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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第2章 女神様の愛し子になってから
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兄話3-5 礼拝堂での話を聞いて・・・

父達と一緒にレオポルド神官長も礼拝堂に現れた。みんなが中に入ったのを確認して父は装置を作動させた。


部屋の中にいるのは、祖父母、父母、キャバリエ公爵夫妻、アルンスト侯爵夫妻、ルートガー公爵夫妻と、レオポルド神官長。それから執事長のユーリック・コモナーだ。執事長は扉の前に陣取り静かに見守っている。


僕とオスカーは大人たちの会話を身じろぎもせずに聞いていた。


会話を聞いて・・・なぜ、祖父は一介の公爵なのだろうと疑問が湧いてきた。祖父の技量なら国王として起ってもおかしくないだろう。現に祖父の母は王女だったし、現国王のレイフォード陛下の父上である、クロフォード陛下の従兄だったんだから。


こう言ってはなんだけど、現国王のレイフォード陛下は国王としてはいささか頼りない所がある。父上達臣下の者達が優秀すぎるのかもしれないけど、ここぞという時に他の者に先を越される傾向も見られるし、なんと言っても王妃様。王妃様の方がよっぽど決断力を持っていらっしゃっている。王と王妃が逆だったらなんて話も、僕の耳にも届いているくらいだ。それと共に祖父に国王になって欲しいという、意見があるということも。


祖父がその気になれば、簡単に王家とうちの立場は入れ替わるだろう。だけど祖父はそれをしようとしなかった。それどころか、父に跡取りである僕が産まれたことで、早々に家督を譲り隠居してしまったそうだ。それは、王家に敵意はないと見せるためなのか、それとも王位に就いたレイフォード陛下に気を使ったのかは、僕にはわからない。


大人達の話は、まずは大神殿の出方のこと。セリアテスにフォンテインの大神殿に来てほしいらしいけど、父がセリアテスが望まないだろうと突っぱねていた。

次にリングスタット王国内の貴族の出方について。僕たちが神殿で話したのと同じことを大人も予測していた。だけどこれは、僕たちの話からセリアテスが自分で考えて、母に気持ちを伝えていた。だから、これも「女神様の愛し子」であるセリアテスが「公式の場以外の招待はお断りします」と言ったと、布告することにした。だから、これもいいだろう。

神殿内の粛清も順調に行われていることを話して、レオポルド神官長との話は終わったようだ。


だけどこれだけでは、オスカーが何故大人が信用できないと言ったのか分からない。どうしようかと思ったら、辺りに神気が満ち始めた。思わずオスカーと手を繋いでしまった。オスカーの顔を見たら引きつった顔をしていた。


声を届けてきた女神様の言葉は、驚愕に値する物だった。

女神様は「第2が途絶えた」と言った。その言葉を聞いたオスカーの顔色が変わった。血の気が引いて僕の左手をギュウっと握りしめたんだ。そして続けて言われた「サンフェリスを第2とします」にもっと血の気が引いて白い顔をしていた。そのあと「セリアテスを守ること」に念を押していた。それどころか、アーマド叔父上とエグモント叔父上に具体的な指示を出していた。


その言葉を裏読みするのなら、リングスタットの公爵家には守らなくてはならない何かがあるということだろうか。


ふと、女神様に見られているような気配がした。


『2人とも出ていらっしゃい』


女神様に気づかれたと分かり、オスカーと共に素直に立ち上がった。母上とカテリア伯母上が僕らの名前を呼んだ。


『話を聞いていましたね。あなたたちにも覚悟をしてもらうことになるわ。あなたたちもセリアテスを守ってくれるかしら』


女神様の言葉に僕はしっかりと頷いた。もちろんオスカーも頷いていた。目の端に少し血の気が戻ったオスカーの姿が見えた。


『それだけでなく自分のことも守らなくてはならないわよ』

「「はい」」


今度はしっかりと返事をした。


『そう。ならば詳しいことはリチャードに訊きなさい。リチャード、後は任せます。レオポルド神官長、神殿内部のことがすべて片付いたら、私から話があると大神官に伝えなさい』

「はい。女神様」

『では、戻るわ。あなたたちに祝福を』


その言葉に大人達と共に頭を下げた。。そして神気は遠ざかっていった。


父とジーク伯父上が僕たちのそばに来た。


「何故、ここに来たんだ」

「お前がミルフォードを連れてきたのか」


僕が言葉を紡ぐ前にオスカーが一歩前に出て、父達に話しだした。


「そうだよ。僕が誘ったんだ。父上達は子供の出る幕じゃないと言いたいかもしれないけど、子供の僕たちにしかできないこともある。ミルフォードは知っておくべきだと思ったんだ」


オスカーの真剣な表情に父達は口を開きかけて、すぐに閉じてしまった。そうしたら、祖父がそばに来た。


「確かにそうだの。オスカー、ミルフォード。お前たちに覚悟があるのなら話してやる。どうだ」


祖父の言葉に僕たちは力強く頷いた。それを見て祖父は頷くと、神官長に声を掛けた。


「レオポルド神官長。申し訳ないが続きはまた明日にしておこうかの」

「はい。それではまた明日ということで」


そうして、僕たちは礼拝堂を後にしたのだった。



238話です。


まだ、ミルフォード話は続きます。


では、次話で会いましょう。

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