兄話3-23 いとこと密談?
居間にはローラントが待っていた。キャバリエ公爵家の侍女がお茶の支度をしてくれていた。
僕たちが席に着いてお茶を飲んでいると、クラーラもやってきた。クラーラにもお茶が渡されると、クラーラ達は人払いをした。
侍女たちが部屋を出るとクラーラが魔法を唱えた。
「さあ、これで話を聞かれることはないわよ」
「姉さん、いつの間にその魔法を覚えたの」
「今はいいにしなさい、ローラント。それよりもミルフォード。ローザ王女にやられたわ」
クラーラが苦虫を噛み潰したような顔をした。ローラントとオスカーも渋い顔をしている。
3人が語ったことは、御前会議でセリアテスが話す前の事だった。僕とセリアテスを残して中に入った皆は、それぞれ空いた席に座ろうと移動をしていた。その中でローザ王女が演台の所に立ち、先程セリアテスに聞いた話をしてしまったそうだ。
話を聞いた皆は憤慨をしたそうだけど、セリアテスの気持ちを汲んでセリアテスのしたいようにやらせようと、話は纏まったとか。
それで、明後日までにマルツァーン子爵家が「セリアテス」に無礼を働いたと、他の貴族家に通達が出されることも決まったとか。
「というわけで、祖父母への侮辱を僕達はどうこうできなくなったんだよ」
オスカーが憮然とした顔で言った。よくも悪くも周りにマルツァーン子爵家の名前が知れてしまったのだ。適当に言いくるめてこっそり排除も出来ないということか。
「本当に余計なことをしてくれたわ、ローザ王女は。セリアテスが不快感をあらわにした後、お爺様への暴言を追及してやろうと思っていたのに。先にリングスタットの貴族家に知れ渡ってしまったら、このあと手を出しにくくなるじゃない」
クラーラも不満をあらわにするけど、こんなクラーラも珍しい。
だけど、と思う。ローザ王女は本当にセリアテスのことを、大事な友と思っている。その彼女がセリアテスのことを侮辱した輩を放っておくのか。・・・それはないな。それならローザ王女が気付いて僕たちが気付いていないものがあるということか。
父達が報復に動いたらマルツァーン子爵家は無くなるな。もしくは当主が入れ替わるだろう。その場合問題の双子も・・・。ああ、そういうことか。
僕はフウ~と息を吐き出した。
「何かわかったのかい、ミルフォード」
オスカーがすかさず聞いてくる。
「ああ。ローザ王女の行動は正しいよ。ねえ、記憶を失ってからのセリアは、それ以降のことをよく覚えているよね。もしかしたら記憶力が上がったのかもしれないよね」
「だから、それが何?」
僕の言葉にクラーラはイライラしたように言ってきた。僕の言葉を考えていたオスカーがハッとした顔をした。
「あっ! そうか。マルツァーン子爵家を改易しても、当主を挿げ替えてもセリアテスに気付かれてしまうのか」
「それじゃあ、こっそりなんて出来ないということか」
「だからローザ王女はあそこで暴露することで、大人が勝手に動かないように牽制したのね」
ローラントとクラーラも気がついてくれたようだ。しばらく皆黙っていた。多分考えていることは一緒だろう。
「なんでローザ王女は男に生まれなかったんだろうね」
「本当。彼女が王子ならセリアテスの相手として考えても良かったのに」
「王妃様に似たんだよ。きっと」
3人は同時にため息を吐き出した。
「それでミルフォード、オスカー。あなた達の計画を教えて頂戴」
気を取り直したクラーラが僕達を真剣な目で見つめてきた。
「計画って? なんのことさ、姉さん」
「誤魔化さないで、オスカー。あなた達が明後日に何かしようとしているのは分かっているのよ。協力すると言ったでしょう。だから話して頂戴」
オスカーは僕のことを見つめてきた。僕に任せるということだろう。僕は軽く頷くとクラーラとローラントに向き合った。
「誤魔化す気はないよ、クラーラ。それに計画というほどの物でもないんだ。明後日のセリアのお披露目の場で、僕達はセリアの守護騎士になる」
僕の言葉にクラーラとローラントが見つめ合った。ローラントはクラーラに頷くと僕達に穏やかに話してきた。
「守護騎士という言い方をするということは、神殿の聖騎士とは別物なんだね」
「そうだよ。僕達は神殿には所属しない。セリアだけの騎士になるんだ」
決意を込めてそう言った。ローラントは視線をオスカーに移った。
「オスカー。お前もそう決めたのか」
「うん。兄さんには悪いけど、僕もセリアテスを守ってあげたいんだ。8年後。すべてが終わったらサンフェリスに戻るから。だから学園に通う間だけでも、自由にさせて欲しいんだ」
オスカーも真剣な顔でそう言った。ローラントはすぐに頷いた。
「もちろんだよ。大変な使命を帯びたセリアテスを、私の分も守ってあげて欲しい。それで、守護騎士になるのは君達2人なんだね」
「そのつもりだよ」
「シュレインは残念がるだろうね。でもその方がいいだろう。余計な懸念材料は作らない方がいい」
ローラントの言葉にクラーラも頷いて肯定していた。
「それで、どのようにセリアテスに守護騎士と認めて貰うの」
クラーラは楽し気にそう訊いてきた。僕達は僕達の行動によって周りがどう動くだろうかということを含めて、クラーラとローラントに話した。二人の意見を聞きながら僕達は計画を詰めていったのだった。
256話です。
長くなったけど、ミルフォード話は終わりました。
さあ、次はざまぁが待っている!




