2-7 王女様とお話ししましょう
ローザ王女様がいうように果物も近くの小テーブルに用意されていました。
「リンゴ」
リンゴがおいしかったな、と思っていたら、口からつぶやきがもれていました。
「リンゴ?リンゴが食べたいの。貴女、リンゴを食べやすくしてこちらに持ってきてちょうだい」
「かしこまりました」
王女様の言葉にメイドさんがナイフで皮を剥いて、食べやすくカットして持ってきてくれました。
早業です。小ぶりのフォークもつけてくれてます。
「ありがとうございます」
あれ、お礼を言ったらみんな変な顔をしています。
「いいのよ。それよりも、早く回復するためにもいろいろ食べて力をつけなくちゃ」
王女様にお礼を言ったわけではないのですが、でも頼んでくれたのは王女様ですし、うん、そういうことにしましょう。
リンゴを一口かじるとみずみずしい甘さが口の中に広がります。
「おいしい~」
笑みと共におもわず口をついて言葉がでてしまいました。
あれ、周りの方々が頬を染めて私を見ています。
昨日から何なのでしょう。
王女様が軽く咳払いすると話しかけてきました。
「セリアテス、お父様達から聞いたけど本当に何も覚えていないの」
「えーと、何もというわけではないのですが・・・」
「怪我をした時の事だけなのでしょう、覚えているのは。それは覚えているうちには入らないわ」
「それでしたら、はい。何も覚えていません」
「私達のこともよね」
「はい。すみ・・・」
「あー、もう。謝らないで。あなただって忘れたくて忘れたわけじゃないんだから」
「・・・はい」
(う~ん。これは、怒ってる?いいえ、違う。いや、違わない?
戸惑いのほうが大きいというほうが正しいのかしら。
もしかして、私はローザ王女様に好かれていたのかしら。
だから、私に起こったことに怒り悲しんでくれた・・・)
「ローザ王女様」
「なにかしら」
「あの、聞いてもいいですか」
「・・・ええ?」
「私のことを」
「・・・!」
「ローザ王女様が知っている私のことを教えてください」
「・・・」
「マインも!マインもおしえてあげる」
「マイン王女様」
「あのね、セリアおねえさまはやさしくて、おうきゅうにくるとわたしのあいてをしてくれて、えっと、えっと、せんせいなの!」
「先生ですか」
「おかあさまがね、セリアおねえさまをみならいなさい、っていってたの。それでね、おねえさまはいろいろおしえてくれたの」
マイン王女様が一生懸命話してくれます。言葉が見つからないのかうまく話せないことに泣きそうになってしまいました。
ローザ王女様がマイン王女様の手を握りました。
マイン王女様はローザ王女様の顔を見ました。
ローザ王女様は優しく笑いかけました。
「本当よ、セリア。あなたは、私たちのお手本だったのよ。貴族令嬢としての礼儀はもちろん立ち振る舞いも優雅で、立派な淑女だったわ」
「私が・・・」
「ええ。そんなあなたに負けないように、いいえ、私はあなたの友人として恥ずかしくないように、あなたに友人となったことを誇ってもらえるように自分をみがいてきたわ」
「ローザ王女様・・・」
ローザ王女様は私の言葉に顔をしかめて、でも、表情を取り繕おうとしました。
ふいに、顔をゆがませると、ローザ王女様は叫ぶように言い募りました。
「ローザ王女様なんて呼ばないで。そんな他人行儀な言い方しないで。私たちは友達だったのよ。他の誰かじゃない。誰も代わりになれない。あなたが私の友達なのよ。ローザって言ってよ」
言い終わると同時に泣き出してしまわれました。
マイン王女様が呼びかけていますが、顔を覆うって泣いています。
私は手を伸ばそうとしましたがテーブルが邪魔で届きません。
立ち上がって王女様のそばに行こうとしました。
メイドさんが手を貸してくれようとしましたが、手で制してテーブルを支えにしてゆっくりと動きます。
周りの気配に気が付いたのかローザ王女様が顔を上げました。
慌てて立ち上がると私に手を伸ばしてきました。
テーブルの角で足をひっかけて転びそうになった私を抱きとめてくれました。
「何をやっているの。あなたは」
怒鳴られました。
顔を見合わせて、どちらからともなく笑いだしてしまいました。
27話です。
やっと王女様の番です。
てっ、・・・あれれ。
予定と内容が変わりました。
ローザ王女様。そんなにもセリアのこと、好きだったんですね。
あと、マイン王女様。
もともと、信望者だったのですね。
一応、第1号です。かな?
あ、でも、次回でちゃんと今のセリアの信望者になりますから。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
明日は、投稿できるかわからないので、今日もう一度投稿する予定です。
では~。