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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第2章 女神様の愛し子になってから
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21-3 取り巻き令嬢たちとの話し合い1

令嬢方がサロンに入り、私の後ろにフィリナがいるのを見て眉をひそめました。ディリーナなどははっきりと顔をしかめましたが、皆様は何も言いませんでした。


「こちらにいらしてください」


私の言葉に皆様は私のそばに移動をしてきました。私は用意してもらったテーブルを指して言いました。


「そちら側にお座りください」


皆様は戸惑った表情を浮かべたあと、まずレイチェルが6つ並んだ椅子の中央の席に座り、その隣にミラルテスが、ミラルテスの右隣にクラリスとオリビアが座り、レイチェルの左隣にはディリーナとファリアが座りました。


それを見て私は皆様と向かい合う側、丁度レイチェルとミラルテスの間の辺りに置いてもらった椅子に座りました。フィリナは椅子に座らずに私の右斜め後ろに立ったままです。皆様の視線がフィリナにいきましたが、やはり何も言わずにすぐに視線は私に集中しました。


私はまだ何も言わずに、サラエさんとキュリアさんが、皆様にお茶を配り終わるのを待ちました。私のところにカップが置かれたところで「ありがとう」と言いましたら、皆様が驚いた視線を寄こしました。


あれ? お礼を言うのは当たり前ということを布告されてましたよね。それとも、私が侍女にお礼を言うことが珍しかったのでしょうか。


令嬢方は自分の前に置かれたカップを見て困ったような顔をしています。隣の令嬢をチラチラ見ているので、これはどうしたらいいのか困ってしまったのでしょう。私と同じようにするべきなのはわかっているけど、言うタイミングを逃してしまったというところでしょうか。


不思議なのですが、先ほど皆様を迎えてから、私は気持ちが落ち着いています。先ほどまでの緊張でガチガチになっていたのが、嘘みたいです。皆様を観察する余裕が生まれています。


余裕・・・なのでしょうか。でも、皆様のことを見ることが出来ているのです。だから、私が日記から抱いていた皆様のイメージと、いま実際に皆様を見て感じたことの差に、気がつくことが出来ました。


私はカップを持って一口紅茶を飲みました。それを見た皆様もカップを持って口をつけました。皆様の表情から紅茶を飲むのは初めてなのがわかりました。


これはどちらと考えるべきかしら。セリアテス(・・・・・)が意地悪をして彼女たちに出さなかったのか、それとも最近発見されたということだから彼女たちに出すほどの量はなかったのか。


つい、考えこんでいたら「あ・・・」と誰かが発した声が聞こえてきました。少し視線を下に向けて考えていたのを中断して顔を上げたら、口元を押さえているファリアと視線が合いました。ファリアは私と視線が合ったことに戸惑った表情を浮かべて、視線をテーブルへと落としてしまいました。


私は(そうでした)と、少し反省をして軽く息を吸い、吐き出してから笑顔を浮かべました。


「皆様、本日はよくいらしてくださいました。昨日は不快な対応をしてしまい申し訳ございませんでした」


その言葉と共に頭を下げました。ざわりと空気が動きました。頭を下げている私からは見えませんけど、戸惑った雰囲気は伝わってきます。案の定頭を上げて皆様の顔を見ましたら、表情に困っているのが見て取れました。


他の皆様の様子を伺っていたファリアが、意を決したように口を開きました。


「セリアテス様、昨日は本当に申し訳ございませんでした。突然押し掛けたこともそうですが、セリアテス様がスクワーレ伯爵令嬢と考案なさっていた図案を、破り捨ててし、しまって」


ファリアは唇を震わせながら何とかそこまで言いましたが、それ以上は言えずに口元を手で覆い隠してしまいました。目には涙が盛り上がり、今にもこぼれ落ちそうです。なので私は安心させるように言いました。


「そのことですが、図案を破り捨てたことは気にしないでください。あれはまだ完成したものではなかったのですから」

「ですが」

「気にしないでくださいね」


ファリアがまだ何か言おうとしましたが、私は少し強引に笑顔で言葉を被せるように言いました。そうしたら皆様一様に驚いた顔をなさいました。何をそんなに驚かれたのでしょうか。


「ところで皆様に来ていただいたのは私から話があるからです」


この言葉に皆様の間に緊張が走りました。皆様の表情はそれぞれなのですけどね。期待に満ちた顔、不安をあらわにしている顔、困惑している顔。でも、皆様は何も言わずに私のことを見つめています。まずは私の言葉を聞こうということですね。


「昨日、母も言いましたが、皆様には私の友人を名乗るのをやめていただきたいと思います」


皆様は息をのみました。そして他の方の様子を伺いだしました。その中でレイチェルは少し俯いて唇をかんでいましたが、すぐに顔を上げて私のことを睨みつけてきました。いえ、私ではなく後ろに立つフィリナのことを睨みつけたのです。


「どうしてですか、セリアテス様。私達より、その子のほうを選ぶとおっしゃるのですか。セリアテス様に怪我をさせたその子のほうを」



307話。


ここまでお読みいただきましてありがとうございます。

やっとここまで来ました。

まだまだ続きますので、もしよろしければお付き合いをよろしくお願いいたします。


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