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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第2章 女神様の愛し子になってから
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兄話3-15 妹と魔術師長

セリアテスのことをバカにしたやつのことは、明後日に報復することが決まったから、それでいいにすることにした。


それにしてもセリアテスをここに呼んだのは、間違いだったかもしれない。やはり皆はセリアテスのことが気になるようで、チラチラと見ていた。


・・・いや、王子達なんかは気を抜くとうっとりとセリアテスのことを見つめているんだ。ゲラント殿とグスタフ殿も、セリアテスが話す姿を熱心に見つめていたし、ハインリッヒも不躾にならない程度に見ていた。

フォルクス殿とシュベルツ、ウェルシーのエックハルト3兄弟は、セリアテスのことも見ていたけど、何気なさを装いながら辺りに気を配っていた。きっと父親である騎士団長に言い含められているのだろう。

分からないのはアルザスだ。セリアテスが来た時からずっと面白そうにしているんだ。


皆の様子にセリアテスは居心地悪そうにしていた。皆に聞かれたことを答えていたけど、気もそぞろなのが分かる。時々時計のほうに目をやるから、午後のことが気になってしょうがないのだろう。


ハインリッヒが「オリガミ」のことを話題に出した。家族の前で披露して、兄弟が他家に行った時にその家でも、披露したと言っていた。


そう云えばセリアテスは「オリガミ」については何も言っていなかったな、と思った。きっとセリアテスは、遊びに関するものは除外するつもりなのだと思う。


案の定セリアテスは「どうぞみなさまで遊んでください」と言っていた。


それを聞いてアルザス以外の友人達は、一様に胸を撫で下ろしていた。気持ちはわかるから何も言わないでおこうと思う。


セリアテスが「オリガミ」のことを話題にするのを嫌がっているようなので、別の話に話題を移した。その様子にホッと息を吐き出していたから、本当に嫌がっていたのだろう。セリアテスの視線が外れたところで皆を一瞥したら、またみんなして顔を引き攣らせていた。


しばらくしたら魔術師長がセリアテスに会いに来た。セリアテスは皆に入室してもらっていいかと聞いていた。了承を得ると侍女にお願いをしていた。


その様子を初めて見たゲラント殿とグスタフ殿とハインリッヒは目を見開いていた。


入室してきた魔術師長は一礼をすると、セリアテスに話しがあると告げて二人で別の席に座った。魔術師長が魔法を使ったようで、二人の話し声は聞こえてこなかった。それに魔術師長はこちらに背を向けているので、何を話しているのかわからなかった。辛うじてセリアテスの顔が見えるくらいだ。それも真剣な表情で話をしていることしかわからない。


「本当にセリアテス様は「お願い」をされるのですね」


二人のほうを見つめていたら、ハインリッヒがポツリとこぼすように言った。僕はハインリッヒを見つめた。いや、皆がセリアテスのほうから視線を外して、ハインリッヒのことを見ていた。皆の注目を浴びたハインリッヒは顔を赤らめた。つい口から出たのだろう。


「どういうことだい、ハインリッヒ」


シュナイダー王子が訊いた。


「えーとですね、先日通達が来ましたよね。セリアテス様からのお言葉の。その中に『貴族が権力を振りかざして、自分より弱い立場の者に強要することを禁ずる』とありましたよね。それと『感謝をしたいと思ったら、お礼をいうこと。それは相手が自分より弱い立場でも、するべきこと』というのも。通達が来た時は戸惑いましたが、先程からのセリアテス様のご様子を見て納得致しました」


その答えにゲラント殿とグスタフ殿も頷いていた。


「実際に見るまで分からなかったのは情けないと思いますが、セリアテス様にお礼を言われた侍女たちが、誠心誠意セリアテス様にお仕えしようとする姿をみて思いました。「命令」ではなくて「心からの行動」は、主従の結びつきを強くすることでしょう。これは家にとっても国にとっても喜ばしいことだと思います。誰でも心優しく思いやりにあふれた方にお仕えしたいと思うものですから」


ハインリッヒの言葉にシュナイダー王子は顔を引き攣らせた。


「それは、僕が主人では仕え甲斐がないと言いたいのかな」

「あっ! ち、違います。不満とかではなくて、その、セリアテス様の提案が素晴らしいと言いたかっただけでして」


ハインリッヒが必死になって言っていた。僕はチラリとカークライト王子を見たら、彼は蒼褪めた顔で僕のことを見ていた。


・・・もしかしてやっと本気で気がついたとか?


つい「フウ~」とため息を吐いてしまった。


「ミルフォード~」


何を勘違いしたのか、カークライト王子が情けない声を出してきた。


「はいはい、解っていますから、何も言わなくていいですよ」


そう言ったのに、カークライト王子が焦ったように言いだした。


「僕はこれから勉強に身をいれるから。ちゃんとやるから。だから、ミルフォード。僕のことを」

「「「「「あっ!」」」」」


そこまで言った時に、他の人たちの驚いた声が聞こえた。その視線を追うと、魔術師長が平伏している姿が見えたのだった。



248話です。


サブタイトルと内容があっていません。

が、ミルフォードから見たら・・・なので。


では、次話でまた、お会いしましょう。

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