22-2 帰国の挨拶と領地へ行くこと
王宮に着きました。
今日は先に国王陛下、王妃殿下並びに大臣や国の重鎮の方々と、お会いすることになっています。なので案内をされたのは謁見の間です。
そこで、ジークフリート伯父様が帰国する旨を告げました。一瞬ざわりとしましたが、すぐに収まりました。国王陛下がジーク伯父様に帰国の前に、晩餐会を開きたいとおっしゃいましたが、ジーク伯父様は辞退していました。代わりにまた昼食会をすることが決まりました。
それから、お父様がキャバリエ公爵家を送りがてら領地に向かうと言ったら、またざわめきが起きました。すぐに収まったのですが、一家で領地に向かうとお父様が続けて言いましたら、今度はざわめきはすぐに収まりませんでした。それどころか、領地に行くことを反対する方たちが出てきました。その方たちにお父様は冷ややかな視線を向けて言いました。
「領地に向かうことはセリアテスの療養のためでもある。王都にいるより自然豊かな領地で過ごす方がいいだろう」
「ですが、セリアテス様は『女神様の愛し子様』であらせられます。『愛し子様』の安全のためにも王都をお出にならない方がよろしいと思います」
「では何か。セリアテスは王都より出ることは適わずというのか。そなたらはセリアテスを王都に閉じ込めておくつもりか」
「そのようなことは滅相もございません。ただ、セリアテス様のための聖騎士はまだ揃っておりません。セリアテス様のご安全のためにも、もうしばらくお待ちいただきたいのです」
お父様は不機嫌にじろりと発言した者のことを見ました。
「ほう。それは我がフォングラム公爵家の騎士だけでは、セリアテスを守り切れぬと言いたいのか」
「め、滅相もございません。ですが王都ではなく領地の方が、間者も入りやすく」
「バカを申すな。我が領地の方が間者が入りやすいじゃと。わしらを馬鹿にするのもいい加減にせんか」
おじい様まで思いっきり不機嫌そうに参戦をなさいました。それを見ておばあ様が薄く笑いました。お母様は少し困ったようにお父様を見ています。お兄様もお父様、おじい様と同じ気持ちのようです。ジーク伯父様たちもおじい様たちに同調している感じです。
困りました。元はと言えば、私が領地に行きたいと言ったからです。理由ですが、お父様が私のせいでお仕事が忙しくなり、それがやっとひと段落つきそうだといわれたので、それなら休養を兼ねて領地に行きたいと思ったのです。
それに昨夜寝る前に思いだしたのですが、紅茶のこともあります。紅茶の製造の仕方を簡単には伝えましたが、それがどうなったのかも気になっています。出来れば皆様にも美味しいお茶を飲んでほしいです。
「そういうことでしたら、私がセリアテス並びにフォングラム公爵家の警護をいたしましょう」
「誰だ! セリアテス様のお名前を呼び捨てにするのは」
謁見の間に声が響きました。見ると王宮の入り口で別れたアーマド叔父様です。謁見の間の入口からこちらに向かって歩いてきます。私のことを呼び捨てにしたことを怒って大臣が怒鳴りましたが、アーマド叔父様の姿を見てすぐに口を閉ざしました。気まずそうな顔をして、一歩後ろに下がるのを見てしまいました。アーマド叔父様はそんなことは関係ないとばかりに、私達の隣まで歩いてきました。
「女神様にも直々に指名をされていることだしな」
胸を張って不遜といえるような視線を、騎士団長に向けて言い放ちました。騎士団長は何も言いません。いえ、他の方たちも何も言えないようです。
その時、宰相様が動くのが見えました。
「フォングラム公爵家の方々。この者どもの発言をお許しください。『女神様の愛し子様』を思うあまりの発言でございますれば」
「レグルス宰相、許せるわけがなかろう。我々を愚弄するのも大概にしてもらおうか」
お父様が威嚇をするように、宰相様に話しています。えーと、なんでしょう。お父様は前から王宮の方々に対して、思うところでもあるのでしょうか?
なんか、だんだん不穏な雰囲気になっていきます。私が口出しをしていいかどうか、迷っている間に話は進み、フォングラム公爵家だけでなく何故かアーマド叔父様までも職を辞して、サンフェリス国に行くという話になっているのですけど。
「フォングラム公爵。謝罪致します。どうか、そのようなことをおっしゃらないでください」
「どうかお願いいたします」
大臣方が必死に頼んでいます。
「お兄様」
「大丈夫だよ、セリア。父上たちも本気でこの国から離れる気はないからね。見ていればいいよ」
不安になり隣にいるお兄様に小声で話しかけましたら、そう返事がきました。でも、でもね、お兄様。さっきからお父様たちが悪役に見えて仕方がないの。だから、いいかな。強権を発動しても。
私は一度深呼吸をすると、声を出しました。
「あの、皆様、私の話を聞いてください」
『セリアテス様』
皆様の視線が私に集中しました。お父様たちも黙ってしまわれました。皆様の視線が集中して怯みそうになってしまいました。
その時そっと背中に手が当てられました。
「セリア、セリアが思う通りにしていいんだよ」
苦笑交じりの優しいお兄様の声に、勇気をもらいました。
325話です。
あれ?
悪役ってどういう人たちのことを言いましたっけ?
という回でした。
まだまだのんびり(?)進みますので、お付き合いのほどをよろしくお願いいたします。




