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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第2章 女神様の愛し子になってから
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17-2 模倣する者たち

お兄様達の宣言に最初は水を打ったようにシーンと静かでした。

ですが何が起こったのか理解した皆様からどよめきが起こり、そして騒ぎ始めました。


その中から近衛騎士の服を着た方が前に出てきました。すかさずミルフォードお兄様とオスカーお兄様が私よりも一歩前に出ます。それを近衛騎士の方は睨むように見つめています。


でも、すぐに私のほうを向くと跪きました。腰に佩いた剣を鞘ごと抜くと、お兄様達と同じように騎士の誓いの台詞を言いました。言い終わると私の事を期待を込めた目で見てきます。


が、他にも彼が誓いを述べている間に彼の隣にもう2人、同じように跪いた方がいらっしゃいました。続けてその人たちも騎士の誓いを口にしました。


最初に言われた方は、次に言い出した方を睨みました。


3人目の方も騎士の誓いを言い終えると、大広間の中はシンと静まりかえりました。皆様が固唾を飲んで見守っているのがわかります。


私は一歩下がりました。


3人の顔に訝し気な表情が浮かびました。


私がもう一歩下がると、3人の顔色が変わりました。


「セリアテス様!」

「女神様の愛し子様!」

「月光姫!」


3人目の方をつい見てしまいました。


本当に月光姫と呼ばれてしまいました。でも・・・なんか、嫌です。


ですが、私に見られたことでその方の顔に喜色の色が浮かびました。なのでみなさまから視線を外しました。外した先には王族の方がいらっしゃいました。ローザ様が気遣わし気に私の事を見つめていらっしゃいました。


「セリアテス様、私の剣を受けてはいただけないのですか?」


3人の中で最初に誓いを述べた方が、私に話しかけてきました。最後を疑問を投げかけているように言いましたが、語気の中に私を責めるような響きがあります。


「私でしたら兄君方より盾としても剣としても、十分に力を発揮できますよ」


続けて言われた言葉に息が止まるかと思いました。


子供であるお兄様達が、どれだけ私のことを想って言ってくれたのか。私はその気持ちが嬉しかったのに・・・。


それを馬鹿にしたの?


私が何か言う前にジーク伯父様とお父様が動きました。それぞれお兄様の隣に立つと言いました。


「それは息子が子供だからセリアテスの盾にもなれないということかな」

「君が近衛騎士の中でどれ程の腕前かは知らないが、子供相手に大人げない態度。程度のほどが知れるというものだな」


冷ややかな視線と共に言われて、3人の顔色が悪くなりました。ですが、最初の方があきらめずに言ってきました。


「侮辱をするつもりはございません。お二方はまだ子供でございます。成長されたあかつきにはセリアテス様の立派な騎士になられることでしょう。ですが、それまでの間の守護騎士として、他にも成人した者がお守り申し上げた方がよろしいかと存じます」

「つまり二人は子供だから成人するまでの間、他のものにセリアテスを守らせろということかな」

「はい。その通りです」


父の冷たい視線や言葉にもめげずにその方は言いました。父が笑いました。


「その役は自分が相応しいというのだね」

「私だけがとは申しませんが、相応しい腕は持っているつもりです」


跪いたままその方は挑むように父を見上げています。


「それほどのことを云うのなら試してやろう」


ジーク伯父様がそう言って一歩前に出ました。すかさず、ファラント様が割って入ってきました。


「ジークフリート様がお出になることはありません。不肖の身なれど私が代わりにお相手を務めさせていただきます」

「それならば兄上の変わりに私が相手をしようか」


アーマド叔父様がいつの間にか近づいてきて、父の隣に立ちました。

ファラント様とアーマド叔父様の武人としての雰囲気にのまれたのか、3人は身じろぎもせずに膝をついたまま固まってしまいました。

ファラント様とアーマド叔父様がジリッと動いたところで、私は心を決めました。


「待ってください」


言葉と共に下がった二歩分、前に出ました。私の言葉に3人は硬直が解けたようで、私の事を見つめてきました。勿論、他のみなさまも私の事を見つめています。


一瞬怯みそうになりましたが、気遣わし気に私の事を見つめるローザ様に、励まされるように言葉を続けました。


「私には、ミルフォードお兄様とオスカーお兄様以外の守護騎士は必要ありません。なので、ファラント様もアーマド叔父様も何もする必要はありません」


きっぱりと言い切りましたら、3人の方は目を見開いて私の事を見つめてきました。


「それに・・・」


と、私は言葉を続けました。


「その剣では私は持つことが出来ません」


言われた3人はこの時まで捧げ持っていた剣を見つめました。近衛騎士として佩いているものです。実用的でかなりの重量があることでしょう。3人だけでなく広間にいるみなさまの視線が、お兄様達が腰に下げている模擬剣に集まりました。


「ああっ!」


これは誰があげた声なのでしょうか?



258話です。


楽しんで頂けていれば幸いです。

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