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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第2章 女神様の愛し子になってから
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祖父話2-2 孫と取り巻きの話し合いの裏で その2

クラーラとローザ王女がものすごい剣幕で、セリアテスに迫っていた。セリアテスは困ったように微笑みながら、今回は無茶はしていないと言った。そして令嬢たちの安否を確認するために使った方法は、ヴィクトールから教わった魔力の巡りの応用だと言っておった。


その言葉を聞いたクラーラたちの顔色が悪い。先ほどセリアテスの魔力が大幅に減っていないことに安心したわしも、もしもの事態が想定出来て顔色を悪くしていることだろう。


流石にここに集まっているものはうちの係累だけはある。最悪の物事が起こっていた場合の事態が想定出来たようで、娘たちの失態を聞いた時よりも顔色を悪くしている。


そこに今度はミルフォードたちが飛び込むようにサロンに現れた。ミルフォードが懇々と諭すように、セリアテスに話している。ミルフォードの言葉でやっと自分がどれだけ無謀なことをしようとしていたのかがわかったようだ。セリアテスはシュンと項垂れてしまった。


この時何かに気がついたようにリッパート侯爵令嬢がセリアテスに訊ね、セリアテスはそれに是と答えた。


そこまで見たところで、ヴィクトールが立ち上がり部屋を出て行った。それにハッとして、すぐにミリアリアも立ち上がり後を追うように出て行く。セルジアスも後を追い、一瞬顔を見合わせた客たちも慌てて立ち上がり、息子たちを追いかけるように出て行った。最後にわしとセレネ、カテリアとジークフリートが居間をあとにした。


「お父様、先ほどセリアテスが言っていたことを、どうお考えになりますか」


カテリアがわしら以外に声が聞こえないように、魔法で話しかけてきた。


「そうだのう、やり方としてはなんとなくわかるが、何を目印にしたのかがわからんな」

「魔力の型と言っておりましたわよ」

「それがよくわからんのだ。確かに各個人で魔力の性質が違うように思う。だが、そこまでの区別がセリアテスにできていたというのが、信じられんのじゃ」

「そうかもしれませんが、セリアテスには別の区別の仕方があるのかもしれませんわね」


カテリアの言葉にフムと考えこんだら、セレネが話に加わってきた。


「二人が話してもしようがないでしょう。きっとヴィクトールが解決策を見つけてくれるはずだわ」

「そうかもしれんな。それにしても、改めて思い知らされるものだ。この世界はいびつに歪んでいるのだと」

「リチャード様、それはここで話さないほうがよろしいのでは。結界を張ってもどこで聞かれているのか、わかりませんから」


ジークフリートの言葉にわしは笑った。


「確かにの。だがわしらの話を盗み聞きさせると思うか」

「いえ。失礼しました」


軽く頭を下げるジークのことをわしは違う笑みを浮かべて見遣った。


「それにしてものう、いい加減わしのことを義父(ちち)と呼んでくれんかのう。呼んでもらえんのは寂しいのじゃが」

「あっ、それは・・・その、つい」


焦ったような声でジークはしどろもどろに答えてきた。わしはとっくにジークのことを息子だと思っているのだが、ジークはベルンハルトから聞いた話のせいで、わしに対していま一歩近づいて来れないようじゃ。


「リチャード、無理に強要しては駄目よ。それよりも次からはこちらの方が(へりくだ)らないとならないのよ。そこはわかっているのよね」


セレネが苦言を言ってきたが、ここでわしらもサロンについてしまった。中に入るとヴィクトールがセリアテスの状態を確認しているところだった。ヴィクトールの見立てに大人たちに安堵の雰囲気が流れた。こやつらも本当に肝が冷えたことじゃろう。


カテリアがセリアテスを諭す態で、取り巻き共の家に脅しをかけていた。さすがに当主や男共は意味を理解しているからか、セリアテスの友人を辞退したいと言い出した。それを夫人たちが納得が出来ないと文句を言い、それぞれ言い争いをはじめてしまった。


わしは面白く眺めていたのだが、息子の機嫌が悪くなってきた。ミリアリアが先ほど取り乱して、セリアテスを抱きしめて泣いたことが関係をしているのだろう。そういえば、最近のミリアリアは少しのことで感情を表に出すようになってきた。前は高位貴族らしく公の場では顔色一つ変えずにいたものじゃ。セルジアスとの仲もあまりいいようには見えなかったから、心配はしておったのだ。


それがセリアテスの怪我以降、二人の仲も改善されただけでなく、家族仲も良くなったようじゃ。


おっと、いかん。余計なことを考えている間に、セルジアスの機嫌がもっと悪くなりおった。セリアテスもオロオロしだしておるし、仲裁してやるかのう。


そう思ったのに、わしらが口を開く前に言葉を発した者がいた。蒼白な顔でセルジアスのことを見つめて、はっきりと言い切ったのじゃ。


デルフォート伯爵令嬢の言葉にわしらは、別の意味で考えさせられることとなったのだった。



319話です。


じい様に話させると、裏事情を暴露してくれるよな~。

まあ、じい様仕様ということで。

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