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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第2章 女神様の愛し子になってから
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友人の父話 スクワーレ伯爵の苦悩 1

私の名前はジョルジュ・サンクト・スクワーレ。このリングスタット王国で伯爵位を拝命している。


私は平凡な人間だと思う。


我が家が爵位を戴くことになった初代、その後を継いだ祖父、そして父と私は違う。

あの3人は特別な人間だったと、私は思っている。


我が家の歴史は曽祖父が作ったものだ。曽祖父まではただの平民でしかなかった。それが、勤めていた商会の主が騙されて借金を背負わされた時に、曽祖父が尽力して3年で借金をなくし、その後5年で王宮に品物を納めることが出来るまでに発展させたそうだ。その手腕を買われて曽祖父は王宮に仕えることになった。


曽祖父は準男爵の位を与えられたそうだ。その後、10年後に国王の望む仕事をやり遂げたと聞いている。この時の功労に報いるとして、爵位が男爵に上がったという。


表向きの理由として災害などで収入が減っていた我が国の国庫の貯えを、いざというときの備えができるまでに回復させたというものだった。この当時、国は商人に借金をしていて、それで何とか国のメンツを保っていたそうだ。曽祖父は国王の懐刀として、そして商人として培ってきた情報網を駆使して、貴族たちを調べつくしたと聞いている。


今尚語り継がれる、貴族の大粛清。上は公爵家から下は準男爵、騎士爵に至るまで、改易や取り潰しになった家が、当時の貴族家の半数以上に及んだそうだ。今の貴族家は259家だ。当時は男爵以上の貴族家は700家以上あったという。準男爵、騎士爵家は一代貴族なのは現在(いま)と変わらなかったが、あの頃は褒美として与えられるものではなくて、お金を積めば誰でも手に入れることが出来たようだった。


現在(いま)は貴族家の数は各爵位ごとに与えることが出来る数が決められている。準男爵、騎士爵になるのも、その爵位を与えるのに相応しい者のみに、与えられているそうだ。


このことに携わった曽祖父のことを私は誇りに思っている。


祖父も曽祖父に続いて、リングスタット王家に貢献した。財政に明るく、いろいろなところを見直しをして、余分な出費をなくしたそうだ。大粛清によってかなり財政は立て直されたというが、それまでの余分な出費や災害などがおこったおかげで、せっかくの余剰金も目減りする一方だったらしい。それを小さなことから改革をして、最後には華美な式典の廃止までこぎつけたとか。その代わり厳かさを前面に押し出した式典を行うようになり、それまでの浮ついたお祭り騒ぎ気分ではなく、荘厳な意味のある式典に変わったそうだ。


我が父も国の発展のために尽力をした。当時領地ごとに街道の整備を行っていた。指針はあったのだが、それに達していなくても処罰はなかった。そこを治める領主の裁量に任せていたのだ。なので領主によってはひどい状態でも放置されたりしたのだ。


これを国の事業として各領主に期限を決めて整備させたのだ。それだけでなく、各領の境に置く関所にも統一の決まりを設けたそうだ。それは通行料に関するものだった。それまでは領を移る時には出た領と入る領、それぞれに支払わなければならなかったのだが、これを入る領だけが徴収するように決めたのだという。金額もかなり安く設定したそうだ。最初は反発があったそうだが、安い料金で国内を移動できるということで、国民で余裕がある者たちは他の領に旅行に行くようになった。これにより人の往来は盛んになった。人が動けば物流も動く。そうしてリングスタット王国はこの数年で他国に類を見ないほどの発展を遂げていた。


そんな先祖たちに比べて私は本当に平凡な人間だった。


ただ、父の教育のたまものだったのか、私はどうやら数字に強かったようだ。そのおかげで、父がやり残した仕事を私が引継ぎやり終えることが出来た。それは私の喜びでもあった。


それなのに、私は窮地に立たされることとなった。この国一番の貴族、フォングラム公爵に睨まれてしまったのだ。なぜそんなことになったのかというと、我が娘フィリナがフォングラム公爵令嬢であるセリアテス様に怪我を負わせてしまったのだ。最悪なことにセリアテス様は意識を失って目を覚まさないという事態になってしまったのだ。


高位貴族に睨まれたということで、私の周りから人が去っていった。本当に苦しい8日間だった。王宮で倒れたということもあり、王宮にセリアテス様は留め置かれた。フォングラム公爵に面会を申しこんで謝罪をしたいと思っても、フォングラム公爵は会ってはくださらない。


娘がわざとしたことではないと分かっていたが、娘のことを恨みそうになる自分がいた。家に戻ると、娘のこれからを思うと、一家で悲観して過ごす日々だった。


私が噂で聞いていたセリアテス・クリスチーネ・フォングラム公爵令嬢というのは、良くも悪くも高位貴族らしい令嬢だった。そんな令嬢に怪我を負わせたのだから、娘は一生セリアテス様の僕として過ごすしかないのだろうと、私達は思っていたのだった。



278話です。


閑話です。(笑)

ちょっと気分を変えるためにも、スクワーレ伯爵に語っていただきました。

1話でおさまらずにもう少し続きます。


お読みいただきましてありがとうございます。


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