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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第2章 女神様の愛し子になってから
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17-10 私の願い

マルツァーン子爵家の方々の顔色の悪さに、私は気の毒になりました。

そうしたら、私の姿を見たとたんに、4人は平伏をなさいました。


「セリアテス様、いえ、女神様の愛し子様。息子たちが失礼な発言をしてしまい、申し訳ありませんでした。私共の教育が行き届かず、愛し子様に不快な思いをさせてしまいました。子供がしたことは親の責任です。お詫びになるか分かりませんが、我が家は爵位を返上して市井にくだろうと思います」


額を地面にこすりつけたまま言われたので、少し聞き取りにくかったのですが言われたことはわかりました。なので私は、マルツァーン子爵のそばに行ってしゃがむと、その肩に手を掛けました。マルツァーン子爵は自分の肩に手を当てられたことに驚いて顔をあげました。


「どうかそのようなことをおっしゃらないでください。マルツァーン子爵に非はありませんから。それに子供同士の他愛ない話です。そんなに深刻にとらないでください」

「で、ですが・・・」


マルツァーン子爵は私の言葉に戸惑ったようで、私の顔を見た後チラリと私の後ろに視線を向けました。多分お父様のことを見たのだと思います。


「それに私の方こそこのような事態になってしまい申し訳ないと思っています。皆様を晒し者にするつもりはありませんでしたから」


私の言葉にマルツァーン子爵婦人も顔をあげました。私は微笑みを浮かべて頷きました。


「セリアテス様はお怒りではないのですか」


恐る恐るという感じに夫人が問いかけてきました。私は少し声を落としてあまり周りに聞こえないようにと、願いながら言葉を口にしました。


「私は怒っていません。言われた言葉に不快にはなりましたけど、でも本当のことでしたから。あの時は高位貴族家としては恥ずかしいくらいの魔力量でしたもの。だけどそれは私の努力でどうなるものではありませんでした。そのどうしようもないことを言われたから、私は不快に思いました」


この言葉にご子息方も顔をあげて私の事を見てきました。私は2人の方に視線を向けて言いました。


「お二方には、これからは相手が努力してもどうにもできないことを、嘲笑うことがないようにお願いいたします」


お二人は私の顔を見つめてしばらくは微動だにしませんでした。少しして言葉の意味を理解したのか、コクコクと頷きました。私はそれを見て立ち上がりました。ドレスの裾に少し土が付いてしまいましたが、気にしないことにしましょう。私はマルツァーン子爵家の方々に言いました。


「どうかお立ちになってください」


マルツァーン子爵家の方々はお互いに顔を見合わせてから立ち上がりました。私は周りの聞き耳を立てている人たちにも聞こえるように、少し大きめの声を出しました。


「マルツァーン子爵、この先数年後に魔物の大量発生が起こるかもしれないと聞いていらっしゃいますか」

「は、はい。勿論、聞き及んでおります」


マルツァーン子爵は話の内容が変わったことに、目を白黒させながら答えてくれました。


「皆様も知っておられるとおり、魔物の大量発生は過去に何度か起きていると聞いています。ですが、今回は今までと違いかなり大規模発生になると思われます。その事に対処するためには皆様のお力が必要です。マルツァーン子爵の御子息方は高魔力保持者と伺っています。どうか、その力を民の安寧のためにお貸しください」


私が軽く頭を下げましたら、周りからざわめきが起こりました。顔をあげるとマルツァーン子爵家の方々が焦ったように腰を落とされました。


「セリアテス様。そのように頭を下げられることはありません」

「夫のいうとおりでございます。民の安寧のために尽くすのは貴族の義務でもあります。もちろん微力ではございますが息子達の力が、民のため、セリアテス様のためになるのでございますれば、いくらでもお使いください」

「こんな僕達を許してくれたセリアテス様のためにならないことはしないと誓います」

「不肖の身なれど、セリアテス様の盾にならせていただきます」


決意を込めた顔でマルツァーン子爵家の方々は、私の事を見上げてきました。


私は困ってしまいました。どう答えようかと考えていたら、肩に誰かの手が乗りました。見るとお母さまでした。お母様は私に微笑んだ後、マルツァーン子爵を見据えました。


「マルツァーン子爵、その言葉をお忘れなきように願いますわ。それよりも時間は有限でしてよ」


笑顔の無いお母様の言葉にマルツァーン子爵は、今がどういう場であるのか思い出したようで、立ち上がりご家族と共にもう一度頭を下げてから離れていきました。


このあとは、残りの子爵家19家の挨拶です。まずは最初のマダー子爵家。こちらも私の取り巻きの方がいらっしゃる家でした。お名前はファリアといいました。ファリアは私の事を気遣うように見つめていました。この子は他の方達と違うみたいだと少しホッとしましたが、やはり私の前から辞する時に残りの家の方に優越感に満ちた眼差しを送ったことに気がついてしまいました。


そうですよね。セリアテスが秘密の日記にも書いていたくらいです。彼女も例外ではないということですね。


また休憩を挟んでから、次は男爵家の挨拶に移りました。男爵家は118家です。小休憩を挟んで6回に別れて挨拶が行われました。


貴族にはあと準男爵家と騎士爵家がありますが、どちらも一代限りの名誉爵位ということで、今日の挨拶には来られていないそうです。


こうして、私はリングスタット王国の貴族との対面を終えたのでした。



266話です。


お披露目会が終わりました。

結局、ざまあがあったような無いような状態で終わってしまいましたね。

ですが、次はあの子達がね・・・。


それでは、次話でまた。

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