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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第2章 女神様の愛し子になってから
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16-28 知識の権利

お兄様の手が頭から離れました。そして、メレンゲをつまんでいる私の手を持つと、自分の口に近づけてパクリとメレンゲを食べてしまいました。

顔が赤くなるのがわかります。何をするのですか、お兄様。

そんな、私の様子に気がつかないのかお兄様はクリスさんに言いました。


「クリス、そのお菓子は僕達はもう食べないから片付けてくれる」

「承知しました」


クリスさんが立ち上がって私達から離れていきました。


「それじゃあセリア、あともう少しなんだよね。ここにいる皆様に協力してもらう話をしたら終わるんだよね」


いたずらっぽい視線のままのお兄様の言葉に、お兄様の行動に赤くなっていた私は理解しました。このあと皆様にするお願いに私がまた、緊張し過ぎないように意表を突く行動をしてくれたのだということを。


私は顔の熱を逃がすためにも、大きく息を吸い吐き出しました。


「はい。今、みなさまにご試食いただいたことで、みなさまの中でこれのレシピに関する価値を試算していると思います。ですが、大人の・・・いえ、私はこのレシピの価値を取引には使いたくありません」

「それでいいと思うよ、セリア。セリアが提案しようとしていることはこの世界の人のためになる事なんだよね。だから思うままにすればいいんだよ。セリアのレシピが無ければ立ちいかなくなるような家じゃないしね、フォングラム公爵家は」


家で話したのはレシピの価値についてだけでした。それをどうしたいか話していないのに、お兄様はわかってくれているみたいです。

お兄様が微笑んだまま真剣な目で見てきました。


「セリア。君のしたいようにするんだ。女神様もそれを望んでいる」

「はい」


珍しく断定的な言い方をお兄様はしました。でも、この言葉で私が言おうとしていることは間違っていないと思えました。

私はお茶を飲み干すと立ち上がりました。

そばに戻ってきていたクリスさんにカップを渡します。

そして私は台の上に上がりました。

お兄様は今度は台に上がらずに隣に立ってくれています。


みなさまを見回しましたら、みなさまは近い席の方と談笑をしていました。ですが私が演台のところに姿を現したのを見て、話すをやめて前を向いてくれました。


私は軽く深呼吸してから話し始めました。


「みなさま。今、みなさまにご試食いただいたものは、私がうちの料理長に伝えて作って頂いたものといいました。ですが、これは私が女神様から頂いた知識の中にあるものでした。他にも、もうみなさまも身に着けていらっしゃる、ボタンやホック、ベルトなどもそうです」


ここで一度言葉を止めます。視線を動かすとレオポルド神官長の姿が目に入りました。期待に満ちた目をしています。そうですよね。今までもアラクラーダの神子が伝えた知識として、いろいろなもので神殿は莫大な利益を得てきたのですから。

私が今見せたものだけでも、どれだけの利益を生むのかと考えていることでしょう。


なので、神官長と目を合わせないように視線を外しました。外した先にはローザ様達が座っていました。ローザ様は背筋を伸ばし私のことをジッと見つめています。華やかな赤い髪と水面のような済んだ青い瞳を持つ王女。その瞳には私に対する信頼が見てとれます。目が合ったことに気がついて微かに微笑み頷いてくれました。


「この知識は女神様から頂いたものですが、権利は私にあると思っています。なので、神殿その他にその権利を譲渡することは出来ません」


私がそういいましたら、ざわめきが起こりました。レオポルド神官長は私の言葉を聞いて、大きく目を見開きました。そして私の言葉の意味がわかると顔色が蒼褪めていきました。身体が震えているのが見て取れます。・・・ですが口元を引き結び声をあげようとはしていません。多分、女神様の言葉が神官長を縛っているのでしょう。


私はもう一度息を大きく吸い吐き出してから言葉を続けました。


「みなさまに誤解の無いように申し上げます。私はこの知識を隠匿するつもりはありません。出来れば多くの方々に知っていただきたいのです。ですが、この知識を無償で提供することの怖さや愚かさも判っているつもりです。ですから、この知識を提供するにあたり一定の条件を設けたいと思います」


この言葉で、ざわめきが止みました。それどころか私のことを注視しています。中には・・・そう、数人ですが、子供に何の提案が出来るんだと、侮った視線を寄こす方もいます。


「私の条件の一つ目はこの知識一つずつにつき10万ガルドで国に買って頂きたいのです」


この言葉で今までで一番の騒ぎとなりました。中には立ち上がりお父様達に詰め寄る方もいます。陛下方も詰め寄られています。宰相様が仲裁しようとしていますが、聞く耳を持ってくれないようです。


「あの、まだ話は途中なのですが・・・」


私が声をあげても聞いてくれません。お兄様の方を見ても困った顔をしています。


「あの、すみません、みなさま聞いてください・・・」


もう一度声を張り上げて見ましたが、誰もこちらを見てくれません。

なんでしょうか。王家と密約でも交わしたと思われたのでしょうか。

話し方が悪かったのかと、落ち込んできました。



231話です。


は~、長かった~。

これで、なんとか、御前会議2の収集がつきそうです。


話的には、おお揉めしてますけど。

次話で、セリアちゃんの提案の意図が語られて、みなさま納得・・・してくれるといいな~。


では、また次話でね。

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