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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第2章 女神様の愛し子になってから
327/444

22-3 領地に行くのは駄目ですか?

私は一歩前に出ました。


「あの皆様、私がお父様に領地に行きたいとお願いをしたのです。お父様が私のわがままを聞いてくださっただけなのです。警護のことなどに思い至らずに、勝手なことを言ってしまい申し訳ありませんでした」


私は言い終えると同時に頭を下げました。そうしたら皆様はもっと慌てだしました。お父様たちに対するよりも必死に謝罪をしてきました。うん。女神様の御威光はすごいですね。


「セリアテス様のご希望とは知らずに失礼を致しました」


宰相様が皆様のことを取り成すように、私に話しかけてきました。


「いいえ。あの、皆様にも私のことでご苦労をかけていますのに、お父様だけをお休みさせるように領地へ行きたいと言ってしまって、ごめんなさい」

「そのようなことはございませんよ、セリアテス様。私も領地へは年に一度は参ります」

「宰相様もですか」

「はい。国王陛下も王家の直轄領に参ることもございますから、フォングラム公爵が領地に参ることはおかしいことではございませんよ」


この時、意味ありげに宰相様がおじい様のことを見ました。私も宰相様の視線を追っておじい様の顔を見ましたら、おじい様はピクリと眉を動かしていました。


「それにしてもセリアテス様はお優しいですな。多忙を極めたフォングラム公爵のために、領地での療養をお願いされたのですな」

「えーと、それだけというわけではないのです」

「他にも理由があるとおっしゃいますか」


宰相様は腰を落として私と目を合わせるようにして聞いてきました。


「もし、なのですけど、領地に行くことで忘れてしまった記憶が思いだせるかもしれないと、考えました」

「そうですか」


宰相様はやさしく慈愛のこもった眼で、私のことを見ています。私のことを案じてくださっていることがわかります。


「それに紅茶のこともあります。「セリア、それは」私が伝えたやり方で紅茶がちゃんとできているのか見てきたいのです」


私が話す途中でお父様が焦ったような声を出しました。でも、私は宰相様のことを見つめて話していたので、そのまま話してしまったの。言い終わって顔をあげると、一瞬眉間にしわを寄せたお父様の顔が見えました。すぐに無表情に変わりましたけど、不快感を醸し出しています。


あれ? もしかして話してはいけないことだったのでしょうか。そういえばやり方を試すとか言っていましたね。もしかしたら、先にうちの領地で試して、ちゃんとしたやり方が確立されてから広めるつもりだったのでしょう。


「フォングラム公爵、セリアテス様がおっしゃられたのは、そなたの領地で最近発見されたという、あのお茶のことか。偶然見つかったとか言っていたな。まだ試行錯誤の段階なので、味にばらつきがあると言っていたあのお茶。その製法をセリアテス様が伝えたというのか? まさか製法を秘匿するつもりだったのか」


国王陛下がお父様に訊ねています。お父様は答えずに冷ややかな視線を陛下に向けています。私は余計なことを言ってしまったと思いました。


「あの、国王陛下、違うのです。私が伝えた方法が有効かどうかを、領地にて試しているのです。まだちゃんとできるかどうかわからないから、ご報告をしなかっただけなのです。秘匿するつもりはありません」


私があまりにも必死に言ったからなのか、皆様は目を見かわし合った後、陛下へと視線を向けました。陛下は苦笑を浮かべて私のそばへときて、ひょいっと私のことを抱き上げてしまいました。目線の位置が同じになりました。


「セリアテス・・・様」


陛下は私に話しかけようとして、敬称をつけそびれたという感じに口ごもりました。


「陛下、出来れば今までのように敬称をつけずにお呼びください」

「そういうわけにいかないのだが・・・セリアテス様はそれを望むのか」

「はい。公の場でなければ今までどおりでお願いしたいです。駄目ですか」


間近で陛下と見つめ合います。陛下がフッと笑いました。


「そうか。では、セリアテス様、私の言い方が悪かった。フォングラム公爵がわざと秘匿するわけはないとわかっていたのだが、つい疑ってしまったのだ。紅茶と申したあれのもとになる木は、国中いたるところにある。蜘蛛共の嗜好が変わってから、無用の長物と化しておったのだ。それが有効活用できるのであれば、我が国の特産物と出来るかもしれないと思ったのだ」

「えーと、陛下。リングスタット王国には特産品はないのですか」

「ああ。各領ごとに特産と言えるものはあるが、国としてこれと言えるものはない。サンフェリスみたいに花による香料や、ヴァルミンコスの酒のように、これと言えるものはないのだ」


陛下の目をじっと私は見つめました。


「では、もし、紅茶の製法が確立して、これを国中に広めた場合、紅茶がリングスタッドの特産品となるのですか」

「ああ。そのためにはセリアテス様のご許可をいただかなくてはならないがな」

「もちろん許可いたします。それならば、なおさら急いでフォングラムの領地に行かなくてはいけませんね。もし、本当に可能でしたら、緑茶や黒茶も作りたいです。そうですね、国中にお茶の木があるのでしたら、各地方で作るお茶を分けるのもいいかもしれないです」


私は彼女が飲んでいたお茶が、実際に飲めるかもしれない可能性に、目を輝かせたのでした。



326話です。


大人の企みを壊すセリアちゃんです。

さて、この話に関連があるところは 兄話2-3 ですね。

王妃様との密約? で、紅茶の製法が確定されてから世に広めるとなっていました。

うん。秘匿するつもりはなかったですよ。

ただ、広めるまでに利益をね。


では、また、次話で会いましょう。


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