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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第2章 女神様の愛し子になってから
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21-7 取り巻き令嬢たちとの話し合い5

皆様はまた顔を見合わせています。フィリナの言葉に言い返したい気持ちはあるようですが、下手なことを言えないとも思ったようです。フィリナはその様子にため息を吐くと口を開きました。


「私に何か言われるのが嫌なのであれば、セリアテス様のお言葉をちゃんとお聞きください」


そう言ってフィリナは私より一歩後ろに戻り、ピシリと姿勢を伸ばして立ちました。家に来てまだ二日です。フィリナは私とほとんど一緒にいたはずですのに、その合間に家人に姿勢を正すことを叩きこまれたようでした。


たった二日で武人、のようにはいかなくても、背筋を伸ばして立ち続けることが出来るようになったとは、『フィリナ恐るべし』なのか『フォングラム公爵家使用人恐るべし』なのか、判断に迷うところです。


皆様はフィリナの言葉に少し気まずそうな顔をしました。それから窺うように私のことを見てきました。フィリナが私に話しやすいようにと作ってくれたのです。機会を逃さずに続きを話すことにいたしましょう。


「えーと皆様、私が女性騎士を目指しませんかと言ったのは、罰を与えるためではありません。それに私はフィリナにも罰として女性騎士を目指してもらったわけではないのです。先ほどの私の言葉で誤解をさせてしまったようですが、フィリナに私の盾となれと言ったのはクラーラお姉様です。それくらいの覚悟がなければ、これからの私のそばには置けないということです」


私は言葉を切ると皆様の顔を順番に見つめていきました。


「皆様は私が『女神様の愛し子』となったことをどうお考えになりましたか」


私の問いに皆様の間に動揺が走りました。視線があちこちにさまよっています。これは私に正面切って問われるとは思っていなかったということですね。


「私の・・・いえ、『女神様の愛し子』の友人として、他の方々から羨まれる立場になると思いましたか」


この言葉にクラリスとオリビアの頬に赤みが差しました。


「では、『女神様の愛し子』と一緒にいることの危険性については、どうお考えになられたのでしょうか」


こう言いましたら、皆様は意外なことを言われたというように、私の顔を見つめてきました。


「危険性だなんて・・・。セリアテス様は『女神様の愛し子』で、この世界で一番尊いお方になられたのに、危険な目に遭うことなどありえませんわ」


レイチェルが笑顔で言いました。私のそばに居ることで危険な目に遭うとは、考えたことはないのでしょう。

私も笑みを口元に浮かべて言いました。


「私は皆様がどうしてそう思えるのかが、不思議でなりませんが」

「あら、だってセリアテス様は『女神様の愛し子』で在らせられるから、セリアテス様を守る騎士がつくのでしょう。それにフォングラム公爵家の警護の方たちはとても優秀な方たちだと伺っています。その方々がいて、セリアテス様を守れないわけがありませんわ」


ミラルテスも笑顔で言いました。なんの杞憂もないと確信しているような笑顔です。


「そうですね。今、神殿では私に就く聖騎士の選抜を行っていると伺っています」

「それでしたら、心配はございませんでしょう」

「でも、その方々は私を守るための方々であって、有事の際に皆様をお守りする方々ではございません」

「えっ?」


レイチェルもミラルテスも、他の4人の令嬢がたも、私の言葉に笑顔を強張らせて動きを止めました。


フォングラム公爵家(うち)の警護の者もそうです。彼らは何か起こった時に、私の安全を第一に考えます。たとえ皆様に命の危険が迫っていても、私の安全が確保できなければ助けになど行きません」


皆様の顔からゆっくりと血の気が引いていくのがわかります。本当にこういうことを考えたことはなかったのでしょう。


「そういうことですから、皆様にはそれぞれに警護の方を連れてくるか、ご自分で身の安全を確保できるようになっていただくしかありません」


私はまた右側のほうを向きました。今度はそちらを見据えて言葉を続けます。


「ですが、もし令嬢付きの警護の方を増やすのであれば、尚更私のそばに居させるわけにはまいりません」

「ど、どうして、ですか」


私は言葉を発したファリアのことをチラリと見てから、続きの言葉を言いました。


「当然です。『女神様の愛し子』である私のそばに、身元のはっきりしない武芸に秀でた方を、寄せるわけがないでしょう。その方達が私に害をなさないとは限らないのですから」

「そんなー!」


ディリーナが悲鳴のような声をあげました。


「待ってください。そのようなことをおっしゃられたら、セリアテス様のおそばには誰もいなくなってしまいます」

「ええ、そうですね。ですが、フィリナはこの事をわかってくれたから、女性騎士になることを承諾してくれたのですよ」


私の言葉に皆様の視線は、フィリナに集中したのでした。


私もこの言葉が極論だとはわかっています。ですが、もう杞憂では済まないことを私は知っています。このまま皆様がそばに居ることで、危ない目に合わせたくはないのです。



311話。


もう少し続くねえ。

令嬢たちとの会話は。

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