医師話1 若輩者の日記から・・・
私の名前はパウル・ウルバーンといいます。王宮医師をしています。まだ22歳の若輩者です。
普段の私の仕事は魔法による治療で、怪我の手当てを主に行っています。
最近、王宮で一つの事件が起こりました。
最初はこんな大事になるとはおもってもみませんでした。
あれは、毎年行われる王妃様主催の高位貴族の令息、令嬢が招かれたお茶会で起こりました。
今年は今までで一番規模が大きく、招かれた年齢も下は5歳から上は12歳までと幅広いのが特徴でした。
今、この国には高位貴族とよばれる伯爵家以上の家は63家あります。
その高位貴族から該当する令息、令嬢は158人いらっしゃいます。
年齢がこれほど幅広かったのには理由があります。
それは、王子、王女の年齢に合わせたからです。
王家には5人お子様がおり、一番上の第1王子は12歳。一番下の第2王女は5歳です。
この日は私も朝から医務室におりました。
いつものように訓練で怪我をした騎士や兵士の治療をして午前は過ぎました。
午後になりお茶会が始まると、暇になりました。
これは毎年のことだそうです。
お茶会の途中で医務室に来るのは、緊張で具合が悪くなった令息、令嬢なので、薬事担当の医師が対応するから、私達治療担当はすることがないのでした。
今年はまだ一人も医務室にくる令息、令嬢がいなかったし、王妃様からお菓子も届けられていたので、私達医師はゆっくりとしていました。
そこにお茶会の警備にあたっていた兵士が飛び込んできました。
何でも令嬢の一人が庭園で転んでお怪我をされたというのです。
しばらくして、近衛騎士に抱えられていらっしゃいました。一緒に女性と少年が入ってきました。
女性の顔をみて驚きました。フォングラム公爵夫人です。
ということはこの子はフォングラム公爵令嬢なのでしょう。
傷を見てみると左のこめかみの辺りが切れていました。
傷口を消毒して魔法で傷口をふさぐと治療はおわりです。
消毒薬がしみたのか顔をしかめられたけど、魔法を使ったらすぐに表情が和らぎました。
公爵夫人に傷は大したことはないと伝えたのですが、治療後に公爵令嬢の顔色が悪くなっている気がします。
顔色の悪い令嬢を心配して、公爵夫人は先に退出することにしたようです。
王妃さまに伝えてくると言い部屋を出ていかれました。
公爵令嬢の顔色は青ざめた色から紙のように白くなっていました。
あまりの顔色の悪さにベッドに横になるように告げたら、公爵令息に手を引かれて立ち上がりかけました。が、「あ・・・あたまが・・・」とつぶやいて倒れてしまったのでした。
すぐにベッドに寝かせました。
呼びかけてみましたが応答はありません。完全に意識がないようです。
公爵夫人が王妃様と戻ってこられました。
意識がないことを伝えますと王妃様は、すぐに客室の一つを用意するように指示され、公爵令嬢を運びました。頬に赤みが差し熱が出てきたのがわかりました。
連絡がいったのか、公爵もこられました。
すぐに辞去するとおっしゃられましたが、王妃様が公爵令嬢が目を覚ますまで動かすことを禁じました。
結果、王妃様の判断は正しかったです。
それから、7日間公爵令嬢は眠り続けたのです。
高熱を出し時々うなされていました。
私達医師も交代で詰めていましたが、原因がまったくわかりませんでした。
公爵令嬢の持病ということも、呪いということもあり得ないということでした。
それどころか、もっとあり得ないことがおこりました。
変化に気が付いたのは3日目でした。
公爵令嬢の髪の色が少しずつ薄くなっていたのです。
それと共に髪に輝きが加わってきました。
今までにこんな話は聞いたことがありませんでした。
髪に輝きが加わるということは魔力量が増えているということです。
私達は生まれた時に魔力量はきまっているといわれています。
鍛錬次第で増えることはあると聞いたことがありますが、このような変化ではないときいています。
国王をはじめ、医師長、魔術師長、学者が話し合っていたけど答えが出ることはありませんでした。
私達にできたのは経過を見守ることだけでした。
5日目には公爵令嬢の髪の色はブロンドになってしまいました。
6日目。熱が下がってきました。公爵令嬢の髪の色はまるで月の光を思わせるプラチナブロンドになっていました。
7日目。私は医師長共に会議室で、国王、王妃、フォングラム公爵夫妻、宰相、魔術師長、学者、大臣たちに、公爵令嬢の経過を説明していました。
とにかくなんでこういうことになったのか原因がわかりませんでした。
そして対処の仕方も何もわからないというのが、私達の状況でした。
あとは公爵令嬢が目を覚ますのを待つしかないというと、皆黙り込んでしまいました。
29話です。
今日も投稿できました。
予告通り医師の方です。
ただ、医師長じゃなくて、若い子にしました。
・・・・・
何度も同じことを語って話が進んでいないようにみえてしまって、すみません。
王宮を出るまで、こんな感じで振り返りがはいります。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
では、次話で。




