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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第3章 魔法と領地ともろもろと
337/444

23-2 魔法の基本になるものを・・・

執事長が言い出した、ゲームの知識を使って魔法の基本を決めるということがよく分からなくて、首を傾げた私に、コモナー執事長はわかりやすく説明してくれました。


「セリアテス様もご存じのとおりに、もともとこの世界では魔法を使えるかどうかを、球状になったものに炎や水を閉じ込めるようにしていました。ですが、これは複合魔法です。先日セリアテス様がおっしゃられたように、爪の先にでも炎を出した方がよっぽど楽ですし、魔力もほとんど使いません。そうですね、それを踏まえまして、炎の魔法も大きさで使用する魔力やレベルを設定してしまうというのはどうでしょうか」

「おっ! それ、いいじゃん。最初は爪の先に出るくらいにして、だんだん大きさを指定していくようにすれば、レベルが分かりやすいじゃん」


ソニック君が椅子の上に立ち上がり、机に手をついて身を乗り出すようにしながら言いました。私はそれを見ながら、彼女からの記憶を思い出すようにしました。確かロールプレイングゲームで、魔法はレベルが上がると覚えられることと、そのキャラや職種で覚えられるものが決まっているものを、彼女もプレイしたことがあったはずです。それに魔法はレベルが上がると名前が変化していったはずです。


「えーと、それでは、魔法はレベルが上がると、名前が変わるのですよね」

「セリアテス様、それはしなくてもよろしいかと思います」

「俺も、賛成! 下手に名前を変えるより、炎の魔法レベル1、レベル2とした方がいいと思うぜ」


執事長とソニック君に駄目出しをされてしましました。そうしたらソニック君の隣にいたフィリナが、ポカリとソニック君の頭を叩いたのです。


「こら、ソニック。セリアテス様になんて口の利き方をしているのよ」

「仕方ないだろ、姉ちゃん。前世の話になると、引きずられてこんな口調になっちゃうんだよ」

「ね、姉ちゃん?」


ソニック君の言葉にフィリナは目を白黒させていました。


「まあまあ、フィリナ様。今はソニック様の口調は置いておきましょう。それよりもミルフォード様はどう思われますか」

「どうって、どのことかな? 僕にはわからないことばかりなんだけど。そうだね、まずはレベルについて教えて欲しいかな」


お兄様に言われて、ゲームの言葉を普通に考えていることに気づかされました。執事長も「失念していました」と呟かれています。


「申し訳ございません、ミルフォード様。レベルというのは、そうですね、『段階』と言えばお分かりいただけるでしょうか」

「段階? それは・・・そうだね、さっきから炎の魔法を例に出していたから、炎にしようか。大きさの指定と言ったから、例えば爪の先くらいの1センチほどの炎がレベル1で、それより大きい炎にするにつれて、レベル2、3と上がっていくのかな。ああ、これなら名前を変えないで炎レベル5とかにしてもらった方がいいかもしれないね」


お兄様の言葉に執事長はにっこりと笑いました。


「さすがミルフォード様でございます。正しくその通りでございますとも。フィリナ様はどうですか。レベルが上がると数字が変わるのと、名前が変わるのと、どちらがよろしいでしょうか」

「私も数字が変わる方がわかりやすいです」


フィリナもコクコクと頷きながら答えました。そう言われて、私は反省しました。それと一つ気がつきました。彼女のゲームの知識どおりにする必要はないということに。


「どうですか、セリアテス様」

「はい。コモナー執事長、ありがとうございます。その方法を提案してみようと思います。ソニック君もありがとう」


笑顔でお礼を言ったら、ソニック君は盛大に顔をしかめて私のことを見てきました。


「セリアテス様、それ。君付けは無しにしてくれよ。ギルベルト様やアマリア様に睨まれるのは、やなんだけど」

「えーと、でも、二人のことも君とさん付けで呼ぶことになりましたよ」


軽く首を傾げて言いましたら、ソニック君に叫ばれてしまいました。


「いや、だからさ、姉ちゃんとおんなじに呼び捨てにするって言ったじゃんか」

「クスクス。確かにセリアは言ったよね。でもね、仕方がないんだよ、ソニック。結局セリアは侍女たちのことも、さん付けに戻ってしまったからね。呼び捨てにすることが、難しいみたいなんだ」


ミルフォードお兄様が、クスクス笑いながら言いました。気づかれていないと思っていたので、驚きに不自然に動きを止めてしまいました。


「でも、それならそれでいいんじゃないかと、僕は思うよ」

「いいのですか、お兄様」

「ああ。一応差別化は出来ているからね」

「差別化?」


お兄様の言葉に目を丸くしました。私はそのようなつもりはなかったのですけど。そうしたらお兄様が微笑んで教えてくれました。


「セリアの中で近しい立場の者には、様付けをしないじゃないか。うちに使える者たちはセリアより年が上の人ばかりだから、呼び捨てにしにくいのだろう。だから、役職がなければ『さん』を付けて呼んでいるよね。クラーラたちに『お姉様、お兄様』をつけて呼ぶのも、親しさの表れだし。ローザ王女殿下に敬称をつけずに呼ぶのも、親しさからだよね。ビアンカとフィリナ嬢のことを呼び捨てにするのも、友として認めているからだろう。だから、ギルベルトとアマリアも『様』ではなくて親しく呼んで欲しかったんだよ」



336話。

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