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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第3章 魔法と領地ともろもろと
339/444

23-4 禁忌の魔法?

執事長が言われたことに驚きましたが、思い当たることもありました。神殿へ行った翌朝、私は疲れはそれほど感じずに、逆に気力の充実を感じたのを覚えています。これはやはり、女神様の加護のおかげなのでしょう。そう考えれば納得です。


「でも執事長、女神様の加護ってそれだけなのかな」

「それは私にはわかりません。ですが、セリアテス様のお体にご負担がない事は、とても喜ばしいことです。それにこの加護は一時的なものかもしれません」

「それは、どうしてそう思ったの」


執事長の言葉にミルフォードお兄様が鋭く聞き返しました。


「それはこの世の理に反する行為となってしまうからです。そうですね、ついでにもう一つお話いたしましょうか。セリアテス様、それとソニック様。この世界で禁忌とされる魔法があるのですが、それが何かお分かりになりますか?」


私はソニック君と顔を見合わせました。これはゲームの知識から、導き出せということでしょうか。


「えーと、星を滅ぼすほどの究極魔法とか?」

「ソニック様、ご安心ください。そのような魔法はございません。大体そこまでの魔法を使うには、どれだけの魔力を使うと思うのですか。複数人で唱えたとしても、全員が命を懸けても、成功する確率は1パーセントにも満たないと思いますよ」


究極魔法はないという言葉に安心しましたが、思い当たるものが出てきません。わからない時には早々に降参するに限ります。


「執事長、わからないです」

「ロールプレイングゲームではよくあるものなのですけどね」


と、ヒントをいただいたので、考えてみます。


「星を滅ぼす魔法がないのなら、大陸を壊すような魔法もないのかな。でも、禁忌とされるのだから、回復魔法ではないわよね。・・・あれ? 回復魔法ではなくて、もしかして、蘇生魔法とか」


考えながら、思いついた言葉をつぶやきながら、執事長のことを見つめていました。顔色を窺うようなやりかたですが、回復魔法と口にした途端に、執事長の口元が動きました。なので、蘇生魔法と言ってみたのです。その事実に私はまた目を見開きました。


「えっ? ちょっ! 嘘だろ。蘇生魔法が無いなんて。魔法って万能じゃないのかよ」


ソニック君も驚きのあまり、また椅子の上に立ち上がっています。その彼に座るにように促してから、執事長は口を開きました。


「お二人とも、まずはこれを言っておきますね。この世界はゲームの世界ではありません。それから魔法は万能でもございません。魔力が有限であるように、出来ないことはたくさんあるのです」


一度言葉を切った執事長は移動をして、隅に置いてあるお茶セットを手に取りました。しばらくすると、いい香りがしてきて、私達の前にお茶が入ったカップが置かれました。執事長もカップを自分の前に持ってきました。


「セリアテス様、失礼ではございますが、一口飲んでもよろしいでしょうか」

「はい、もちろんです」

「ありがとうございます」


そういえば思ったよりも長い話し合いになっています。私も少し喉が渇いていたので、カップに口をつけました。執事長もふた口ほど飲んで喉を湿らせてから、続きを話してくださいました。


「先ほど、禁忌の魔法と言いましたが、実は蘇生魔法は実現不可能な魔法なのです。人の死というものは定められたものです。それを覆すことは、女神様でもできません。これと同じことなのですが、病気に魔法は効きません」

「病気にも魔法は効かないのですか」

「ええ。実例を上げれば、セリアテス様の高熱のことですね。覚えていらっしゃると思いますが、熱を下げるためには薬湯を飲まれていたでしょう。あとは、額に冷やした布をのせるとか。それくらいしか対処できないのです」


納得です。確かにそうでした。でも、熱にうなされる私の横で、呪文のようなものが聞こえた気がしました。今の執事長の言葉から推測しますと、額を冷やすための冷たい水を用意すための、呪文だったとわかります。


「あのさ、本当に病気には効かないのか? 何かやりようってないのか」


ソニック君が納得できないのか、執事長に聞いています。


「そうですね、では、この話を致しましょうか。ですがその前に確認ですが、ソニック様の前世は医療従事者でしたか」

「いや。普通のサラリーマンだった」

「そうですか、では、専門的な知識はないということでよろしいですね。私も聞いた話なのですけど、いいですか」


私達が頷いたのを見てから、執事長は口を開きました。


「今までに記憶持ちの方で、以前に医者をなさっていた方がいたそうです。その方はこの世界でも医者になり、その知識を使って魔法で治療を出来ないかと研究をなさっていました。そして、その方は体の悪い部分が分かる魔法を、身につけました。ですが、そのせいで悲劇が起こりました。向こうの世界の知識を使って治療をした結果、大事な方を亡くされてしまったのです。その方は前世では外科医師だったのです。悪いところが判ったら、切り取ることが当たり前と考えたようでした。なので、悪い部分を体の外に出すことにしました。体を切るようなことはせずに、体の中の悪い部分だけを魔法で切り取り、切り取った部分には回復魔法を掛けたそうです。これは一ヶ所ならいいのですが、体中に見つかった人に同じようにしたことがまずかったのでした。悪い部分を切り取った人は、体重が半分ぐらいになりそのまま起き上がれなくなり、数日後に亡くなってしまったと聞いております」



338話。

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