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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第3章 魔法と領地ともろもろと
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23-10 不安の解消のために・・・

私はおばあ様を見つめながら、話していきました。


ソニック君の言葉で、私もこの世界に生まれる時・・・えーと、転生というのでしたね。その転生の時に女神様から何かを託されていたのかもしれないということに、気がつきました。それを忘れて今まで過ごしていたのではないか、と。


それから、やっと気がついた・・・というよりも、自覚したと言ったほうがいいのでしょうか? 私が不安に思っていることについてです。


『私』の『言葉』通りに、周りが動いていくのが怖い。そのせいで何かあった時に、その彼らの人生を狂わせてしまうかもしれない。そんなことになっても彼らの人生まで背負えない。そうするとうかつなことは言えない。


でも、女神様は自分の代わりに『言葉』を伝えてもらいたいと思っている。


『魔物の大量発生』は今までに起こっていたことだから、この先に起こり得ることとして、いろいろな準備をするのはいいことだと思う。


『魔法』のことは・・・どうしていいのかわからない。今までのやり方がまどろっこしいくらいに煩雑だったのなら(魔法を使えるかの判定みたいに)、正すことはありだろう。でも、この世界の魔法のことをわかっていないのに、魔法の基準を示すようなことをしていいのか・・・。


その前に一体女神様は私に何をみんなに伝えてほしいのかが、わからない。


そんなことをぽつぽつと話しました。


おばあ様は私の言葉が止まると、額に手を当てて、はあ~と息を吐きだしました。それから私へと近づいて・・・ぎゅうっと抱きしめてきました。


「ごめんなさいね、セリアテス。私達はあなたのことを考えていなかったようね。不安を抱えていたことに気がつかなかっただなんて。そうよね。女神様に言われた言葉には、具体的なことは何も含まれていなかったもの。諸々のことに対処することばかり考えて、あなたの気持ちは何も考えていなかったわ。記憶を無くしたということだけでも不安だったでしょうに、いきなり『女神様に愛し子(いとしご)』と言われて、相応しくあろうと振舞おうとするセリアテスを見守ろうとだけ(・・)、するのではなかったわ」


おばあ様が私を抱きしめる力が強くなりました。


「神殿に行って、女神様に直接文句を言いましょうね。こんなに努力家で可愛いセリアテスを認めてくれたのは見る目があるけど、具体的なことを言わないで悩ませたのですもの。それくらいのことを言ってもいいと思うわ」

「いやいや、それは不遜じゃろう」

「まあ、何を言うのかしら、リチャードは。セリアテスがこの数日にどれだけの努力をしたのか、わかっていないとは言わせないわよ」


おばあ様は顔をおじい様のほうへ向けて言いました。・・・が、何やら考えが明後日の方向へいっていませんか。努力というほどのものを、私はまだしていませんけど。


そんな考えが顔に出ていたのか、隣からミルフォードお兄様の呟きが聞こえてきました。


「セリアは自分のことを過小評価のしすぎだと思うな。お披露目会の前の二日間でリングスタットの貴族家の名前を覚えていたじゃないか。259家の名前を覚えただけでなく家族構成まで覚えきったのは、凄すぎだと思うよ」

「えーと、公侯爵家のお名前はその前にお聞きしていましたから、239家を覚えるだけでしたし、挨拶をされる時にお名前を読み上げてくださったので、うろ覚えでもなんとかなりましたけど?」


小さな声でお兄様に答えたつもりでしたのに、なぜか部屋中からため息が聞こえてきました。そっと周りを見回しましたら、お父様が難しい顔(眉間にしわが寄っていたので)をして、おじい様に言いました。


「最優先はセリアテスでいいですね」

「むろんじゃ」

「それでしたら、このあと直ちに神殿へと向かいましょう。ジークフリード殿、姉上、お二人には申し訳ございませんが、王宮へ向かっていただき牽制をしていただきたいと思います」

「それは構わんが」


ジーク伯父様は少し歯切れ悪く答えました。その伯父様にカテリア伯母様が、腕に手を掛けて宥めるようにおっしゃいました。


「ジーク、今は諦めなさいね。私も女神様とお言葉を交わすところに立ち会いたいけど、王宮にそれを知られて神殿に押しかけられたらたまったものじゃないわ。それよりも女神様と愛し子の対話が可能となるかどうかのほうが大切でしょう。うまくいけばこの後、いくらでもその機会はあると思わない」


カテリア伯母様の言葉に、不承不承頷いたジーク伯父様。その伯母様の視線が扉のほうへと向きました。


「あなたたちも今の話を聞いたわね。王子方と王女方が勝手に動かないように、見張って頂戴ね」

「ええ、わかっておりますわ」

「もちろんさ」

「任せてよ、母上」


クラーラお姉様とローラントお兄様とオスカーお兄様が、胸を叩くようにして請け負ってくださいました。というか、お姉様、お兄様方もこちらにいらしたのですね。


「スクワーレ伯爵、其方たちも一緒に神殿に行ってもらうぞ」

「心得ました」


スクワーレ伯爵が返事をなさり、スクワーレ伯爵家も一家で神殿に行くことになるみたいです。


しばらくして神殿から「お待ちしております」と連絡がきたので、私達は邸をでて神殿と王宮へと向かったのでした。



344話。


次は閑話が入ります。

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