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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第2章 女神様の愛し子になってから
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18-1 お客様をご招待します

11月8日です。昨日は一日ゆっくりと過ごしました。

さすがにお披露目会は疲れました。


お母様も緊張の連続だったようで、昨日はとうとう寝込まれてしまいました。少し微熱があるだけだと言っていましたが、私のことでこのひと月心労をかけていたのですから、ゆっくりお休みいただきたいと思いました。


さて、今日はこれから来客があります。なので、私は朝からソワソワしているんです。じっとしていられなくて、さっきから椅子に座ったり立ったりを繰り返していたら、ミルフォードお兄様に笑われてしまいました。いえ、お兄様だけでなく、家族みんなにです。


居間には私とお兄様だけでなく、お父様とお母様、おじい様とおばあ様がいらっしゃいます。そしてある方たちが来るのを待っているわけです。


執事長が居間に現れてお客様が見えたと告げました。その後ろから現れたのは緊張した表情をした、スクワーレ伯爵でした。それから、夫人と夫人に抱かれた赤ちゃん、フィリナ様と弟君もいます。みなさま凄く緊張をなさっていらっしゃいました。


「よく来てくれたね、スクワーレ伯爵。それにご夫人も。ご家族で来ていただくことになってしまって申し訳なかったね」


お父様がフォングラム家当主としてあいさつをしました。


「いえ、お招きいただきましてありがとうございます」


スクワーレ伯爵はそう答えてお辞儀をなさいました。夫人もフィリナ様も弟君も、同じように頭を下げられています。


「そんなに畏まらないでくれないか、ジョルジュ」


お父様がスクワーレ伯爵の名前を呼んで、親しげに話し掛けました。


スクワーレ伯爵一家に座っていただいて、お茶とお菓子が出されました。それを見た弟君はソワソワとして、両親の顔を見ましたが、二人の顔を見ておとなしくなりました。それでも、お菓子に視線は釘付けです。きっとここに来る前に言い含められてきたことでしょう。弟君に食べていいと言ってあげたかったですが、それは私がしてはいけないことです。


そんな私の気持ちに気がついたのかお父様がおっしゃってくださいました。


「どうぞ、食べてみてくれ」


スクワーレ伯爵は少しためらいましたが、再度勧められて出されたお菓子に手を付けました。出されたものはプリンとリンゴのコンポートとかりんとうです。弟君は嬉しそうに食べています。


そうよね。プリンは子供おやつの定番よ。絶対に安価でみんなに食べてもらえるようにするからね。


スクワーレ伯爵が食べ終わったところで、お父様が余計なことを抜きに本題に入りました。


「ジョルジュ、この菓子たちを食べてみてどう思ったかな」

「とても美味しく素晴らしいものであると思います」

「御前会議でのセリアテスの提案を聞いているね」

「はい、もちろんです。これらのレシピを1つにつき10万ガルドで国が買い取って、国はそのレシピを求めるものに1万ガルドで販売をする。その金額の半分は神殿に奉納して、魔物対策の資金とする。でしたね」

「そうだ。それにセリアテスはレシピを渡すだけでなく、その作り方を完璧に教えることを望んでいる。それを教えるために場所を作らなければならない」

「確かにそうですね。完璧な作り方を伝授されたなら、その後はその者の腕次第ということになりますね。自分の店を持つもよし、『女神様の愛し子』のレシピを作れる料理人としてどこかの貴族に仕えるもよし」


スクワーレ伯爵はまだ23歳とお若いと聞いています。それがお父様の問いに的確に答えています。今はお父様の下で働いていらっしゃるのですよね。


「そうなのだが、店を持った場合その者がどうするべきかも、聞いているだろう」

「はい。店をもって売り出した場合、いくらかの金額を毎月奉納するようにでしたよね」

「そうだ。昨日もセリアテスと話し合ったのだ。如何にするのが、一番いいのかとな。まずはレシピの伝達の流れを作ろうということになった。最初の国にレシピを売るのはいいだろう。だがその先がどうしてもうまくいかないのだ。各国で国からレシピを買った者にどうやってその作り方を伝えるかをだ。最初は各国の代表に教えることにしてはどうかということだった。だが結局は各国でその者に教わる場所が必要になる。ならばいっそレシピの購入者を、この国に集めて教えたらいいだろうということになった。だが、ここでまた問題が出てきた。我が国の者や隣国ならいいが、離れた国の者にこの国まで旅をさせることになるとな」


お父様はフウ~と息を吐き出しました。


「確かにそうですね。こう言っては申し訳ございませんが、たかがレシピのために命懸けの旅をしてくるというのはどうかと思います」

「私もそう思ったが、これについては打開策が一つある。来年の各国の王族が集まった時に提案するつもりだ」

「そういえばそうでしたね。それもありましたね」


スクワーレ伯爵もため息にならないように息を吐き出したのでした。



268話です。


セリアちゃんの話なんだけど、少し大人の話になってます。

本当なら楽しくお勉強のはずだったのにな~。


では、また次話で!

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