2日目の3 いろいろな方とお話しします
私の言葉にウェルナー医師は考え込んでしまいました。
別の男の人がそばに来ました。
「私はヴィクトール・オットマー。魔術師長をしている。私も話に加わっていいか」
「はい・・・」
魔術師長は30代後半にみえる方で、感情が読み取りにくい・・無表情な方です。
何を言われるのでしょうか?
「君は倒れる直前のことは覚えているのだね」
「はい」
「それ以外は何も覚えていないというのだね」
「はい、・・たぶん」
「たぶんというのは?」
「・・昨日聞かれた時にも言ったとおもうのですが、・・・家族の顔を見たとき名前は思い出せないけれど、私のお兄様、お父様、お母様だと思ったと。・・だから、思い出せないだけで知っていると思うことは、まだあるのではないでしょうか」
魔術師長は微かに目を見開きました。ですが何も言わずに口をつぐんでしまわれました。
私の言葉に他のみなさんも黙って考え込んでいます。
しばらくしてまた、別の方が話しかけて来ました。
「セリアテス嬢、私はこの国の宰相をしているジョシュア・ヴェリトル・レグルスという者だ。私からも質問をさせてもらってもいいかな」
「・・・はい」
宰相様は60歳くらいのロマンスグレーのおじさまです。
「昨日自分の名前を聞いたときにどうおもったのかな」
「名前・・・ですか?」
「そう、セリアテス・クリスチーネ・フォングラムという名前を聞いてどうおもったのかね」
「・・・そういう名前なんだとおもいました」
「夕食のときにここにはいない家族のことを聞いただろう。そのことはどうおもったのかね」
「・・・祖父母に会ってみたいとおもいました。・・・あと、叔父と伯母といとこたちにも会ってみたいとおもいました」
「彼らの話を聞いて姿が思い浮かんだということはなかったのかな」
「・・はい・・・ありませんでした」
みなさん目と目を見交わしてますが・・・眉間にしわが寄ってますよ。
うーん、そんなに深刻な顔をされちゃうとこっちが困っちゃうんだけどな。
「あの、私からもいいでしょうか」
おずおずと部屋に来た人の中で一番若そうな人が小さく手を挙げて聞いてきました。
国王陛下が彼に頷いて許可を出しています。
「私は王宮医師のパウル・ウルバーンといいます。セリアテスお嬢様は7日間高熱を出して寝込んでいたと聞かれたとおもいますが、その間お嬢様はうなされていました。何か夢を見ていたのではないですか」
一瞬どう答えようか迷いました。
変に間が空いて不審がられる前に手を口元にあて、考えるポーズをしました。
「・・・ゆ、夢・・ですか。・・・見ていた・・・ような・・気もするの・ですが・・なにぶん、おぼろげになって・・・いるのです。すみません。はっきりとは、思い出せないです」
「あ、いえ。そうですよね。高熱を出していたのですから、覚えていなくても仕方がないですよね」
ウルバーン医師は困ったように苦笑を浮かべました。
(く~、何この人。はにかんだ笑顔が、か、かわいい。)
「セリアテス嬢、わしからもいいかのう」
今度はおじいさんが話しかけてきました。片方だけの眼鏡をかけています。
「わしゃぁー、クラウス・キンブリー。学者をしておる。昨日そやつが魔力の話をしたのう。お前さんは自分の魔力についてどうおもったのかのう」
「魔力・・・ですか? そうですね・・・うーん・・・よく・わかりません」
「わからないとな」
「はい」
「では、髪の色が変わったことについてはどうおもったのじゃ」
「・・髪の色・・・別に何ともおもいませんでした」
「何とも思わなかったじゃと」
「はい。前の・・・髪の色は・・覚えていませんし・・・比べようがありませんから」
「うーーーむぅーーー」
学者さんもうなったあと、考え込んでいます。
国王陛下が私に話しかけてきました。
「セリアテス嬢、もう一ついいか」
「はい」
「私が誰かわかるか」
「・・・・・」
「わからないのか」
「いえ・・・国王陛下ですよね」
「私のことはわかるのだね」
「あ・・・いいえ、違います」
「誰もセリアテス嬢に私が国王だと話していないと聞いたのだがな」
「紹介はされてませんが、昨日父が私を家に連れ帰ろうとしたときに、止めにきた陛下に父が『陛下の仰せのままに』といいましたので、国王陛下だとおもいました」
私の言葉に国王陛下は手で顔を覆ってしまいました。
23話目です。
今回は名前で苦労しました。
私の中には名前に関するストックがあまりありません。
なので、いろいろな本のお世話になりました。
さて、ここまで読んでいただきありがとうございます。
次話で、あの方が出てくる予定です。




