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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第2章 女神様の愛し子になってから
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21-6 取り巻き令嬢たちとの話し合い4

何度か口を開け閉めした後、レイチェルが口を開きました。


「そ、それでも、スクワーレ伯爵令嬢は、セリアテス様の特別なのですよね」

「そうですけど、そうではありません」


私の返事に訝しそうな顔をして、レイチェルは見てきました。


「見ていてわかりませんか、イェネヴァイン侯爵令嬢。先ほどからフィリナはどういう立ち位置なのかを」


私の言葉に怪訝そうな顔をする令嬢方。そういえば、私の中にはあちらの知識があるからか、警備につく者がどういう立ち位置なのかわかっています。皆様はまだ知らないのでしょう。それとも、使用人の立ち位置など気にしたことが無いのでしょうか。


いえ、まだ皆様は7歳と幼いので、そこまでのことに思い至らないということでしょう。


「あ、あの、セリアテス様。セリアテス様は先ほどからスクワーレ伯爵令嬢のことは名前で呼んでいらっしゃいますよね。それが特別だという証なのではないのですか」


おずおずとクラリスが聞いてきました。


「デルフォート伯爵令嬢、それのどこが特別になるのですか」

「私たちのことは名前で呼んでくださらないのに、スクワーレ伯爵令嬢のことは名前を呼んでいるではないですか」


ディリーナも言ってきましたが、不平不満を含んだ言い方でした。


「皆様もフィリナと同じような扱いを望むのですか」


そう聞きましたら、5人の令嬢は頷きました。オリビアだけは不安そうに私のことを見ていました。


「それでしたら、皆様にも女性騎士を目指していただくことになりますけど、よろしいでしょうか」


私の言葉に皆様は目を見開きました。


「そのようなことは申しておりませんわ、セリアテス様」

「でも、フィリナと同じ扱いを望むのでしょう」

「そうですけど、違います。なんで私まで罰を受けなくてはいけないのですか」


レイチェルの言葉で皆様が何を考えているのかがわかりました。それと共に女性騎士を目指すことが罰だと思われていたことに、驚きが隠せません。私はフィリナと共にいるための手段として女性騎士になって貰おうと思いました。それだけではなくて、女性騎士を目指すのはフィリナにとっても、他の令嬢方にとっても、いいことであるはずなのです。


もう、周りの大人たちは『魔物の大量発生』が起こるものと思っています。各国もそれを受け入れ、対処するための準備に入ったと聞きました。それから各国と足並みをそろえるためにも、協力体制を作り上げようとなさっているそうです。こちらは神殿と聖王家、あとリングスタット王国を中心に話を進めているのだとも聞いています。私が提案した魔法のことも各国に話は通って、来年の2月の顔合わせ以降に詰めていくことになりました。


基本は大人たちが話を進めてくれていますが、『女神様の愛し子』である私にも知らせるべきということで、毎日決まったことについて教えていただいています。


その中には、やはり各国の学ぶ場所の話も出てきています。私と同じ7歳から上の年齢の方が『魔物の大量発生』が起こったら、討伐に駆り出されることもわかっているのです。だから、いまから出来ることは何かということも、考えられているそうです。


私が令嬢方に『女性騎士を目指しませんか』と言ったのも、今から体を作り基礎体力をあげておきましょうという意味だったのですけどね。それが罰でフィリナに言ったと誤解されたとは思いませんでした。


「あの、誤解していますよ」

「どこがですか。やはりセリアテス様は私たちのことがお嫌いだったのですね。だから報復で女性騎士になれとおっしゃっているのでしょう」

「ひどいですわ。確かに私たちの今までの態度は、セリアテス様に不快感を与えたようですけど、だからといって罰を与えられるほどのことはしていないと思います」


レイチェルとミラルテスが目に涙を浮かべながら言いましたら、他の令嬢方も口々に言い出しました。自分たちは罰を与えられるほどのことはしていないと。私は誤解を解こうと口を開こうとするのですが、次々に話されるので口を挟む隙がありません。私は困ってしまいました。


「いい加減にしなさい!」


私の後ろから一喝する声が聞こえてきました。振り向くと、フィリナが目を怒らせて皆様のことを睨んでいます。


「な、なんであなたに言われなければいけないのよ」


ディリーナがムッとした顔でフィリナに言いました。フィリナのほうもディリーナのことを睨み返し、二人の間には火花が散っているような幻覚が見えるような気がしました。


「私は口を挟むつもりはありませんでした。ですが、あなた方があまりにもセリアテス様に、不敬な態度を取り続けているから、口を挟んだまでです」


そう言ってフィリナは皆様のことを順番に睨みつけていったのです。その様子に皆様は尚更不快感をあらわにしました。でも、皆様が何か言う前にフィリナが先にまた話し出しました。


「それとセリアテス様が言われた誤解というのも本当です。私が女性騎士になると決めたのは、セリアテス様に言われる前です。だからセリアテス様からの罰ではないですから」


フィリナがきっぱりと言った言葉に、皆様はどう判断したものかと、戸惑った顔をなさいました。



310話です。

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