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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第2章 女神様の愛し子になってから
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21-10 取り巻き令嬢たちとの話し合い8

お母様が泣き崩れるのを、他の大人たちは何も言わずに見つめていました。その中からお父様が静かに歩み寄ってきました。そっとお母様の肩を抱いて、お母様を立たせました。そばに来たカテリア伯母さまがお母様に手巾を渡して、微笑みました。


「ミリアリア、大丈夫だからそんなに泣かないのよ。セリアテスは前のようにはならないわ。この子は私達が思っているよりも、しっかりしているもの。もしその子たちに何かが遭って、守らざる得ない事態になったとしても、何か先に手を打っていたはずよ」


伯母さまが信頼した表情で、私のことを見てきました。でも、その瞳は鋭い光をたたえています。さすがおじい様の娘です。


「どうかしら、セリアテス」

「えーと、手を打ったというわけではないのですが、リッパート侯爵令嬢方がビアンカと帰った時に、アロンに浮かない顔をしていると聞かれたのです。なので、帰られた令嬢方のことが心配だと言いました。その会話を聞いていた執事長が『そちらの方はお任せください』と、言ってくださったのです。そうしたら各家の周りに現れた人たちを、その家から離れさせる方々が現れました。なので、私は安心して意識を向けるのをやめたのです」


私の言葉におじい様は何か言いたげに執事長のことを見つめました。執事長は澄ました顔で、皆様から離れたところに立っています。カテリア伯母さまは頷いて笑みを口元に浮かべました。


「そう、やはり考えなしで行動したわけではなかったようね。でもねセリアテス、あなたがしたことは周りに心配をかけただけだと分かったでしょう。最悪の事態が起きた場合、あなたが何故魔力の枯渇寸前まで魔力を使ったのかは、誰にも分らなかったかもしれないの。そこのところをよーく胸に留めておきなさい。あなたが思っている以上に『女神様の愛し子』という立場は、重要なものなのよ」

「はい」


伯母さまの言葉に私は殊勝な顔で返事をしました。そうしたらサロンの入り口の方で声が聞こえてきました。


「リチャード様、フォングラム公爵。この度はこちらの浅慮により、セリアテス様に多大なご迷惑をおかけいたしました。それだけでなく私どもの教育がなっていなかったことに、先ほどまで気づきもしませんでした。我が娘はセリアテス様の友人に相応しくありません。これから(のち)、娘はセリアテス様のおそばに近寄らせないと約束いたします」


その男性、イェネヴァイン侯爵様は厳しい顔でレイチェルのそばに歩み寄ってきます。レイチェルは怯えたように肩をすくませました。


「あなた、何を言うのですの。レイチェルがセリアテス様に相応しくないなんて、あり得ませんわ。今までは少しセリアテス様に行き過ぎた行為をしていたかもしれませんが、まだ幼い子供がしたことですのよ。これからいくらでも挽回できますわ」


イェネヴァイン侯爵夫人が夫である侯爵のそばに行って、引きとめるように言いました。侯爵は夫人に冷たい視線を送りました。


「よくも言えたことだな。大体レイチェルがこのような態度を取ったのも、お前の普段の行いのせいだろう」

「何を言うのです、あなた」

「私がレイチェルの横柄な振る舞いを諫めても、お前が後で諫めた言葉を否定していたのは知っているぞ。そんなことが何度も続いたから、学習したレイチェルは小狡くなったんだろう。お前は母親としても高位貴族としても失格だな」

「まあ~。すべて私が悪いとおっしゃいますの。そもそもあなたの態度が煮え切らないのが悪いのではありませんか。レイチェルは美しく賢い子です。このまま育てば高位貴族夫人として立派に家を切り盛りできるようになりますわ。それをあなたは・・・」


目の前で始まった口論に目を丸くしていると、入り口の方でも言い合いをする男女の姿が目に入ってきました。


「私はお前に失望した。子供の教育一つできないとは思わなかった」

「その言葉はそっくりお返しいたしますわ。というよりも、あなたはミラルテスのことを顧みたことがありまして。いいえ。それよりも私のことでさえ見てくださいませんよね。私が話し掛けても、仕事仕事とばかり」

「それがなんだ。領地のことなど私がしなくて、誰がするというのだ」

「どうなのかしらね。仕事を言い訳に・・・」


ライヒェン侯爵夫妻もお互いに言い合っています。他の皆様もご夫婦で「それぞれどちらの子供の育て方が悪いのか」と、言い争っています。中には夫人に「任せっきりでこういう時にしか口出しをしない」と言われていらっしゃる方もいました。


しばらくは目を丸くして見ていましたが、だんだんとお父様の機嫌が悪くなっていくのが見て取れました。お母様はさすがに皆様の様子に驚いたのか、涙が止まったようです。カテリア伯母さまとオットマー先生は呆れたような視線を皆様に向けていますが、口を挟む気はないようです。おじい様とおばあ様は皆様から一歩離れて面白そうに見ていました。


お父様が拳を握るのが見えたので、お父様が何か言う前に私が、と思った時にか細い声が聞こえてきました。


「わ、私は、セリアテス様の友人を辞めることになっても、セリアテス様のおそばを離れません」


蒼白な顔色で、でも私のお父様の顔をしっかりと見つめて、クラリスが言ったのでした。



314話です。


あともう少しで令嬢方との話は終わります。

あと少しが意外と長いのですけどね。


さあ、もうひと頑張りしますか。

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