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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第2章 女神様の愛し子になってから
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兄話3-6 妹を守りたい

礼拝堂を出た後、僕とオスカーは祖父に連れられて、図書室に行った。部屋に入ると祖父は礼拝堂と同じ装置を作動させた。この部屋にそんなものがあるとは聞かされていなかったから、僕は少し驚いた。


そして、祖父からの話は・・・全てを話すと時間が足りないからと、簡潔に話された。詳しいことは明日から話すと言われたけど、信じがたい話に動揺を面に表さないようにするのが精いっぱいだった。


「ミルフォード、オスカー。これからセリアテスを一緒に守っていこう。頼りにしているからな」


と言われて、祖父の話はひとまず終わった。


祖父から解放されて、釈然としない気持ちが残った。そのまま戻りたくなくてオスカーに自室に寄りたいと言ったら、オスカーも一緒についてきた。


祖父から聞いた話のおかげで、セリアテスに起こったことの意味が少しわかった気がした。まだ、すべてを聞いたわけではないけど、セリアテスが産まれた時から特別な子で在ったのは間違いないようだった。


セリアテスだけが特別なのは、祖母や母の血筋が関係していた。祖父がポツリと漏らした言葉。あれは祖父の本音だったろう。「こんなに早く集約されることになるとは思わんかったしのう」と、小声で呟かれたので、祖父は僕達に聞こえたとは思っていないようだったけど。


セリアテスが特別なのは、この世界をお創りになられたのが、女神様だからだ。同じ両親から生まれた僕も同じじゃないかと思ったけど、僕は男だから特別ではないそうだ。

納得できないけど、そう言われたら納得するしかなかった。


だけど納得できないことが一つある。


セリアテスを守るために隠さなければならなかったのはわかるけど、そのせいでセリアテスにしなくてもいい努力をさせたことだ。祖母も同じだと言っていたけど、初めから知っていた祖母と、何も知らされていないセリアテスとじゃ大違いだ。


そう、僕はその話を聞いて、祖父母と父に腹を立てた。父は母の血筋のことを母に話していないと言っていた。おかしいだろう、それは。自分のことなのに知らない母。


ああ、オスカーが言ったとおりだ。大人は信用できない。


僕は妹をセリアテスを守りたい。


祖父や父に任せておけばセリアテスは安全に守られるだろう。


だけど、セリアテスの心が守られるとは思えない。口では何とでも言いながら、父も祖父もセリアテスを丸め込もうとするだろう。それもすべてはセリアテスのためだと言いながら。それでセリアテスの心に傷をつけても構わないと思うかもしれない。


さっきから嫌な想像ばかりが浮かんでくる。


部屋に入って僕はオスカーに抱きついた。オスカーなら僕に答えをくれるかもしれない。混乱した頭のまま期待を込めて、オスカーの耳元で囁いた。


「知っていたの、オスカー」

「今回ここに来る途中に聞いたんだ」


オスカーの返答に、そういえば祖父の話を一緒に聞いていて、驚いた様子を見せなかったなと思った。それならばセリアテスを守るための、いい案を持っているのかもしれない。


「ねえ、オスカー。もしかしてセリアテスを守るために何か考えてるの?」


僕の問いにオスカーは僕から体を離し、ニッコリと笑った。


「もちろんだよ。だけど、その前に少し調べたいかな。前例があればごり押ししやすいもの」

「前例って?」

「今までに「神子」と呼ばれた人達の守護をどうしてたのかって事」

「それって「神子」を守る聖騎士のこと」


僕の答えにオスカーはニヤリと笑った。


「半分当たりで半分はずれ。聖騎士は神殿に属するだろ。僕はセリアテスを守るために神殿に入る気はないよ。というか入ったらまずいよね。それなら、いとこ(・・・)という立場を利用して守れる立場を手に入れるさ」


自信満々に言い切るオスカーの顔を呆然と見つめた。だけど意味が理解できると僕は口角があがるのを押さえられなかった。


「それはもちろん僕とオスカーなんだよね」

「ああ。他の奴らにはこの立場は渡さない」


きっぱりと言い切るオスカーに僕はまた抱きついた。


「準備にどれだけ時間が掛けられると思う」

「そんなにないと思うよ。せいぜい4日か5日だろ」

「ということは、そこら辺でお披露目かな」

「ああ、多分。それにうちの事もあるだろ。サンフェリスの王太子一家がリングスタットに来ているのに、何もしないわけがないよね」

「だけど、子供の戯言(たわごと)として取られないかな」

「そこは・・・嫌だけど、親に頼むしかないだろうね」

「やっぱりそうか」

「だけど話の持っていきかた次第では、セリアテスに僕達以外の守護騎士は要らないって言ってもらえるんじゃないかな」


おいおい、オスカー。どこまで先読みする気だよ。


だけどそのとおりかもしれない。

僕はセリアテスだけに大変な立場を押し付けるつもりはない。

それならばどうするか。

僕がセリアテスを支えて守る立場になればいい。


そう、今なら僕がそれを言いだしたっておかしくないと思う。いや、今しかない。今なら公的にもセリアテスを守る立場を手に入れることが出来るんだ。

オスカーはそんな僕につき合う気満々だ。本当はサンフェリス国の王族であるオスカーを巻き込むのは不本意だ。

本音を言えば僕だけがその立場を手に入れたい。

けど、それは出来ないだろう。オスカーの持つ肩書はセリアテスの兄というだけの僕より強力だもの。



239話です。


ミルフォード・・・ガンバレ。

だけど君はまだ10歳なんだよ。


ここまでお読みいただきありがとうございます。


では、次話でまた。

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