表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第2章 女神様の愛し子になってから
313/444

21-8 取り巻き令嬢たちとの話し合い6

皆様は蒼白な顔でフィリナと私のことを見てきます。言いたいことがあるけど、言葉にできない感じですね。


「今のは確かに言い過ぎかもしれませんが、ですが私の身の安全を図るためでしたら、それぐらいのことは警護につく方達はすると思います」

「で、でも、私たち侯爵家の侮辱に当たると」

「侮辱するつもりはありません。先ほどイェネヴァイン侯爵令嬢と、ライヒェン侯爵令嬢がおっしゃったように、私の代わりはいないのです。そうなりますと私の安全を第一に考えた場合、余計な人物を近づけさせないためにも、皆様との交流を断つ方がいいことになります」


言われたことを必死に理解しようとしているのか、皆様は口を引き結び考えているようです。追い打ちではないのですが、もう一つの可能性(こと)についても話しておくことにしましょうか。


「それからもう一つ。もし皆様がこれまでと同じようにと望まれた場合のことですけど」


こう言いましたら、皆様は希望を見出したような顔をなさいました。皆様が考えていることと、私が考えたことはまったく違うのですけどね。


「皆様には自宅にいらっしゃるときも、周囲に警戒をして生活なさることをお勧めいたします」

「はあ~?」


ディリーナがまた大きな声で疑問形の声をあげられました。


「言葉の通りです。皆様の家の警備がどうなっているのかは知りませんが、これからも私の友人であると名乗るのであれば、誘拐される可能性もあるとお考えください」

「えっ?」


またもやこんなことを言われるとは思わなかったと、皆様の顔に書いてあります。


「そ、それこそ我が家に対する侮辱です。家にいて誘拐される可能性があるだなんて。我が家の警備がなっていないような言い方をされるだなんて」


レイチェルが悔しそうに唇を震わせて言いました。私はまた右のほうを見つめました。


「本当に侮辱するつもりはないのですが、皆様の家の警備は隙がございました。あれでは少し騒ぎを起こせば、皆様を攫って行くことは容易だと思われます」

「そ、そんな・・・。いえ、なぜ、セリアテス様がそのようなことをご存知なのですか。いいえ。それよりもなぜ私たちがさらわれるようなことをおっしゃるのですか。おかしいですよね。それとも、それがセリアテス様のご本心ですか。セリアテス様は私たちが嫌いだから、いなくなればいいと思っていらっしゃるのですよね」


レイチェルが涙をためた目で睨むようにしながら言ってきました。この言葉をフィリナは見過ごせなかったようです。私と並ぶように一歩前に出て口を開いたのですから。


「あなたたちは、まだ」

「待って、フィリナ。大丈夫よ」


私は右手をフィリナの左腕にかけて止めました。フィリナは私のほうを見てから「申し訳ございません、セリアテス様」と言って、元の位置に戻りました。

私は皆様の顔を見つめてから、右側を向きました。


「私は皆様に対して特に何かを思ったりしておりません。ですが私と関わりがあるがために、危ない目に遭ってほしくないのです。皆様に誘拐のことを示唆いたしましたのは、皆様を攫うことで私にいうことを効かせられると考えるものが出てくるかもしれないからです」


私は一度言葉を切って溜息をつきました。


「いいえ、違いますね。はっきりと言います。昨日、私は皆様が無事に家に帰られるように、意識を向けておりました。そうしたら皆様の馬車を伺う視線を感じました。その視線は皆様が家にお戻りになられてかなり経ってから、皆様の家のそばに現れました。各家の様子を伺う姿に嫌なものを感じました。ご当主様方、これが何を示すかお分かりでよね。今ならまだ間に合います。この後すぐに私が『女神様の愛し子は友人を作らない。これまでの友人もそばに置かない』と宣言すれば、ご令嬢方にこれ以上のことはされないと思います。それでも令嬢方の安全を考えましたら、しばらくは外出を控えることと館の警備の強化をお勧めいたします」


私の言葉にレイチェルたちはぽかんとした顔で見つめています。


「な、何をおっしゃっていらっしゃるの」


何とか言葉をひねり出したようなミラルテスは、廊下を走ってくる足音に口を噤みました。


バターン


サロンの扉が勢いよく開かれました。


「セリアテス! 聞いてない、聞いてないわよ!」

「そうよ。セリア、自分が何をしたのかわかっているの!」

「なんで、セリアがこんな子たちのために魔法(ちから)を使っているのよ!」

「セリアおねえさま、むりをなさらないでください」


飛び込んできたクラーラお姉様、ビアンカ、ローザ様、マイン様に詰め寄られてしまいました。


「えーと、大丈夫です、けど」

「大丈夫なわけないでしょう!」


私は笑顔を見せて言いましたが、私の腕をつかんだビアンカの手が震えていることに気がつきました。どうやら私が魔力を暴走させた時のことを思い出させてしまったようですね。


「本当に大丈夫ですよ。今回は魔術師長様から教わった魔力の巡りのやり方を応用しましたから。皆様の魔力の型を覚えて、それを目印に魔力を巡らせるようにしただけです。ですから、それほど大変ではありませんでした」


そう答えたら遠くで、扉が開くような音が聞こえてきたのでした。



312話です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ