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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第3章 魔法と領地ともろもろと
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23-5 ゲームの世界 ではない?

コモナー執事長は淡々と話していました。


「その亡くなった方は彼にとって、最愛の人でした。彼はそれから魔法を使って治療をすることを辞めたそうです。このように中途半端な知識による魔法は、成功しないのです」


ソニック君は顔色を悪くしていましたが、執事長に質問をしました。


「あの、えーと、そのー、その魔法で腫瘍を取り除いたってことだろう。そうしたら、取り除いたものを、再生させればいいんじゃないのか」

「逆にお聞きしますが、ソニック様はどうやってその取り除いたものを再生させるのですか」

「そりゃあ~・・・って、あれ? どうやるんだ?」


質問に質問で返されて、ソニック君は考えましたが、すぐに問題点がわかったようです。執事長は真面目な顔でソニック君のことを見つめました。


「取り除いたものが、本当に小さいものならどうにかなりますが、大きいものだとどうにもなりません。ましてどこの臓器や細胞なのか骨なのかは、取り出すまでわからないのです。治癒魔法というのは、怪我を直すものですが、これは怪我をなかったものにする魔法ではありません。人の体の再生能力を高めるものなのです。だから、怪我をすればどれだけ小さなものでも、傷跡は残ります」


私はこれも身をもって体験しています。あの記憶を失くす原因になった怪我ですが、治癒魔法で血は止まりました。ですがそこの部分を触れば、傷跡があるのがわかるのです。ゲームみたいに跡形もなく綺麗に治るということはないのでしょう。


ということは。


「ここはゲームの世界ではない?」

「もちろんでございます、セリアテス様」


執事長ははっきりと言いました。あまりにも自信ありげに言われてしまい、戸惑ってしまいました。


「えーと、執事長、根拠はあるのでしょうか」

「根拠ですか。もちろんでございます。それよりもセリアテス様は、この世界がゲームの世界だと思われていたのでしょうか」


逆に聞き返されてしましました。


「あの、私はゲームの世界だとは・・・その、思っていない・・・いえ。ゲームと似た世界だと思っていました。ただ、ゲームの世界だとするには、彼女の記憶に在ったゲームの内容と、ところどころ相違点がありました。だから、違う世界ではないかと・・・」

「確信が持てなかったのですね、セリアテス様」

「はい」

「類似点が多すぎたからですか」


執事長の鋭い言い方に、私は何と答えようかと思いました。あのゲームのスチルのことを言ってもいいでしょうか。執事長はその話をして、わかってくれるのでしょうか?


いいえ。きっと大丈夫。執事長も前世の記憶を持っているのですもの。わかってくれるはずです。


「彼女の記憶の中にミルフォードお兄様のスチルがありました。これがこの世界がゲームの世界だという証拠になるのではありませんか」

「ミルフォード様のお姿が? では、セリアテス様、他の方のお姿をそのスチルで見かけましたか」


言われて思いだしてみます。そういえばあのゲームのスチルは『隠しキャラのミルフォード・カイセル・フォングラム』しか、思いだせていません。


「いいえ、他の方のスチルは彼女の記憶の中で、見ていません」

「では、他のゲームのキャラクターの名前は憶えていますか」

「・・・王子様方が出てきていました」


そうです。他のキャラでは王子様方の名前しか、思いだせていません。


「それではもう一つ。セリアテス様もゲームのキャラクターとしてお名前がありましたが」

「はい」

「それはどういったお姿でしたか」


ゲームの『セリアテス』の姿? 


「確か、茶色い髪の女の子だったと思います」


私の答えを聞いた執事長は微笑まれました。


「今のセリアテス様のお姿とは、かけ離れておりますね」

「あっ!」


そうでした。今の私の髪の色はプラチナブロンドです。・・・えーとプラチナブロンドというより、淡い金色。そう、皆様が私につけたあだ名のように『月光色』です。


「駄目押しにもう一つお聞きいたします。そのゲームに『女神様の愛し子』と呼ばれる方は、出ていらっしゃいましたか」

「・・・いいえ、いませんでした」


私は茫然としながら返事をしました。


「お判りいただけましたでしょうか。もしこの世界がゲームの世界であったのなら、私やソニック様のようなものがいるわけはないのです」


私は混乱してしまいました。ゲームの世界でなかったということは、喜ばしいことです。私はヒロインの邪魔をする悪役令嬢ではないのですから。ですが、それでは、私が今まで言った言葉はどうなってしまうのでしょうか。


女神様は私の言葉を聞きなさいとおっしゃいました。これから起こる困難に立ち向かいなさいとも、言いました。


私はこの事をゲームの知識から『魔物の大量発生』だと、言ってしまいました。周期的に起こってもおかしくないと、皆様が頷いていました。


でも、これが間違っていたら?

実は魔物はもう現れなくなっていたとしたら?


あのゲームと類似しているだけで、ゲームとは全然関わりがない世界だとしたら?


私は間違った情報を伝えたことになるのではないのでしょうか。



339話です。


月日は進まないけど、物語の核心に近づいてきました。

これで、話が加速するといいな~。

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