表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第2章 女神様の愛し子になってから
241/444

兄話3-7 妹からの話

セリアテスが「女神様の愛し子」になって、今日で3日目。


この2日間は家族だけでなく使用人まで、セリアテスの様子を伺っていた。何故ならばセリアテスは王宮で倒れて以降、直ぐに熱を出しやすくなっていたからだ。それにとても疲れやすくもなっていた。

神殿でただでさえ緊張を強いられていたのに、その後の余分なことで気を使った後だ。また寝込んでもおかしくなかった。


だけど、そんな僕たちの心配を吹き飛ばすように、セリアテスは元気一杯だった。体調を心配して進めていなかった勉強のことも、改めて始めることになりとても喜んでいた。


そんなセリアテスだけど、ふとした拍子に何か考え込んでいる様子が、手に取るように分かった。クラーラ達が声を掛けると何事もなかったように、微笑むセリアテス。みんなはセリアテスが「女神様の愛し子」としての立ち居振る舞いについて考えていると思っていたようだ。


僕とオスカーとローラントは、セリアテスの様子について話しあった。それから、父と祖父の様子についても。ローラントにはあの夜、礼拝堂で起こったことをすべて話してある。ローラントもオスカーの意見に賛成していた。大人は信用できないということをね。そして、僕らがしようとしていることにも、全面的に協力してくれると約束してくれた。


ついでにクラーラにも僕らの行動がバレてしまった。詰め寄られて何があったのか白状させられた。そうしたら、ローラントと同じく、僕らに協力してくれると言ってきた。セリアテスのことを、実の妹のようにかわいがっていたクラーラだもの、セリアテスを守るための行動だってわかったら、逆にはっぱをかけられたくらいだ。


それから、クラーラも大人が信用できないという意見に賛成だった。その中にカテリア伯母上も含まれると、言った時には驚いた。けど、祖父の娘である伯母だし、今回の旅程でうちの事情(こと)を話せるくらいに事情に精通していたとも言っていた。


それにクラーラもセリアテスの事情についてかなり怒っていた。それを行った祖父母に対する憤りを隠さずに話す姿に、頼もしさを感じたのだった。


今日、11月4日は、朝からセリアテスが緊張しているのがわかった。

朝食に手を伸ばそうとしないから、最初はまた具合が悪くなったのかと思ったのだけど・・・。


朝食にはまた見たことが無いものが置いてあった。黄色い色のクリームだった。スプーンが添えられていて、パンのそばに置いてある。ということはパンにつけるものなのだろう。

セリアテスがこのクリームのことを、カスタードクリームでパンにつけて食べて欲しいと言った。プリンと同じ材料で作れるとも言っていた。


食べて見たら、甘くておいしかった。カラメルがないからなのか、それともクリーム状だからなのか、プリンとはぜんぜん別物に感じられたんだ。


食事に手を伸ばそうとしないセリアテスに、父が声を掛けた。それに一言返すのがやっとのセリアテス。僕は熱を出したのかもと思って、隣に座るセリアテスの額に手を伸ばしてみたけど、熱は高くなかった。他のみんなも心配そうにセリアテスを見つめていた。


セリアテスの引きつったような表情に緊張しているのだと気がついた。僕が分かったくらいだから、父も祖父も気がついただろう。


セリアテスは気持ちを落ち着かせるためか、一度深呼吸をしていた。それから、父にお願いをしたんだ。


願いは、この間の御前会議に来ていた人たちの招集と、自分の話を聞いて欲しいこと。


父はセリアテスの言葉に自分たち家族だけ(・・・・・・・・)を頼って欲しいと、ニュアンスを込めて言っていた。それを断られると失望したような表情を見せながら、セリアテスの視線が外れた隙に祖父とジーク伯父と意味ありげに見交わし合っていた。


その視線に不快感を感じた。大人の打算を見せつけられたように感じたんだ。

オスカーの方をチラリと見たら、他の人には判らないように左手で合図を寄越した。これは前にオスカーと遊びで決めた合図だ。指をそれぞれ喜怒哀楽を決めて見せるだけだけど、これが意外といいんだ。周りからはただ手を挙げているとしか思われないもの。


食事が終わった後、居間に移動してセリアテスの話を聞いた。セリアテスの話は「セリアテスが知る彼女の世界の知識」のことだった。


セリアテスは王妃様のお茶会で倒れて以降の記憶をたどりながら、話して言った。隣に座る僕はセリアテスの緊張しているのがよくわかったから、セリアテスの左手に僕の右手を重ねて「セリアテスは一人じゃない。僕が味方だと」と分かるようにした。


ギュッと力を入れて握りしめる小さな手。この小さな手を守るためなら、どんなことでもしようと、僕は思ったのだった。


セリアテスの話は想像したことがないものだった。僕達が暮らすこの世界とは別の世界の記憶。


そう、セリアテスは言ったんだ。


『私は彼女の人生を見せられて、あまりにこちらの世界との違いに驚いて、今まで信じていた価値観を全否定されたように感じました。・・・たぶんそのショックで、記憶を失くしたのだと思います』


と。



240話です。


もう少し続きます。

あと、3話くらいでミルフォードの話を終わらせたいな~。

・・・延びるは避けたいけど、収まるかな?


それでは、また、次話で!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ