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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第2章 女神様の愛し子になってから
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22-6 親衛隊についての話し合い

マイン様のうらやましい発言で、挨拶がグダグダになりましたが、皆様ともちゃんと挨拶を済ませました。そして皆様と席に着き、その視線はテーブルの上の本に向けられました。


「クラーラ様とセリアを待っていたのよ。だから、まだ内容を見ていないわ」


ローザ様が私たちに説明をしてくれました。クラーラお姉様が1冊を手に取り言いました。


「思っていたよりもたくさんの本があるのね」

「本当ですね。あれ? もしかしてクラリス様、このしおりが挟んであるところが、親衛隊について書かれている部分でしょうか」


私も並べられた本の中から1冊を手に取ったのですが、その本には細く切った紙が挟んであったのです。もちろん、クラーラお姉様が持っている本にも紙が挟んであるようでしたし、まだテーブルに並んでいる本にも紙が挟んであるのが見えています。


クラリスを見ると寝不足なのか、少しやつれて見えます。昨日フォングラム公爵家(うち)から帰ってから、親衛隊のことが書かれた部分を探し出してくれたのでしょう。


「は、はい、そうでございます。あ、あと、こちらに簡単にですが、親衛隊が行っていたことをまとめて参りました」


おずおずと紙を差し出してきました。それを侍女が受け取って私に渡してくれました。・・・えーと、自国の王女や隣国の王女よりも、女神様の愛し子(わたし)なんですね。


その紙にはかなり詳細に親衛隊について書かれていました。親衛隊が慕う方にどのようなことを行ったとか、規律・・・ですかね? 親衛隊内での決まり事を、抜き出してくれてありました。探すだけでも大変だったでしょうに、ここまで書き出したのなら、昨夜は寝ていないではないでしょうか。


「クラリス様、昨夜はあまり寝ていないのではないですか。ここまでまとめるのは、大変だったでしょう」

「あっ、いえ、その・・・私だけではなくて・・・お母様や・・・家の者たちが手伝ってくれました」


顔を真っ赤にしてクラリスは言いました。それから、慌てて付け加えるように急いで言ったのです。


「ですので、セリアテス様にお気づかいいただくことのほどはありません。あっ。えっと・・・私が一人でなしたことではありませんから」


私は紙にもう一度視線を落としました。書かれている文字は、流麗な文字とは言い難いものです。きっとクラリスが自分で書いてくれたのでしょう。


昨日のデルフォート伯爵家の様子が目に浮かぶようです。館に戻り、服を着替えるのもそこそこに、本を取り出すクラリス。真剣な顔で目的のページを探しのでしょう。そこに夫人が現れて、娘の様子に驚いて。そこから、何をしようとしているのか聞いて、自分も本を手に持った。初めて読むから時間はかかるだろうけど、それでも娘に協力しようとする夫人。


家の者というのだから、使用人たちのことよね。それとも伯爵も同じように本を手に取ったのかしら。何人もの人たちが本を読んで該当部分を見つけて・・・。そのままだとわからなくなるからと、紙を細く切って挟むことを思いついたのね。


そして、誰かが該当部分を抜き出したらどうかと言い出した。いえ、クラリス自身が気がついたのかもしれないけど。それをクラリスが書き出した? ううん。もっと年が上の誰かがまとめたものを、朝になってから、クラリスが書き写してきた。


ああ、違うわ。こんなことを考えている時じゃないわ。そうよ、大事なのは、クラリスがすべてを自分の手柄ではないと言ったことよ。日記の感じだと、自惚れが強くて使用人がしたことでも、自分がしたこと(・・・・・・・)だと主張するような子だったと思う。それをちゃんと手伝ってもらったと言った。


「そう、ですか。クラリス様は家の方たちに、大切に思われているのですね」


微笑んでそう言いましたら、クラリスは目を見開いた後、口元に手を当てて目を潤ませてしまいました。その様子を令嬢方は若干羨ましそうに見つめていました。


「コホン。えーと、いいかしら。セリアテス、まずはそれを私にも見せて頂戴」

「あっ、ごめんなさい。クラーラお姉様、どうぞ」


私は我に返って、お姉様に紙を渡しました。お姉様は紙を受け取ると、真剣に内容を読み込んでから、ローザ様に渡しました。ローザ様は読み終わると、マイン様へ。それからビアンカ、他の令嬢たちへと紙は渡っていきました。


皆様が読み終わり、紙は私の手元へと戻ってきました。


「デルフォート伯爵令嬢、まずはお礼を言わせてもらうわ。これだけでも親衛隊というものがどういうものか、とてもよく解りましたわ」

「過分なお言葉をありがとうございます、クラーラ姫様」


お姉様の賛辞にクラリスは軽く頭を下げた。その様子にお姉様はにっこりと笑いました。


「でも、やはりこれだけでは理解しきれないということも、皆様もわかるわよね。それで、皆様にはこの本を家で読んで、デルフォート伯爵令嬢が書き出してくれたものに不足がないか、また新たに加えたほうがいいものを見つけてきてほしいのよ」


お姉様の言葉に皆様は顔を見合わせたのでした。



329話です。


さて、クラーラの意図は何処にあるのでしょうか?

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