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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第2章 女神様の愛し子になってから
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兄話3-16 愛おしいという気持ち

セリアテスが慌てたように何か言っていた。その言葉に魔術師長は立ち上がり、再度腰を落としてセリアテスと向かい合った。


相変わらず声は聞こえてこない。僕はそれでも二人の様子をじっと見ていた。

セリアテスの顔を見ていたら、焦りのような不安な表情をしていた。少しすると表情が和らいだ。

だけどまた今度は泣き笑いのような表情が浮かんできた。


それが目を丸くしたと思ったら、口元に笑みが浮かび、最後には感嘆の表情に変わっていった。耐えきれずに動こうとしたら、クラーラとローザ王女が立ち上がり二人のほうへ近づいていった。その気配に気がついたのだろう魔術師長はセリアテスに何かを言ったようだ。そのことにセリアテスはいたずらっぽく笑ったあと、顔を赤くしていた。


クラーラに話し掛けられて、セリアテスは「何でもない」と言っていた。声が聞こえたことから、魔術師長は魔法を解いたのだろう。そんな気配も見せずにやってのける魔術師長を見ていたら、目が合った気がした。


『セリアテス様の緊張を解いて差し上げてください』


耳元に聞こえた言葉にハッとした。


『このままでは会議前に倒れてしまうかもしれません。あとはお任せします。よろしくお願いします、ミルフォード様』


もう一度声が聞こえてきた。隣のオスカーを見たら目が合って、どうした? というような表情を浮かべていた。

最後に僕の名前を言っていたから、僕だけに宛てたものだろうとは思ったけど、それをしてのける魔術師長に、初めて尊敬の念を覚えた。これからセリアテスに、魔術のことを教えにくるのなら、僕も教えを乞うてもいいのだろうか。

いや、是非とも教えてもらうことにしよう。


このあとすぐ、魔術師長は挨拶をすると部屋を出て行き、セリアテスも席に戻った。


皆は魔術師長と何を話したのか気になったようで、セリアテスに訊きたそうにしていた。それを冷ややかな視線で見ていたら、セリアテスが僕に訊いてきた。


「あの、お兄様。私と魔術師長の話は聞こえてましたよね」

「いや。全然聞こえなかったよ」


セリアテスは意味が分からないのか首を傾げてから、僕の顔を見るために少し前に身を乗り出していた。その様子がかわいくて口元に笑みが浮かんだ。


「え~とね、セリア。多分魔術師長は魔法を使って二人の会話を他の人に聞こえないようにしたんだよ」

「そのような魔法もあるのですかー」


セリアテスが驚いたように声をあげた。でも、すぐに口に手を当てて恥じらっていた。たぶん淑女らしくないと思ったのだろう。

微かに頬を染める可愛らしい様子に、王子達と友人達が嬉しそうにセリアテスを見つめていた。


僕はその様子を眺めながら不快感を感じていたんだ。本当なら今すぐセリアテスを彼らから離して、誰の目にも触れないところに連れて行きたい。他の人をその瞳で見ないですむように、閉じ込めて誰にも会わせないようにして・・・。


そこまで考えて、自分の考えに驚愕した。

本当に何を考えているんだ、僕は。

いくらセリアテスを守るためとはいえ、閉じ込めてどうするんだ。

セリアテスの身の安全を考えたら極力外出をさせずに、館の中にいた方がいいに決まっている。

だけど、それは違うだろう。


あと、王子達の視線を不快に感じたのも。

彼らから離してとか、他の人をその瞳に映すなとか、誰にも会わせないようにって、それじゃあまるで嫉妬したみたいじゃないか。


いくらセリアテスのことが心配だからって、それはないよ。うん。


だけどセリアテスの兄として、セリアテスが変な男に引っ掛からないように目を配らないと。

そう、さっきの考えも兄としてなんだ。


僕は皆が魔法のことについて話をしているのを聞きながら、そんなことを考えていた。

だからオスカーが時々僕のことを心配そうに見ていただなんて、全然気がつかなかったんだ。


昼食はこの部屋で皆で食べた。食事が終わるとセリアテスを呼びに来た。

僕はもちろん一緒についていくつもりだった。

だけど案内人はセリアテスだけ連れてくるように言われていた。

セリアテスを1人で行かせられるわけがないと僕が言ったら、ローザ王女も御前会議の傍聴を希望すると言った。前の時も参加したのだから、今回参加できないのはおかしいと言った。


連絡待ちの状態になった時に、ローザ王女がそっと耳打ちをしてきた。


「ミルフォード様、この後会議場に入る時に、私達は先に入って席に着きますわ。ミルフォード様はセリアに付いていてくださいませんこと」

「それはいいですけど、ローザ様が付き添われた方がよいのではありませんか」

「私では駄目ですわ。今日のセリアの様子を見ていますと、ミルフォード様といる方が落ち着けるようですもの」

「わかりました」

「よろしくお願いいたしますわね」


本当に王子達もローザ王女殿下くらいに気遣いが出来るのなら、何の苦労もないのだけどね。


しばらくしたら御前会議の傍聴を許可すると連絡が来た。

なので、僕たちは皆と共に会議場前まで移動したのだった。



249話です。


えー、16-22の裏話的なものです。

ミルフォードが確実にシスコンから超シスコンに進化しつつあります。

・・・


で、では、次話で、また!(若干動揺して逃げる私)

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