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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第2章 女神様の愛し子になってから
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20-12 オスカーお兄様の提案・・・

私の謝罪に戸惑った声が聞こえてきました。


「あの、どうか、顔をお上げください、セリアテス様」


カトリーナが困惑した顔で見つめてきています。イリーナとアデリーナも困ったように見てきます。


「私達のことは気になさらないでください。昨日は私達がセリアテス様とローザ王女殿下に、先に失礼な態度を取ったのですから。それなのに、ルートーガー公爵令嬢をご使者として、私達に会いたいと言っていただけたのです。そのお言葉だけで、私は救われましたわ」

「あの・・・私もカトリーナ様と同じです。昨日はわたしも思い上がった態度でいました。それをセリアテス様が不快に思うのは当たり前のことです。先ほどのことは驚きましたけど、セリアテス様のお言葉でお気持ちは本当にわかりましたから」


カトリーナに続いてイリーナも言ってくれました。アデリーナは視線をあちこちにさまよわせた後、そっと口を開きました。


「あの、発言をお許しください。私も、驚きはしたのですけど、気分を害してなどおりませんから。それよりも、女神様の愛し子になられて数日しか経っていないのに、そこまでお考えになられるセリアテス様に、尊敬の念を覚えました。特別を作らないということは、誰にでも平等であろうとする、お心の表れだと思います。そうするための証人としてお呼びくださったことは、光栄の至りでございます。セリアテス様におかれましては、ただお命じになられればよろしいのですよ」


アデリーナの言葉に私の目からまた涙が落ちました。それを見て、三人は慌てて立ち上がりました。そうしてから、困ったように三人で顔を見合わせました。その時横から手が伸びてきて、手巾で私の涙を拭いてくれました。


「ほら~、セリアテス、君が泣くと令嬢方も困ってしまうだろう。だから、落ち着いて、座ろうね。君たちも座ってくれるかな」


オスカーお兄さんの言葉に私は椅子に座りました。三人も私が座ったのを見て椅子に座り、また身を縮こまらせていました。オスカーお兄様は椅子を少し後ろに提げました。


「さてと、君たちもセリアテスの言い分はわかったよね」


オスカーお兄様は口元に笑みを浮かべて横目で令嬢方のほうを見ながら言いました。


「はい、もちろんでございます。オスカー様」


カトリーナが代表するように答えています。お二人も横で頷いています。お兄様が椅子を下げてくれたのは、私から令嬢方の顔が見えるようにということみたいでした。


「それなら、自分たちがやるべきことはわかっているよね」

「やるべきことですか」


オウム返しに言葉を言ってから、カトリーナは二人と顔を見合わせました。三人ともわからないようで、困ったようにお互いの顔を見ています。その視線がオスカーお兄様に向きました。オスカーお兄様は笑みを浮かべたまま言いました。


「セリアテスは君たちに、自分の友人たちを友人扱いできないと伝えたことの、証人になってほしいということはわかっているだろう」

『はい』


三人は声を揃えて返事をなさいました。


「それなら、明日(・・)もう一度(・・・・)あの令嬢たちに話すところに、立ち会って(・・・・・)もらわない(・・・・・)といけないよね」


オスカーお兄様の言葉に、私は立ち上がるとお兄様に抱きつきました。


「オスカーお兄様、大好き」

「おいおい、セリアテス。君だって冷静になれば思いついたことだよ」

「いいえ、お兄様が言ってくださらなければ、思いつかなったわ。それじゃあ、早速彼女たちの家に連絡をしないと」


私は明るい声でそういうとお兄様から離れて、部屋の中にいた執事のクーベリックのことを見ました。そのまま令嬢方の家に連絡するように口を開こうとしました。


「お待ちなさい、セリアテス」

「おばあ様?」


おばあ様から待ったの声がかかり、首を捻ります。おばあ様は真面目な顔で私のことを見つめています。


「ちょうどいいからこのままにしましょう」

「それは駄目です、おばあ様」

「それはどうしてかしら」


おばあ様が口元に笑みを浮かべて言いましたけど、何故か迫力を感じます。私は足を後ろに引いて下がりそうになりました。


「先ほど言った通りです。私はやり方を間違えたのです。それは正されるべきです」

「でもね、よく考えて、セリアテス。あの令嬢たちはあなたのことを軽んじた態度でいたのよ。それを問わずに簡単に許していいものかしら。それに、決定したのはあなたの母ですよ。公爵夫人であるミリアリアの決定を覆すというのね」


おばあ様の言葉にビクリと肩を震わせて、お母様のことを見ました。お母様は困惑したように私のことを見つめていました。


「で、でも・・・」


言葉がでてきません。当主夫人であるお母様の決定を、蔑ろにするわけにはいきません。けど、私がやり方を間違えたのは確かです。せっかくオスカーお兄様が打開策を授けてくださったのに。

自分の不甲斐なさにまたじわりと涙がせり上がってきました。


その私の肩に手が置かれました。


「お婆様はずるいですね。母上のことを持ち出されたら、セリアに反論ができるわけないじゃないですか」

「お兄様」


私は右隣に立つミルフォードお兄様のことを見上げました。



300話!


おお~。とうとう300話に到達。

まだまだ続きますので、よろしくお付き合いくださいませ。


お読みいただきありがとうございました。

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