさせてしまうことになりました。本来なら先に神殿に申し入れておくべきことを、急遽参拝することにしてしまい、皆様にご迷惑をおかけすることとなってしまいました。皆様にもご用がおありだと思いますが、わたくしの用が済むまでお待たせること、本当に申し訳なく思います。なるべく早く済ませるようにしたいと思います。どうかしばしお待ちくださいませ」


最後の言葉と共に頭を軽く下げてドレスを持ち上げて腰を落とす貴族の礼をしてから、体を戻すとともに顔を上げました。広場の前のほうにいる方が、目を大きく見開いているのが見えます。それからゆっくりと声が聞こえてきました。


「セリアテス様~」

「女神様の愛し子(いとしご)様~」

「月光姫様~」

「いつまでもお待ちしていますので、お急ぎにならなくていいですよー」

「そうです。ゆっくりとなさってくださーい」


皆さんが手を振ってくれるので、私も振り返しました。歓声が大きくなった気がします。しばらく手を振っていると神官長に「そろそろ参りましょう」と言われてしまい、私は軽く頭を下げてから神殿の中へと向かったのですが、一層歓声が大きくなった気がしました。


前回と同様に三つある扉の、真ん中の扉を通って案内をされました。扉のところにはやはり二人ずつ扉を開ける係の方が居ました。えーと、前回と少し違うのは、皆様の私を見る目でしょうか? 憧憬? のようなものを感じます。中には明らかに頬を染めて私のことを見つめてくる方がいますけど・・・。いえ、余計なことを考えるのはやめましょう。


えーと、この前女神様とお会いした礼拝堂・・・でいいのでしょうか? その部屋を通り抜けて、その奥へと神官長は歩いていきます。辿り着いたのは神殿の中でも奥深い部屋。形としては表の礼拝堂と同じような作りです。ですが大きく違うことがありました。それは魔石があることです。部屋の端のほうに六つの魔石と、中央にかなり大きい魔石があります。


きっとコモナー執事長が言いたかったのはこのことなのですね。魔石が女神様に呼び掛けをする手助けをしてくれるのでしょう。


レオポルド神官長は、祭壇(もちろんこちらにもありました)の前まで行くと、くるりと向きを変えて私のほうを向きました。


「セリアテス様、ご連絡をいただきましたのは、セリアテス様が女神様と直接お話をしたいということでしたが、それでよろしいですか」

「はい」


私が頷きながら答えましたら、レオポルド神官長も頷かれました。


「わかりました。ですがその前に少しお話を聞いていただけますでしょうか」

「お話ですか」

「はい。セリアテス様に女神様の愛し子として、なさっていただきたいことについてです」


私は瞬きを二度ほどしてから首を傾げました。



347話。

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