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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第2章 女神様の愛し子になってから
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17-8 罰するということ・・・

お父様に抱き上げられて王宮内の客間に案内された私は、ソファーへと降ろされました。家族が心配そうに私の周りに集まってきました。お母様はドレスの裾が汚れるのも構わずに、私の前に膝をついて両手を握ってきました。


「無理をすることはないのよ、セリア。ねえ、もう帰りましょう。それで今日挨拶できない方々には、また別の機会を作ればいいわ」

「そうよ、セリアテス。挨拶を受けるのは、私達キャバリエ公爵家に任せない。『女神様の愛し子』に無理をさせるわけにはいかないわ」


カテリア伯母様も私の隣に座って頭を撫でながら言ってくれました。

ですが私は首を振ります。


「大丈夫ですから。少し休んだら続けます」

「でも、セリア」


お母さまの目に涙が浮かびあがってきました。最近のお母さまは涙脆い気がします。


「本当に大丈夫です。・・・それよりも、お母様は知っておられたのですね」


私の言葉にお母様は軽く首を傾げました。はっきりと言わないから何のことか分からないのでしょう。私は伯母さまの顔を見てからお父様の顔を見上げました。お父様は軽く眉間にしわがよっています。おじい様、おばあ様、ジーク伯父様の顔を順番に見ていきます。みんなの顔からは何も伺うことはできませんでした。

ですが、知っているのですよね。


「私が倒れる前に言われたことです。私は王妃様主催のお茶会を覚えていると言ったと思います」

「ほう、何を言われたのかのう。わしにも教えてくれんかのう」


おじい様が私の言葉に、逆に興味を惹かれたかのように聞いてきました。また、この間の様に私の言葉を聞いてくれないのかと思うと、涙がこみあげてきました。泣き落としなどしたくなくて俯いた私の耳に焦ったようなおじい様の声が聞こえてきました。


「こら、何をするんじゃ、お前達」

「それはこちらの台詞です。おじい様はまたセリアの言葉を聞かないつもりですか」

「それならばセリアテスの騎士として、成敗させていただきます」


顔をあげて声がした方を見ましたら、ミルフォードお兄様とオスカーお兄様がおじい様に模擬剣を突き付けています。模擬剣とはいえ、本気のお兄様達の様子におじい様達はタジタジです。


「私からもいいかしら。誤魔化そうとしても駄目ですわよ。お爺様、叔父様。セリアテスはもう、分かっていますわ。皆してセリアテスの断罪劇を見ようとしているのですもの。それにこれ以上余計なことをなさると、セリアテスに嫌われますわよ」


クラーラお姉様がお兄様達のそばに来てそう言いました。ローラントお兄様もクラーラお姉様の隣に並びました。


「本当にそろそろ学習するべきですね、お爺様。セリアテスには貴族の常識は通用しませんから。それよりもこれじゃあセリアテスにとって一番の悪はお爺様ですよね。女神様に言われたことに背いてますし。オスカー、ミルフォード、『女神様の愛し子』に害なす者として懲らしめようか」


ローラントお兄様が薄く笑いながらそう言いました。その言葉に珍しくおじい様が慌てた声を上げました。


「ローラント、何をいうんだ。わしがセリアテスのためにならんことをするわけがないだろう」

「どうですかねえ。現にまたセリアテスを泣かせていますし」

「そうだね。兄上の言う通りだよね。ねえ、お爺様。まさか、『女神様の愛し子のセリアテス』を意のままに操ろうなんて思っていませんよね」


オスカーお兄様が模擬剣をお爺様の首につきつけながらそう言いました。顔は笑っているのに、目は笑っていません。


「お爺様、まさかオスカーが言ったようなことを考えていませんよね。それより気がついていますか。お爺様の態度でセリアテスが何度傷ついたのか。私とオスカーはセリアテスの守護騎士だ。セリアテスを守るためなら、実の祖父であろうと容赦はしません!」


ミルフォードお兄様もオスカーお兄様の模擬剣と交差させるように、お爺様の首に模擬剣をつきつけました。

いつの間にかお爺様の額には汗が浮かんでいて、それがツーと頬を伝って流れ落ちていくのが見えました。

そして軽く息を吐き出すと私のほうを見つめてきました。


「すまなかった、セリアテス。だがの、わしはお前に辛い思いをさせた輩が許せんのじゃ。私の大切な孫だけでなく妻のことまで馬鹿にされたのじゃ。それに罰を与えるのはいかんことかのう」


おじい様の言葉は、いつもの優しい好々爺のおじい様の言い方です。本当に愛する家族を馬鹿にされたと怒られたのでしょう。


「それでもです。罰するのはいつでもできます。ですが反省して改心するかもしれない者まで、罰する必要があると思いません。それにもうマルツァーン子爵家は罰を受けているではありませんか。リングスタットの貴族社会にご子息のうかつな言動を広められて、辱めを受けているではありませんか。これが罰でなくて、どんな罰を与えるつもりなのですか」


お爺様の目を見つめながら私はそう言いました。涙が頬を伝っていきます。


「セリアテス」


おじい様は私の名前を言って絶句なさいました。


264話です。

前回ざまぁができなかったセリアちゃんです。

彼女はこう考えていました。

という回でした。

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