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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第2章 女神様の愛し子になってから
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20-13 お姉様たちの後悔・・・

「ミルフォードのいう通りですよ、お婆様。でもお婆様がそのつもりなら、こちらも誰にも逆らえない強権を発動しますけど、それでいいのですか」


オスカーお兄様も立ち上がって、私の左手を握りながら言いました。オスカーお兄様のことを見上げると、真剣な顔でおばあ様のことを見つめています。ミルフォードお兄様も目を細めておばあ様のことを見ています。まるで私を守るようなその行動にうれしさがこみあげてきました。


「ああ、もうあなたたちは! 私はセリアテスをイジメているわけではないのよ。フォングラム公爵家の威信をどうするかと問うただけでしょう」


おばあ様が顔をしかめてお兄様たちに抗議しました。


「そんなもの、犬にでもくれてください」

「そうだよ。『女神様の愛し子』が心安らかに過ごせることのほうが大事だろ。些末なことでセリアテスを煩わせるのなら、お婆様こそが悪ということになるよ」


ミルフォードお兄様はにべもなく言い、オスカーお兄様は不敵な笑いを浮かべて言いました。


「オスカー。あなたはお婆様に向かってなんてことを言うの」

「いいえ、お母様。オスカーのほうが正しいですわ」

「そうだね。セリアテスにいらない心労を掛けているよね。大人たち(・・・・)は」


カテリア伯母様がオスカーお兄様のことをたしなめようとしたら、クラーラお姉様とローラントお兄様までが、私達を擁護するような発言をしてくれました。おばあ様と伯母様は顔をしかめています。


「私からもよろしいでしょうか。フォングラム公爵夫人は、セリアが友人たちをもう一度呼び寄せて話しをするということを、どうお考えになりますか」


ローザ様も話に加わりました。ローザ様に問われたお母様は、少し困ったように笑いました。


「私はセリアテスがしたいようにさせたいと思いますわ。どうやら私も、セリアテスの気持ちに気付かずに先走ってしまったみたいですから。部屋に入った時にセリアテスの顔を見ていれば、セリアテスが望んだことが分かったと思いますもの」


お母様の言葉を聞いたローザ様とビアンカが首を竦めました。


「それは私も同じですわ。嫌なあの子たちをセリアのそばから排除することしか考えなくて、セリアの気持ちに気がつかなかったのですもの」

「そうよ。なんであの時、セリアを止めるだけでセリアの顔を見なかったのかしら。セリアに嫌なことをさせないように守ったつもりで、私のほうが嫌な思いをさせちゃうなんて。友人としてもいとことしても失格だわ」

「それを言うなら私もね。セリアテスに言わせたくなくてしゃしゃり出てしまって。セリアテスは制止しようと声を掛けていたのよね。それを私は自分で言うからと受け取ってしまったのよ。」


ローザ様とビアンカが後悔するように言ったら、クラーラお姉様までが項垂れてしまいました。


「まあまあ、姉上。姉上の気持ちはセリアテスはわかっていますよ。そうだろう、セリアテス」


ローラントお兄様の言葉に私は頷きました。


「私も、クラーラお姉様の言葉を制止できなかったのが悪いのです。ごめんなさい、お姉様」

「セリアテス」


クラーラお姉様がうれしそうな声をあげました。眉がへにょんと下がって可愛いです。

・・・ではなくて、えーと、どうしたらいいのでしょうか。


ミルフォードお兄様のことのを見ましたら、ニコッと笑ってくれました。


「とにかく座ろうか、セリア。あの子たちの家に連絡するにしても、いろいろ決めてからのほうがいいだろう」


お兄様に促されてもう一度席に着きました。


「お兄様、いろいろ決めるというのは?」

「セリア、お婆様も言ったように、母上の言葉はフォングラム公爵夫人としての言葉だよ。それは係累であるあの子たちの家(・・・・・・・)にも大きく関わるだろう。今頃それぞれの家では娘から母上の言葉を伝えられて、対応に追われているのだろうね」


・・・お兄様、微笑んでおられますけど、少し悪いお顔です。それに、先ほどはうちの威信?など、どうでもいいようにおっしゃっていましたよね。


そんなことを考えていたら、お兄様がおかしそうに笑って私のことを見つめてきました。不覚にも、その笑い顔にドキリとしてしまいました。


「セリア、さっきと言っていることが違うと思っているだろう。今言ったことはそれぞれの家で行われているだろう、事実を言っただけだよ。さっきも言ったけど、うちの威信なんてどうでもいい。けど、それだけじゃ駄目なのなのはわかるだろう」


お兄様が言いたいことはわかります。お母様が令嬢たちに言った言葉で、家同士のことになってしまったことは。


「だからね、明日あの子たちを呼ぶだけじゃ駄目なんだよ。あの子たちの親も呼ばないとね。出来ればそれぞれの当主にも来てもらえると、話は早いかな」


お兄様の言葉をよく考えます。そして、出た結論?を口に出しました。


「では、お兄様、各家に私から『もう一度話があるからと、令嬢方をうちに招くと共に、それぞれのご両親またはご当主にもご足労願いたいと、伝えてもらう』で、いいですか」


私の言葉にお兄様は笑顔で頷いてくれたのでした。



301話です。


パワーバランスの話は難しいですね。

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