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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第3章 魔法と領地ともろもろと
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23-7 神殿という場所は・・・

「えーと、何を想像したのか知らないけどね、セリア、この前、神殿に行ったときのことを思い出そうか」


ミルフォードお兄様が苦笑交じりに言いました。私はお兄様のほうを見て、軽く首を傾げました。そうしたらもっとお兄様の苦笑は深くなった気がします。


「そうだね、こういわれても、セリアは困るよね。あの時は神殿内を見ている余裕はなかっただろうからね」


それはどういうことなのでしょうか。神殿には何か秘密があるということなのでしょうか?

お兄様は私の顔を覗き込むように見てから、わかりやすく話してくださいました。


「あのね、女神様に呼び掛けるには場を整える必要があるんだよ。神殿はもちろん女神様を崇め奉っているよね。そういう場所ということもあるけど、それだけではなくて、女神様に言葉が届きやすくなっているんだ。えーと、そうだね、セリアは忘れてしまったけど、神殿の役割は女神様と人とを結びつけるものなんだ。この世界は女神様がお作りになって、恩寵によって過ごしやすくなっているんだよ。それでね、この世界には人が住まない土地がまだまだたくさんあるというんだ。その地は極寒の地であったり、炎獄の地であると聞くよ。前にフォンテイン大神殿の神官長が女神様にお聞きになったことで、わかったことなんだけどね」


何ですか、それは。えっ? 何を聞いたの?


「神官長が聞いたのは、この世界のことだよ。この世界は人が住んでいる3つの大陸といくつかの島しか、土地がないのかと、ね。たしか、フォンテインより南のほうにもう1つ大陸とかなり大きめの島々がいくつかあるそうなのだけど、人の航海技術がそこにたどり着けるまでないことと、すごく厳しい環境なのだと言っていたそうなんだ。えーと、隔絶された土地だったかな。人が住むには厳しいと言ったそうだよ。それで、女神様はその土地には女神様の恩寵が届いていないのだとも言ったと伝えられているよ」


恩寵が届いていない土地? そんな土地があるの?


ふと、私の頭の中にあるゲームの内容が浮かんできました。たしか、あれは育成ゲームだったはず。・・・そうよね。最初から広範囲を育成できるわけではなかったわ。少しずつ拡張していった・・・はず。それならば女神様も、少しずつこの世界を過ごしやすい環境に整えていらっしゃるのでしょうか。


私が考えている間に「少し話がそれちゃったかな」と、お兄様は言いました。


「今の話はね、神殿が如何に女神様と話がしやすい場所かということを、言いたかったんだ。貴族は家に女神様を祀る場所を整えているから、月に一度神殿に行くくらいなんだ。それも大体は当主か夫人などの代表者が行くくらいなんだよ。セリアもこの間神殿に行ったのが今年3度目だからね」

「ええっ! そうだったのですか」

「うん。貴族がかならず神殿に行くのは2月と9月だよ。春の祝祭と女神様をたたえる日。このどちらも祝祭が一旬の間続くからね。というよりもそうしないと人民が混乱するから6日間ですることを決めて、それぞれの日に何をするのかと知らしめたようだよ」


えーと、お兄様の微妙な言い回しによりますと、貴族と一般の方とを分けたとか、場合によっては地方から見物に来れるようにした・・・みたいなことのようですね。


「それにね、神殿に行くのはちょうどいいと思うんだ。セリア、領地に行くことを神殿に知らせてないよね」

「あっ!」


そうでした。何も伝えてないです。えーと、えーと、・・・もしかしてまずかったですかね。

私の心配を払うようにお兄様は微笑んでくれました。


「大丈夫だよ。基本はセリアが何をしたっていいんだからさ。ただ、神殿からも護衛がどうのといいだすはずさ。聖騎士の選抜がどうなっているか、知っておきたいしね。コモナー執事長、このことも含めて父たちにすぐに話を通してほしい」

「かしこまりました」


執事長はお辞儀をすると、扉のほうへと向かおうとしました。


「待ってください。俺も女神様と話がしたいです」


顔を下に向けて何か考えていたソニック君が、顔をあげるとそう言いました。


「ソニック。何を言い出すのよ」

「だってさ、いい機会じゃん。セリアテス様にくっついていけば、女神様と話が出来るんだろ」

「そんなわけないでしょう!」


フィリナはソニック君を怒鳴りつけました。ソニック君はフィリナのことを睨むように見ました。


「だってさ、姉ちゃん、考えたことある? 俺はさ、自覚してからずっと考えていたんだ。なんで前世なんかを覚えているのかをさ。あっちの世界で流行った話だとさ、神に使命を託されての転生ってのがあんだよ。俺もさ、今はそんなことは信じてないけどさ、それでもその使命を忘れている場合があるかもしれないんだぞ。そのことを直接女神様に聞くことが出来れば、はっきりするわけじゃん。こんな中途半端な状態は嫌なんだよ!」


ソニック君は声を荒げることなく言い切りました。私は、ソニック君がこのようなことを考えているとは思いませんでした。なんと言ったものかと言葉を探していると、ボソボソとソニック君は付け加えるように言いました。


「今はこの世界が俺のために用意された世界じゃないって、わかっているさ。女神様がセリアテス様を『愛し子』といった時点でさ。・・・でも、じゃあなんで俺にはこんな記憶があるんだよ」



341話

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