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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第2章 女神様の愛し子になってから
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祖父話2-1 孫と取り巻きの話し合いの裏で その1

計画通りにセリアテスの取り巻きの令嬢とその保護者たちがやってきた。挨拶を済ませると令嬢たちはセリアテスが待つサロンへと案内をされて行った。


残された大人たちは居心地を悪そうにしている。それはそうだろう。この部屋にはフォングラム公爵の大人が揃っているのだから。


きっとこやつらは今日会えるのはミリアリアとセレネだけ、くらいに思っていたのだろう。それなのに、現当主であるセルジアス、それにわしまでおるのだから、居心地がいいわけないだろう。


ああ、それからサンフェリス国の王太子であるジークフリートと、その妻でありわしらの娘のカテリアもおるし、ついでに今日は非番の魔術師長のヴィクトールまで居たのであっては、委縮してもしかたが無かろうのう。


そんなことを考えていたら、セレネにわき腹をひじ打ちされた。こりゃ。地味に痛いではないか。

軽くセレネを睨んだら、セレネに睨み返された。へいへい、わしが悪かったよ。


わしが真面目な気持ちになるのを待っていたかのように、息子が口を開いた。


「本日はわざわざのご足労をありがとうございます」


じゃが、この言葉を一言いっただけで、他に何も言おうとしなかった。しばらく客たちは待ったが、息子が続きの言葉を言う気配がないとわかると、代表をするようにイェネヴァイン侯爵が口を開いた。


「フォングラム公爵、今日我らがこちらに来たのは、そちらから話があるということだったと思うのだが。それなのに挨拶だけで話をしようともしないのは、いかがなつもりか」


息子はイェネヴァイン侯爵に視線を向けると、皮肉気な眼差しで彼のことを見つめた。


「ええ、お呼びしたのは我が家です。ですが、話があると言ったのは娘のセリアテスであって、私ではありません。ですから私からは話はありませんね」


あまりな言いように、客たちは声を出せずにいる。その様子を一瞥してから、息子はもう一度口を開いた。


「そういうことですから、私達はセリアテスと令嬢方の会話を見守ることにいたしましょう」


息子の言葉と共にヴィクトールが動き、魔道具を動かした。セリアテスが言っていた映写機なるものが、スクリーンと呼んだ白い布にセリアテスたちを映し出した。この魔道具も名前を変更しなくてはならんのう。


セリアテスと令嬢たちの会話を声もなく見守る令嬢の親たち。途中から暑い時期ではないのに、額に汗を浮かべだす者もいた。夫人たちも顔色を悪くしている。まさか自分の娘たちがセリアテスを軽んじたり蔑ろにするような行動を取っていたとは思わなかったようだ。父親たちは母親である夫人のことを、何かを言いたげに見つめている。きっとこやつらはここでなければ言い合いをはじめていることだろう。


呑気にセリアテスの取り巻きの親たちの様子を見ていたわしらは、このあとセリアテスの言葉にそれまでの余裕をなくして動揺することになった。


セリアテスはカメラと呼んだ魔道具のほうを見てはっきりと告げたのだ。


『いいえ、違いますね。はっきりと言います。昨日、私は皆様が無事に家に帰られるように、意識を向けておりました。そうしたら皆様の馬車を伺う視線を感じました。その視線は皆様が家にお戻りになられてかなり経ってから、皆様の家のそばに現れました。各家の様子を伺う姿に嫌なものを感じました。ご当主様方、これが何を示すかお分かりでよね。今ならまだ間に合います。この後すぐに私が『女神様の愛し子は友人を作らない。これまでの友人もそばに置かない』と宣言すれば、ご令嬢方にこれ以上のことはされないと思います。それでも令嬢方の安全を考えましたら、しばらくは外出を控えることと館の警備の強化をお勧めいたします』


セルジアスは顔色を悪くしてヴィクトールのことを見た。ヴィクトールはそれに大丈夫だというように頷いている。わしも昨夜からのセリアテスの様子を思い出してみた。特別変わった様子は見られなかった。わしらが考えた最悪の状況ではなかったということだろう。


「あなた、セリアは」


ミリアリアが蒼白な顔でセルジアスに、震える声で呼びかけた。セルジアスはミリアリアの肩を抱くと「大丈夫だ」と、言っている。


その様子を客の夫人たちが驚いたような顔で見ていた。彼女たちが知るミリアリアは、隙が無くどこか冷たい雰囲気を漂わせていたのだから。それが動揺して、夫に縋るようなそぶりを見せているのだ。こんな素に近いミリアリアの姿は一度だって見たことはなかったのだろう。


そんな夫人たちと違い、男共の顔色が悪い。特にイェネヴァイン侯爵とライヒェン侯爵の顔色が悪かった。二人は前に御前会議でわしが話したことを思い出したのだろう。まだ『女神様の愛し子』となる前、セリアテスが改良を加えたり作り出した服の数々。あの時に子供を退室させたあとに、セリアテスが魔力暴走を起こし、魔力が枯渇寸前になったことを話しておいた。それを思い出したのなら、彼らの顔色の悪さも納得できるだろう。


わしらが居間で動けずにいる間に、セリアテスとは別室に居たクラーラたちが、サロンへと姿を現したのがスクリーンに映し出されたのだった。



318話。

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