表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第1章 セリアテスと記憶喪失と王宮の人々
34/444

医師話5 若輩者の発言で大変なことになりました・・・

「本当にありませんの?」

「あの、いいですか」

「あら、医師の方だったわよね」

「はい。ウルバーンといいます。」

「そう、で、何か気になったのかしら」

「はい。二つほどあります。医師長様、診察をなさったときに筋力が衰えているとおっしゃっていましたが、7日間動かなかっただけで足に力が入らないくらい筋力が落ちるのは、おかしくはないのですか」

「言われてみれば、たしかにな」

「もうひとつは、私が令嬢に7日間寝ている間に、うなされていたから夢を見なかったかと聞きましたら、考えながら答えてくれました。ですが、答え方が不自然だった気がするのです」

「答え方が不自然だった・・ですの?」

「そんな風には感じなかったが」

「一瞬でしたが動きが止まりました。すぐに手を口元に持っていき考えるようにしていましたけど、なんか無理やりというか誤魔化そうというか、そんな感じにとれました」

「気のせいではないのか」

「私も最初は気のせいだろうと思いましたが、私のあとに学者殿に話しかけられてホッとした表情をしましたので、間違いないとおもいます」

「ホッとした表情をしたかのう」

「あまりあからさまに変わったわけではありませんでしたが、学者殿のほうを向いたときに表情が緩んだのをみましたので」

「・・・よく、みていたなー」


皆様は私の言葉に驚かれたようですが、私の説明に納得していただけたようです。


「ウェルナー医師長、ウルバーン医師がいっていた筋力の低下についてだが、本来であればあそこまで落ちることはないのか」

「はい。今までも10日ほど、熱を出して寝込んだものがおりましたが、ふらつくことはあっても歩けなくなるということはありませんでした。もし、あそこまでの筋力の低下がおこるとしたら、半年以上歩くことがなかったですかね」

「呪いや毒によって神経がやられたということはないのだな」

「はい。私が行った魔法は患者の状態を把握するものです。怪我や、毒、呪いなど、身体に現れた異常はすべてわかります。たとえ巧妙に隠されていたとしても、異常があることはわかるものです」

「それではこれをどうみるのだ」

「それは・・・わかりません、としか、答えようがありません」

「わからぬのか。推測でもいいのだぞ」

「はい。もうしわけありませんが・・・」


医師長の言葉を聞いていて突拍子もない考えが浮かびました。

いやいや、まさか。・・・いくらなんでも・・・


「入れ替わったなんて・・・」


ありえない。そんなバカなことがあるわけない。

呟いたことに気が付きませんでした。


「今、なんといったのだ。ウルバーン医師。入れ替わったとはどういうことだ」


自分の考えに没頭して目線が下にいっていたのを上にあげると、皆様に注目されていました。


「あの、すみません。馬鹿げたことを考えてしまって」

「よい、馬鹿げた推測でかまわん。何でもいってみろ」


国王陛下に言われてしまいました。


「本当に、突拍子もない考えなんですが、セリアテス嬢は寝込まれていた7日間の間に人格が入れ替わってしまったのではないかと思ったのです。それならば、口調が違うのも、雰囲気が変わったのも、しっかりした受け答えをしたことも説明がつきますし、私との受け答えが不自然になったのも納得がいくかな・・と」


だんだんと声が小さくなりました。自分でも言っていながらあり得ないことだと思っています。

でも、皆様の顔は真剣に考えこんでいます。


「あの、ただの思いつきなので・・・その・・・」

「いや、その考えには一理あると私も思うぞ」


魔術師長がおっしゃられました。


「彼女は今までと違いすぎる。記憶を失ってしまったとしても、今までの言葉使いや仕草など、ちょっとしたところに前の彼女がでてくるはずだ。それが感じられないということは、人格の入れ替わりがおこったのかもしれない。それどころか、身体も入れ替わってしまったかもしれないぞ」

「お前は何を言い出すんだ」

「だが、これで説明がつくのではないか。彼女の魔力が増えたことも、髪の色が変わってしまったことも」

「いくらなんでも乱暴すぎるだろう、その考えは」


公爵が魔術師長に噛みつくようにいっています。

他の方たちもそれぞれ議論を交わしていますが、だんだん収集がつかなくなってきました。


パン パン


王妃様が手を打ち鳴らしました。

皆様水を打ったようにシ-ンとなりました。


「とにかくこれで意見は出尽くしたようね。これ以上話しても推論の域はでませんわ」


皆様頷いています。


「それではこの話はここまでにしましょう。皆様は政務にお戻りください」

「だがな、王妃よ。このままにするわけにはいかんのだろうが」

「陛下。私の話を聞いていまして。今は、終わりにしましょうといいましたのよ。このまま不毛な話し合いをしていてもしかたがないでしょう」


国王陛下はうなだれてしまいました。


「午後は私がセリアテスの様子を見てきますわ」


にっこりと微笑む王妃様に何も言えるわけがありません。あとはお任せすることになりました。


午後王妃様はフォングラム公爵令嬢のもとに行かれました。

2人の王女様も一緒に連れて・・・。



33話です。


医師話の核心部分です。

パウル君はよく見ていました。


では、次話で。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ