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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第2章 女神様の愛し子になってから
325/444

22-1 雨の日の朝

11月12日の朝です。今朝は最近では珍しく朝から雨が降っています。そういえば私が今の私になってから、あまり雨が降っていませんね。今日で4回目でしょうか。


最近の目覚めの時間は6時頃です。今朝もその時間に起きましたけど、雨なので屋敷の外を走るわけにはいきません。ですから、今日は玄関ホールで軽くストレッチをしてから、屋敷の中を早足で歩きます。フォングラム公爵家の屋敷は広いです。端から端まで歩いて、それから階段の上り下りを3回繰り返しました。これは意外と大変です。


ちなみに服装なのですが、何故か、参加した皆様は準正装をさせられました。えーと、おばあ様の発案です。高位貴族たるもの、緊急時でも優雅さを失わないように・・・だったでしょうか?


アマリアさんとギルベルト君も、涙目で階段の上り下りをしていました。


あっ、そうです。昨日はルートーガー公爵家とアルンスト侯爵家とオットマー先生も、お泊りになられました。もうすぐキャバリエ公爵家の皆様がサンフェリス国に帰ってしまうということが、アマリアさんとギルベルト君にショックだったようです。


それから、アマリアさんとギルベルト君のことを様つけで呼んでいたら、拒否られました。親戚なのと年下だから呼び捨てで構わないと言われたのですが、それはどうかと思いましたので、さん、君をつけて呼ぶことにしたのです。えーと、そこでなんで二人とも、ソニック君のことを見たのでしょうか?


昨日の夕食はスクワーレ伯爵家は一緒に食べませんでした。今日の朝食は一緒に食べました。今朝も安定のくじ引きで席を決めたのですよ。それで、私の左隣がソニック君で、右隣がアマリアさんでした。この時に『ソニック君』と呼びかけたのが、二人のお気に召さなかったのでしょうか?


う~ん、わかりませ~ん。


そうそう、今朝のみんなの一番の関心は生後4か月のユレイナちゃんです。ユレイナちゃんは大人数に囲まれて不思議そうにみんなのことを見つめていました。構われていることがわかっているのか、キャッキャッと機嫌よく声をあげるユレイナちゃんは本当にかわいいです。


来年の3月にはウルリーケ叔母様が3人目のお子様を出産なされます。そうしたらいとこがもう一人増えることになるのです。私も今から待ち遠しいです。


今日はお兄様とシュレイン様も王宮に行く日です。朝食が済んだら、みんなで着替えをしてお出かけの準備です。ソフィティア叔母様とアマリアちゃん、ウルリーケ叔母様とギルベルト君は、それぞれの屋敷に戻られます。スクワーレ伯爵家も、マリーナ夫人とソニック君、ユレイナちゃんは屋敷に残ります。


それで、何故かおばあ様まで王宮に行くことになっているのです。キャバリエ公爵家は帰国のことを告げに行くので、全員で行くのはわかります。お母様も私の付添いなので、一緒に行くのもわかります。でも、おばあ様が行くのに理由がないと思ったのです。


「あらあら、セリアテス。私達も領地に行くのでしょう。そのまま私は領地に残るつもりなのよ。それならば王妃様にご挨拶するのはおかしくないでしょう」

「おばあ様は領地に行ったら、もう王都に戻るおつもりはないのですか」


おばあ様の言葉にショックを受けました。おばあ様はずっと私のそばにいてくれると思っていたのです。そんな私の顔を見て、おばあ様は困ったように笑いました。


「そんな顔をしないで、セリアテス。もう家督はセルジアスに譲っているのよ。いつまでも引退した私達がそばにいることは、あまりよろしくないのよ」

「でも、まだあまりお話をしていませんもの。それに離れてしまうのは・・・寂しいです」


俯いてそう言ったら、おばあ様に抱きしめられました。


「なんてかわいい事を言ってくれるのかしら。もちろん私もセリアテスと離れるのは寂しいわ。そうね、もう一度考えてみることにするわね」

「ほんとう? おばあ様」

「ええ!」


私はおばあ様の返事に満面の笑顔を浮かべました。


「セリアテス、わしは? わしと離れるのも寂しいかの?」

「もちろんです、おじい様。おばあ様よりもおじい様とお話が出来ていませんから」

「そうか、そうか。セリアテスは本当にいい子じゃのう~」


おじい様がそばに来て、私をひょいっと抱き上げてくれました。おじい様は60歳と思えないくらい体が頑健です。・・・いえ、頑健みたいです。やはり体を鍛えているからなのでしょうか。


「おじい様、大好きよ」


おじい様の首に腕を回して抱きついて、頬に軽くキスをしました。その様子を見ていたお父様がそばに来て、おじい様から私を奪うようにして、抱き上げてくれました。


「セリアテス、祖父より父の方が好きだろう」


などと、真剣に聞いてきます。その様子がおかしくて、私はクスクスと笑いながらお父様の首にも抱きつきました。


「もちろんです、お父様。大好きですわ。私はお父様とお母様の娘に生まれてよかったと思っています」

「セリア」


お父様のそばに来た、お母様の方を向いてそう言いましたら、お母様が涙ぐんでいました。最近のお母様はちょっとしたことで涙ぐんでいる気がします。


いえ、それだけ私が心配をかけたということですよね。


少し反省をしながらも、他の皆様にこの様子を見られていることに、恥ずかしさを感じていたのでした。



324話。

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